Dance to the same beat, move like you move me, love like you can't breathe
出典: YEAH-OH/作詞:DOUBLE Liv NERVO Mim NERVO 作曲:T-SK TESUNG Kim Liv NERVO Mim NERVO
「同じビートに乗って踊ろう、あなたらしく動いて 私も身体を揺するわ、あなたの息が止まるほどに愛して」
リフレインの箇所は紙幅の関係で割愛いたします。
わずか一行のラインですが素晴らしい文言です。
ダンスの本質と愛の姿が同じラインで語られています。
クラブ空間ではDJが届けてくれる音楽に乗って同時に全員が踊る。
学校教育のダンスの授業ではないので、どんな姿態で踊ろうともその人の自由であり個性です。
大人になるに従って自分なりの踊り方を身に着けてゆきます。
バラバラなスタイルで踊るのですが、流れている音楽を皆で共有している。
それがクラブ空間の寛容さと慈愛の証です。
同じフロアにいる全員を愛したくなってしまう不思議な魔力がクラブにはあります。
刹那な愛であっても
出発してしまった愛
It doesn't make sense for you to hold back on this love
It doesn't make sense for us to ever give this up
出典: YEAH-OH/作詞:DOUBLE Liv NERVO Mim NERVO 作曲:T-SK TESUNG Kim Liv NERVO Mim NERVO
「この愛を抑え付けるなんてあなたには意味がないことよ
この愛を諦めてしまうなんて私たちふたりにとってまるで意味がないの」
すでに気分が高揚している状態ですから会ったばかりとはいえチャンスを逃すのはもったいないです。
クラブでのナンパがその後も長続きするカップルは少数かもしれません。
一夜限り楽しめたならばそれでいいという刹那な愛に生きている人の方が多いかも。
「YEAH-OH」のふたりはこの出会いを確かなものにしようと必死です。
あなたの反応はブラックボックスの中で描かれていません。
私という女性の側からの積極的な気持ちだけに焦点を合わせるのです。
語り手はどうしてこの愛がふたりにとって貴重なものなのかをあなたに説きます。
実際のクラブではいつも音楽が大音量で流れているので心の交歓はダンスに乗せているのでしょう。
ここでこの先も会えることを確約しないとこの出会いに未来はありません。
クラブでの出会いはそうした一夜だけのものと割り切ってしまう人もいます。
しかしあなたのステップはフロアで光り輝いていました。
語り手の私は肉食系女子ともいえるかもしれません。
男性を狩るつもりでフロアにいる女性は多いです。
ずっと続く愛とは描かれていません。
この夜を一晩中楽しみましょうとしか書かれていないのです。
未来のない恋愛かと眉をひそめる方もいらっしゃるはず。
それでも他人の恋路を邪魔できる権利は誰にもありません。
大人なのですからすべて本人たち次第で恋愛が進むのです。
「ラブ・トレイン」
愛が出発したならば誰にも止められません。
「何でもできるのでは」
It doesn't make sense baby it doesn't make sense for us
So common get it closer, common get it closer
出典: YEAH-OH/作詞:DOUBLE Liv NERVO Mim NERVO 作曲:T-SK TESUNG Kim Liv NERVO Mim NERVO
「意味がないわ、ベイビー ふたりにとっても意味がないのよ
だからもっと側に近付いて、もっと近付いてきて」
フロアにはそれ相応の隙間があります。
その隙間を詰めて身体を密着させて踊って欲しい。
日常生活ではセクハラを恐れて他人との距離を保ちます。
しかしクラブで踊っているときには大胆になって異性と身体を重ねた人も多いはず。
それがダンスのスタイルのひとつとして理解される空間なので結構何でもありかもしれません。
身体を合わせる相手はその場で出会った異性が殆どです。
肉体表現をしているのですから、その悦びをどこまでも追求したいもの。
もちろん「何でもできる」空間ではありません。
刑法の支配下にありますから遊びすぎたでは済まないこともあります。
しかし楽しみ方を心得ているのならばその辺のラインを意識して遊ぶでしょう。
大人の空間ですからマナーもあります。
それでも「何でもできるのではないか」と思える高揚感に身体も脳みそもしびれてくることがあるのです。
これがクラブでの悦びの最たるものだとも思われます。
今日出会ったばかりのあなたと身体を近付けて同じビートに乗る。
私はこの夜のフロアを支配しています。
安室奈美恵自身は超VIPの有名人過ぎてクラブで羽目を外すことが難しかったでしょう。
それでもこの夜のダンシング・クイーンに憑依してこのダンス・ナンバーを歌います。
彼女にとってのフロアはライブ会場でしょう。
自分の歌に乗ってたくさんの人が思い思いに踊ってくれる光景をステージから見られるのです。
類稀なる天才シンガーにしか見えない光景があるのでしょう。
「YEAH-OH」とダンスする自由
Don't you hold back this feeling cause this time I'm sure
We're singing yeah-o. singing yeah-h-h-o
Dance to the same beat, move like you move me, love like you can't breathe
出典: YEAH-OH/作詞:DOUBLE Liv NERVO Mim NERVO 作曲:T-SK TESUNG Kim Liv NERVO Mim NERVO
「あなたはこの感情を抑え付けたらダメよ 今度こそ私は確かだし
私たちは『YEAH-OH』って歌うの
同じビートに乗って、あなたらしく動いて、私も身体を揺らすから、息ができないくらいに愛して」
いよいよクライマックスです。
リフレインになっているので簡略な意訳にいたしました。
「YEAH-OH」はエレクトロ・ダンス・ポップらしくリフレインが多い曲です。
この傾向は反復することこそダンスの際に高揚を生むからでしょう。
エレクトロポップはその歴史の中で反復が人をトランス状態に導くことを見出しました。
これは実は太古の人間の祝祭での音楽と踊りの関係に回帰したものです。
音楽は祝祭の中で誕生しましたが、原始の音楽はパーカッション主体の素朴なものだと考えられます。
そうした研究を踏まえて戦後ドイツで生まれたハンマービートのエレクトロニクス・ミュージック。
やがてテクノミュージックの源流になります。
一方で「YEAH-OH」の様々な歌詞の中でこのラインがクライマックスに置かれたのは必然です。
「同じビートであっても、個性を大事にして、そして我を忘れて愛しなさい」
ダンス・ミュージックの悦びや精髄をこれほど美しい言葉に変えたこと。
安室奈美恵の「YEAH-OH」が長く愛されているのはこの一言に詰まった様々な真実に眼を啓かされるから。
先述したとおりにこの曲は風営法でクラブの深夜営業が禁止されていた時代の曲です。
こうした時代背景に異を唱えて、ダンスの魅力と愛の悦びを高らかに歌い上げました。
ダンスする自由を主張する人々によって風営法はこの後に改正されます。
しかし「YEAH-OH」が実はクラブ文化の暗黒時代の歌であることはどこまでも大事です。
あなたらしく踊って、愛しなさい。
「YEAH-OH」
安室奈美恵が世に問うたダンス復権のための歌です。
やっと夜に生きる自由を取り戻した私たち。
週末、日常では味わえない悦びを分かち合うためにクラブへ出かけてみませんか。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
OTOKAKEと安室奈美恵の軌跡
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中でも不健康な恋に邁進する女性を描いた楽曲をご紹介。
「CAN'T SLEEP, CAN'T EAT, I'M SICK」
不眠、摂食障害、病んだ。
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