「大阪しぐれ」の時代
「大阪しぐれ」、この曲のメロディにはどこか懐かしさを感じます。
懐かしさと泥臭さが、なんともいえない風情を作り上げる曲です。
「大阪しぐれ」が流行した時代とはどんな時代だったのでしょうか。
1980年代の大阪を覗いてみましょう。
1980年代の大阪
1980年代、日本は経済大国としての地位を確固たるものとし好景気に沸いていました。
海外からのファッションやブランドがつぎつぎに取り入れられたのもこのころです。
海外旅行が一般化し、ひとびとは今までに味わえなかったいろんなものを手に入れていました。
そんな華やかな時代の波は関西の中心地大阪にも、もちろん広がっていたでしょう。
経済状態が良いということは、夜の街も活気づきます。
日本全体がふわふわとした空気につつまれていたころにこの歌は生まれました。
タイトルの意味
「大阪しぐれ」、このタイトルにはどんな意味が込められているのでしょうか。
タイトルに込められた歌のドラマのとびらをみていきます。
しぐれとは
しぐれとは、秋深い時期から冬にかけて降る雨をいいます。
強い雨ではなく、かといって弱すぎる雨ではないでしょう。
寒い時期に体をしっとりと包み込むような雨のイメージでしょうか。
転じて、しぐれには涙を流すことや、その涙を指す意味もあります。
雨のイメージと重ねるならば、子どものような大泣きではありません。
かといって涙をためるという程度ではないのでしょう。
ほろっとこぼれおちるような大人の悲しみを表す涙を連想します。
別れの場面
ひとりで生きてくなんて
できないと
泣いてすがればネオンが ネオンがしみる
北の新地はおもいでばかり
雨もよう
夢もぬれます あゝ大阪しぐれ
出典: 大阪しぐれ/作詞:吉岡治 作曲:市川昭介
北新地のネオン
北新地は「キタ」と呼ばれ大阪の繁華街のひとつです。
もう一つの大阪の繁華街は心斎橋あたり「ミナミ」と呼ばれる地域です。
キタはミナミに比べると少し上品な大人の街という感じでしょうか。
北新地はたくさんの飲食店が並び、数々の夜のドラマが生まれる場所です。
光かがやくネオンと、男性に泣きすがる主人公との対比が絶妙です。
輝くネオンの中で恋人と別れ一人になる主人公の心情が切なく胸に迫ります。
主人公が見た夢
北の新地といえば、夜の街の代名詞です。
そこに思い出がたくさんあるということは、夜の街で出会った二人なのかもしれません。
もしくは、夜にしかデートができない関係なのかもしれません。
そんな二人はなんらかの事情で一緒になれず別れが訪れます。
雨が降っているのは北新地だけではなく主人公のこころの中にも降っているでしょう。
「大阪しぐれ」がぬらすのは、主人公のどんな「夢」なのでしょうか。