か弱いふたりでも
抜け出すことも難しい都会
歪みを消された 病んだ地獄の街を
切れそうなロープで やっと逃げ出す夜明け
出典: インディゴ地平線/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
僕と君が逃避行に及んだ事情が描かれます。
詩的な表現に昇華されているとはいえ、都会というものを地獄に喩えるのですから穏やかではないです。
そこは僕にとって病巣とでもいうべき存在でした。
住み慣れた街であるはずなのにふたりにとっては刺激がキツかったのでしょう。
都会暮らしにも色々な生活パターンがあります。
進んだ最先端の街並みでも助け合って暮らせるのならば苦はないのかもしれません。
しかし僕と君が生きた街はこうした共助の精神に欠けていて住みづらかったのでしょう。
自分たちふたり以外には味方がいない都会暮らしだったらつらすぎます。
もちろんこの街は特定の都市を示したものではないです。
実際にインディゴ・ブルーの空や遙か先にまで地平線が続いている土地を探すのは至難でしょう。
さらに僕らがどこの都市に住んでいたのかを特定する要素はありません。
ただ、都会暮らし一般というものがときに生きづらさを感じさせるものでもあることは確かです。
いくらつらい生活であっても仕事を放棄して逃げ出すことだって難しいでしょう。
僕はやっとの思いで都会から離れられたことを細い紐に喩えて表現します。
ギリギリの駆け引きの中で逃げることだって難しい都会の罠というものが見え隠れするのです。
痩せこけたふたりだけれど
寂しく長い道をそれて
時を止めよう 骨だけの翼 眠らせて
出典: インディゴ地平線/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
地平線までずっと続く道ですから単調なものでしょう。
景色だってあまり変わらない情景の中を進んでゆくふたりが描かれます。
僕はこの単調さというものを嫌いました。
そのために道草を食いながら別の道を選びます。
ふたりにとって大切なのは新境地ともいえる目的地なのです。
目的地までも道のりくらいは好きにしたいのでしょう。
この道を行きなさいと縛られる謂われは何もないのです。
僕と君の気ままさというものが漂ってくるラインでしょう。
都会暮らしのルーティンから解放されたのですから、どのように生きたってふたりの勝手です。
ただ、ふたりの推進力はか細いものであることが骨ばかりの羽根という表現に顕れます。
ときには羽根を休める場所だって必要なのです。
これ以上、ふたりが痩せこけることなく新天地に向かうために小休止だってします。
大きな目標のためにはコツコツとやってゆくことが肝心なのかもしれません。
ふたりの逃避行は大胆なものですが、固有の繊細な心というものをさらけ出すのです。
図太い神経があれば病巣に喩えられる街でもやっていけました。
しかし僕と君は街での暮らしから逃げ出してしまうか弱い存在です。
タイトルは何を歌うか
凍りつきそうでも 泡にされようとも
君に見せたいのさ あのブルー yeah
出典: インディゴ地平線/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
目的地には希望を託しています。
特に僕は君を連れ出して都会を去ってしまいました。
そのためになおさら君には希望というものを現実のものとして提示したい思いが滲みます。
そこは何もかも凍て付く土地なのかもしれません。
もしくはすべてが蒸発してしまいそうな暑い土地かもしれない。
いずれにせよ僕と君にはもう帰る家などないのです。
ひたすら新天地を目指して前へと進みます。
新天地とはいえ僕には過去に馴染みのある土地であることが冒頭で紹介されました。
記憶というものにこびり付いた土地なのだと歌っています。
僕が君に見せたいものとは「インディゴ地平線」というタイトルに集約されるのです。
彼方にある空と地平線の接点である藍色の場所でしょう。
それではいつまでも届かない場所かもしれません。
かつてより約束の地というものは人類にとってまだ知らない場所であることが多いです。
つまり僕の記憶にあるという土地だという表現には不思議さもあります。
草野正宗は集合無意識的な記憶について述べている可能性だって否定できません。
人類にとって遥か昔から共通して存在する記憶にある場所をふたりは目指しているのです。
そこはたどり着ける約束など本来はできない土地でしょう。
だからこそ僕はその場所をどこかの地名などの固有名詞ではなく「インディゴ地平線」と呼んでいるのです。
そこにある藍色は絶品だよと君に伝えたいこの旅ですが、実際はあてのない逃避行だと白状しています。
最後に 逃走者の心理
逃走を闘争にするふたりの生き方
凍りつきそうでも 泡にされようとも
君に見せたいのさ あのブルー
少し苦しいのは 少し苦しいのは
なぜか嬉しいのは あのブルー yeah
出典: インディゴ地平線/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
間にリフレインを挟んでいます。
繰り返しになりますので掲載は割愛いたしました。
いよいよクライマックスの歌詞です。
遥かなる青空の下まで行こうとする気持ちだけが歌われています。
この箇所もリフレインを含むのですが細部が違うのでお付き合いください。
どんな苦難が待ち構えようとも、僕はこの逃避行を成功させようとします。
街を逃げ出してしまった負い目がチクチクと僕の心を刺すかもしれません。
逃亡者というものは固有の暗い出自があるものです。
僕と君だって誇れる過去など何もなかったのでしょう。
ふたりは持たざる者同士であるからこそ逃走というものに人生を賭けてみようと思えるのです。
逃げ出した僕を無責任と罵る人もいるかもしれません。
しかし逃亡兵や脱走兵は逃げ出すことを闘争に変える存在です。
ふたりの行き先はあまりにも漠然とした「インディゴ地平線」にしかありません。
もう住み着く場所というのをふたりは永遠に放棄しているのです。