一家に一鉢、一人一鉢、シクラメン
シクラメンと聞けば季節は冬ですね。開花の時期は秋の終わりごろから春の初めまで。
花の少ない冬の部屋を長く彩る花として、現在でも人気の品種です。
「シクラメンのかほり」の大ヒットはシクラメンの大ブームも引き起こしました。
「シクラメンのかほり」が大ヒットして、しばらくはどこの家にもシクラメンがありました。
しかも1種類ではなく、色違いで飾ることがトレンドに。
「シクラメンのかほり」の歌詞がイメージさせる花の姿は人々を魅了しました。
リリースは春でした
「シクラメンのかほり」(シクラメンのかおり)は、1975年4月に発売された布施明のシングルである。 1975年の『第17回日本レコード大賞』と『FNS歌謡祭』グランプリなど、音楽賞の大型タイトルを総なめ。またオリコンチャート上においては、布施にとって唯一のミリオンセラー(売上数・105.2万枚)を達成。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/シクラメンのかほり
季節の先取りが好きな日本ですが、「シクラメンのかほり」は春真っ盛りの4月にリリースされました。
季節を飛び越えたシクラメンは夏から秋へ、そして本来のシーズンの冬には大ヒット曲に開花しました。
布施明さんの代名詞となる曲です。
作詞作曲はBanker
作詞・作曲を手がけたシンガーソングライター小椋佳への注目もますます高まり、翌1976年に小椋は初のテレビ出演を果たした。この曲は、小椋が第一勧業銀行赤坂支店に勤めていた際、取引先の会社で休憩していた時に見た、自身には馴染みのない花であったシクラメンをヒントに思い浮かんだものである。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/シクラメンのかほり
本業ではないけれど大ヒット
副業のシンガーソングライターで「シクラメンのかほり」を作ってしまう才能にはビックリするほかありません。
当時は銀行員の副業がOKだったのでしょうか。
どちらもトップの成績を収める能力があれば、どちらかを止める必要もありませんね。
あまり見たことの無い花から受けた、インスピレーションが生み出した曲。
その時シクラメンを飾った取引先にも感謝ですね。
偶然の出会いが名曲誕生のきっかけとなる話はよく耳にします。
でもそこに才能も存在しなければ、楽曲は生まれません。
偶然を必然に変え、イメージを膨らませるパワーは計り知れないものがあるのでしょうね。
数字がズラッと並ぶビジネスの話と、歌詞を編み出すために言葉を選ぶことが同時進行するなんて…
天から与えられた二物の最上級グレードですね。
セレブ系シクラメンなの?
お待たせしました。歌詞に入ります。歌詞には3つの色のシクラメンが出てきます。
心の変化を花の色で表す高度なテクは、ニューミュージックの先駆者としての本領発揮。
少し泥臭さのあったフォークソングから抜け出したニューミュージックの歌詞。
一歩間違うとキザと取られかねない歌詞が、垢ぬけたメロディーラインに乗ってオシャレ度合いを高めました。
「シクラメンのかほり」の歌詞もその1つだと思います。
シクラメンの花に託した恋。心の色が移り変わりをする様子を、確認しましょう。
大切に育てたシクラメン
真綿色したシクラメンほど
清(すが)しいものはない
出逢いの時の君のようです
ためらいがちにかけた言葉に
驚いたようにふりむく君に
季節が頬をそめて過ぎてゆきました
出典: シクラメンのかほり/作詞:小椋佳 作曲:小椋佳
最初に出てきたシクラメンは『真綿色』。歌い出しにインパクトある色名が登場しました。
ところで真綿をご存知ですか。何となく知っている私ですが、実物を見たことがありません。
真綿は現代ではとても貴重な綿です。
真綿(まわた)とは、絹の一種で蚕の繭を煮た物を引き伸ばして綿にした物。日本においては、室町時代に木綿の生産が始まる以前は、綿という単語は即ち真綿の事を指していた。 木綿栽培が普及したほか生糸生産技術が復興したため真綿の生産は衰微したが、今日でも滋賀県・福島県・長野県などで機械を利用した生産が行われ、紬や布団などに加工されている。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/真綿
始まりは真綿色
真綿でくるむように育てられた、という使い方があります。
過保護でとても大切に育てられた、という例えです。門限は7時という場合は該当しますね。
真綿色と話が逸れてしまいましたが、真綿色のシクラメンも手をかけて育てた一鉢に思えます。
綿の色ですから、真っ白な白さではありません。生成りは麻や木綿の色ですね。
その間の色ともいえるのですが、ファッション用語のオフホワイトとも言い切れない色。
光沢のある絹そのものより、綿になった柔らかさのある姿。そこに掛けた声は何だったのでしょうか。
全く知らない相手に声を掛ける手段として「ハンカチ落としましたよ」がありますが、この歌の中ではNGですね(笑)。
『顔を知っているだけの相手に、勇気を出して声を掛けた』という設定にします。
働いている年代なら、取引先やオフィスの別フロアなどで見た顔が、心に残っていたなんてケースですね。
学生であれば、違う学年や塾の講習で見かけた、なんてこともあります。
夕方の時間帯ですが、とりあえずお茶にでもになるのでしょう。
恋の始まりが柔らかな白で描かれています。
声を掛けられた相手も、決して好意が0だった訳でもないようですね。
恥じらうように歩く二人の上に、心の色を表す夕焼けが広がるのが想像できます。
余談ですが、“清(すが)しい”にはやはりフリガナが必要ですね。
私もフリガナが無ければ読み間違えていました。爽やかに気持ちよく、清々(すがすが)しく解説を続けます。