儚い希望
夢の跡が 君の嗚咽が
吐き出せない泡沫の庭の隅を
光の泳ぐ 空にさざめく 文字の奥
波の狭間で君が遠のいただけ
出典: ウミユリ海底譚/作詞:n-buna 作曲:n-buna
主人公は外へ強い想いを寄せていたようです。
どうにかしてこの世界から抜け出して、外に出てみたい。
ですが、外に出るというのは難しいものです。
魚が陸に上がれないように、子どもには親が必要なように。
魚が陸に上がると死んでしまうし、親のいない子どもは今の社会では生きづらくなります。
ひょっとするとこの楽曲の世界観も、外の世界に出られないということが当たり前のことなのかもしれません。
しかし不可能というわけでもないようです。
陸で呼吸ができる魚はいますし、親がいない子どもも社会になじむことができます。
そして最後の歌詞を見るに「君」は主人公より一足先に外に出ていたのかもしれません。
届かない想い
「なんて」
もっと縋ってよ 知ってしまうから
僕の歌を笑わないで
海中列車に遠のいた 涙なんて なんて
取り去ってしまってよ 行ってしまうなら
君はここに戻らないで
空中散歩と四拍子
僕は 僕は 僕は
出典: ウミユリ海底譚/作詞:n-buna 作曲:n-buna
外に出ることを夢見ながら必死に自分の気持ちを表現していた主人公。
「君」も最初は主人公に共感していたのでしょう。
しかし、一足先に彼は外の世界を見てきてしまった。
その結果主人公の想いにも共感できなくなってしまったと考えることができます。
歌詞4~6行目を見ると、彼が行って戻ってきたというイメージがしやすいです。
中から見る外の世界はキラキラと輝いていただけなのに。
彼は何か落胆するようなものでも見てしまったのでしょうか。
離れていく
ただ 藍に呑まれてく 空の底
灰の中で夢を描いた
今 心の奥 消える光が
君の背を掻き消した
出典: ウミユリ海底譚/作詞:n-buna 作曲:n-buna
中の世界からみる外の世界はとてもキラキラと輝いていたものでした。
しかし、外の世界もどうやら同じ青色の世界が広がっている様子。
ちょっとずつ世界を知っていく主人公はキラキラしていたものが幻想だと思い始めます。
将来の夢をぼんやりと描いていた子どもが現実を知っていくように。
楽しそうかよりも、安全と安定を優先するような判断は、生きていく上で大切なことです。
しかし、ずっと前から持っていた心の輝きは徐々になくなっていきます。
昔の野望
触れる跡が 夢の続きが始まらない
僕はまだ忘れないのに
光に届く 波に揺らめく 夜の奥
僕の心に 君が手を振っただけ
出典: ウミユリ海底譚/作詞:n-buna 作曲:n-buna
少し前は外の世界への憧れやワクワクが止まらず、その想いを表現する活動が楽しかったはずです。
しかし今では…。
現実と事実を理解できるようになった今は、そんな活動も虚しいだけでしょう。
それでも、外の世界への特別な想いはまだ心のどこかに残っている。
昔は好きだったが、今では触らなくなった物ってどこか愛着がわくことがあると思います。
それとよく似た感情が主人公にもあるのではないでしょうか。
今では暗く、くすんでしまった想い。
それでも外の世界に行きたいという気持ちはまだあります。
だって主人公は自分の目で外の世界を見ていないのですから。
優しさはいらない
「なんて」
そっと塞いでよ もういらないから
そんな嘘を歌わないで
信じてたって笑うようなハッピーエンドなんて
逆らってしまってよ こんな世界なら
君はここで止まらないで
泣いて笑ってよ一等星
愛は 愛は 愛は
出典: ウミユリ海底譚/作詞:n-buna 作曲:n-buna
上記でも説明したように、やっぱり自分の目で一度は外の世界を見てみたい主人公。
まだそんな夢を持っているのか、と周りの人には鼻で笑われてしまうかもしれません。
どれだけ実現不可能な事でも。
一足先に外の世界を見てきた人が暗い気持ちで帰ってきていたとしても、主人公は実際に体験していません。
長年想い続けていた目標ですから、可能なら一度は行ってみたいという気持ちも出てきます。
現実を突きつけて
消えない君を描いた 僕にもっと
知らない人の吸った 愛を
僕を殺しちゃった 期待の言葉とか
聞こえないように笑ってんの
もっと縋ってよ もういらないからさ ねぇ
そっと塞いでよ 僕らの曖昧な 愛で
出典: ウミユリ海底譚/作詞:n-buna 作曲:n-buna