忘れられない光景が
歩きたいのよ高輪 灯りがゆれてるタワー
おもいがけない一夜の 恋のいたずらね
出典: 別れても好きな人/作詞:佐々木勉 作曲:佐々木勉
赤坂で当時を思い出しながらお酒を飲んでいる2人。
この次に出てきた街の名は「高輪」でした。
ただしここは街の名前ではなく建物それもホテルの名前と予測できるでしょう。
そこから見えたのはもちろん東京タワー。
いまでも高輪と付く東京タワーが見える人気のホテルです。
駅前なので地の利も良いホテルですね。
そしてここで歌われているのは今夜の話ではなく、付き合っていた当時の話と推測します。
酔いを醒ますために歩いていて「今夜は帰りたくない」と言ったのは女子だったのでしょうか。
あの日も赤坂にいたとしたら、ホテルまではタクシーでの移動となるでしょう。
それに応えることができる相手は経済力もある人ですね。
予約もしないでシティーホテルの最上階の部屋に女子を連れて行く。
期待はしつつもそこまでは想像できなかった「一夜」の出来事でした。
仕掛けられた「いたずら」のように今でも忘れていません。
もしかしたら本気で好きになってくれるかもしれないと思った、夜だったのでしょう。
でもそれを考えてはいけないと心の底で思っていたから、外の景色は揺れていたのです。
思い出のままで
ちょっぴり淋しい乃木坂 いつもの一ツ木通り
ここでさよならするわ 雨の夜だから
出典: 別れても好きな人/作詞:佐々木勉 作曲:佐々木勉
歌詞に再び街の名前が出てきます。
先程「高輪」が今夜ではなく、思い出の一夜の話と解説をしました。
これはここに出てきた街からも判断ができます。
「乃木坂」「一ツ木通り」は赤坂方面にある街や通りの名前です。
今夜はお店の外に出ても高輪方面には移動はしないのでしょう。
そして赤坂に隣接するこの辺りにも思い出が沢山あるのでしょうか。
2件目のお店がある通りは特に思い出深いようですね。「いつもの」がそれを表します。
でも「淋しい」気持ちを抱えたまま迫る別れの時間。
今夜は相手も誘う様子はありません。
女子も「今日は帰りたくない」とは口にしないのです。
ここで別れなければ痛手を負うのは女子なのでしょう。
相手は帰れば温かい部屋が待っているはずです。
今夜なら言える別れの言葉。「さよなら」の一言に別れを込めました。
雨に濡れながら泣けば涙をごまかすことができます。
そして思い切り泣いても雨が流してくれるでしょう。
本音だけを隠して闇の中に雨が降り続きます。
悪いのは私だけど
やっぱり忘れられない
変わらぬやさしい言葉で
私をつつんでしまう だめよ弱いから
別れても
好きな人
別れても
好きな人
出典: 別れても好きな人/作詞:佐々木勉 作曲:佐々木勉
独り雨の中を歩いて帰る女子の心の中を繰り返します。
歌詞は先ほどと同じなのが切ないですね。
ここでもまだ完全に別れることはできないのでしょう。
話す声もその内容もすべてが「やさしさ」で出来ている。
身体も心もスッポリと包んでくれたその温もりもまだ残っています。
傷跡のように思い出を残す相手が悪いのか。
それとも忘れられない私が悪いのでしょうか。
責めることができない相手を、悪く思う事だけはしたく無いのです。
それはまだ相手のことが「好き」だからでしょう。
会えないというより、会ってはいけない人なのです。
分かっていても心の中から消すことはできません。
渋谷から降り続く雨はまだ止んでいないようです。
雨の降っている間は「好き」なままでいさせてほしいのでしょう。
あの日と同じ雨にはあの日の愛が残っているはずです。
いつまでも忘れたくないから
別れても好きな人
別れても好きな人
出典: 別れても好きな人/作詞:佐々木勉 作曲:佐々木勉
歌詞は印象的なタイトルを最後まで繰り返します。
未練や重いと噂されそうですが、それくらいに好きだったのですね。
東京の街で落ちた恋は、夜と雨が似合う恋だったのでしょう。
自らはまっていった大人との恋。
割り切れるまでにはもう少し時間が必要です。
「好き」のままで眠れば雨は止むかもしれません。
最後に
1979年リリースの「別れても好きな人」。
1980年にロス・インディオス&シルヴィアはこの曲で紅白歌合戦に初出場も果たしています。
デュエットソングのロングセラー曲として今でも愛され続けていますね。
男性女性の掛け合いで歌うと、歌詞がより真実味を増しそうです。
未練がましさが少し怖いと感じてしまうかもしれません。
でも心を見抜いたタイトルは慣用句になるほどのインパクトがありました。
自分をだめと思う前に歌って欲しい「別れても好きな人」。
デュエットをお願いされたら、恋の思い出を受け止めて歌ってあげてくださいね。