So baby wait and see
癒せない傷なんてない
リスクがあるからこそ
愛する程にせつないのかな
そんなに悪くはない
どこか遠くへ
逃げたら楽になるのかな
そんなわけ無いよね
どこにいたって私は私なんだから
出典: Wait&See~リスク~/作詞:Utada Hikaru 作曲:Utada Hikaru
曲の終盤に差し掛かると、弱さや迷いを乗り越えようとする歌詞が広がります。
「逃げたら楽になるのかな」という問い掛けへの答えは「そんなわけ無いよね」。
「どこにいたって私は私なんだから」という、シンプルな覚悟です。
「自分自身からは逃れられない」という真実を知っているからこその言葉。
希望のようでもあり、絶望のようでもある真実です。
それでも、焦りや息苦しさは伝わってきません。
「そんなに悪くはない」と照れたように表現した、愛することの素晴らしさ。
これもまた、「リスクがあるからこそ」味わえるのかもしれません。
すべては「癒せない傷なんてない」という希望から生まれているのです。
ギミックと日本語
「するり」という表現
キーが高すぎるなら下げてもいいよ
歌は変わらない強さ持ってる
悩みなんて一つの通過点
大きすぎるブレスレットのように するり
出典: Wait&See~リスク~/作詞:Utada Hikaru 作曲:Utada Hikaru
曲の最後は、気持ちが楽になる優しい歌詞が並びます。
「キーが高すぎるなら下げてもいいよ」と歌った宇多田ヒカル。
しかし、実際の歌ではキーを上げてみせるという、心憎いギミックも取り入れられています。
もう1つ、感心させられるのは比喩の巧みさです。
「大きすぎるブレスレットのように するり」というフレーズ。
「通過点」を、ブレスレットの輪に例えた柔軟な発想力に感心させられます。
さらに驚くのは、「するり」という滑らかな語感の副詞で締めくくった歌詞。
日本語の響き、余韻まで大切にする宇多田ヒカルの美意識が、鮮明に表れています。
母国・日本の言語を客観的に見つめ、その素晴らしさに気付いたからこそなのかもしれません。
世界的な音楽プロデューサーとタッグ
本格的なサウンド
「Wait & See〜リスク〜」の編曲を担当したのは、アメリカの世界的音楽プロデューサー。
ジミー・ジャムとテリー・ルイスという男性2人組、通称「ジャム & ルイス」です。
シンセサイザーやドラムマシンなどのビートで、革新的なファンクミュージックを確立した彼ら。
1980年代にジャネット・ジャクソンのアルバムを全面プロデュースし、一躍有名になります。
マイケル・ジャクソンやマライア・キャリー、ビヨンセといった一流アーティストも数多く手掛けました。
宇多田ヒカルとのタッグは、99年の4thシングル「Addicted To You」から。
「Wait & See〜リスク〜」もロックテイストの強い曲ですが、濃密なグルーブを感じさせます。
もちろん、それらのサウンドに引けを取らない彼女の歌唱力の高さは、説明するまでもありません。
バンドを組み、プリンスのツアーでオープニングアクトを飾ったこともある「ジャム & ルイス」。
宇多田ヒカル初の日本国内ツアー「BOHEMIAN SUMMER 2000」に、ゲストプレイヤーとして参加しました。
驚異のセールス
たった1日で130万枚
発売日だけで100万枚以上を出荷した「Wait & See〜リスク〜」。
さらに、その日のバックオーダーも30万枚に上りました。
つまり、たった1日で130万枚以上を売り上げたというわけです。
「Wait & See〜リスク〜」は、宇多田ヒカル初のDVDシングルとしてもリリースされ話題に。
2001年の2ndアルバム「Distance」のオープニングナンバーに収録されました。
宇多田ヒカルの魅力を
多くに人に愛される理由とは
空前の765万枚を売り上げたデビューアルバム「First Love」に続くアルバム「Distance」。
こちらも、国内外を合わせて550万枚に迫るセールスを記録しました。
全13曲のうち6曲がシングルという、まるでベスト盤のような作品。
それぞれの歌詞も、瑞々しい感性が光っています。
OTOKAKEライターが、宇多田ヒカルの感性に迫った記事です。
宇多田ヒカル「Distance」オリコン1位となったアルバムランキングは?その歌詞に迫る! - 音楽メディアOTOKAKE(オトカケ)
宇多田ヒカルの記念すべき2枚目のアルバム「Distance」、そしてリード曲「Distance」、さらにシングルカット曲「FINAL DISTANCE」について、その他のアルバムランキングと共に深く掘り下げます。