浮世通り 乙女子紅差し頬赤らまし
大東京に 宵はガンダーラも夜通し 猿知恵はクラシック
出典: 大東京万博/作詞:小原綾斗 作曲/小原綾斗
通りもにぎやかになり、色めき立つ若い女の子達。
「浮世…」のところは日常とは違う特別な日に浮かれている様子もわかります。
宴もたけなわ、今からどのような祭典が繰り広げられるのでしょう。
「大東京」という言葉にはアジアの中心である東京の自信があふれ出ていますね。
楽器を奏でたり、舞を披露する演者達の様子が描かれています。
このままずっと夜のままで楽しいことが続くといいのですが…。
MVには演者を引き立たせる道具がたくさん出てきます。
猿のようなお面を被り祭りを祝う場面もありました。
装飾的な衣装やお面も南アジアの雰囲気があります。
「ガンダーラ」というのは今はもう存在しない国の名前ですがパキスタンあたりのことです。
インド周辺の国は仏教やヒンドゥー教が多いので、装飾品もこのあたりの物かも知れません。
珍しい楽器もあったのでTempalayのライブでも実際に演奏してもらえると嬉しいですね!
壊れかけているものとは?
雪どけこと知らず恋しくて
薄氷(うすらひ)ほどもろく儚(はかな)くて
逃れ逃れどこへ 死なないで生きていてね
出典: 大東京万博/作詞:小原綾斗 作曲/小原綾斗
ここの場面は空に向けた視線は変わりませんが何を見ているのでしょうか?
MVではちょうど高い丘の上に立ち花火を見上げるシーンがありましたね。
あれほど綺麗だった純白の雪はいつの間にか溶けてなくなってしまいます。
「うたかた」の恋を悲しむ様子でしょうか。
「うすらい」は薄くはった氷が割れそうな時にできる表面のヒビのことをいいます。
とても綺麗で壊れやすいものです。
ここでは花火のように美しいものが、消えてしまった時に「消えたのではない」と考えています。
それがどこか遠くに「逃げて行った」のだと自分に言い聞かせているのです。
歌詞の中でも特にもののあわれを感じさせるところではないでしょうか。
祭りの後の余韻
あなたはやさしさに泣く
子供みたいにひどく泣く
出典: 大東京万博/作詞:小原綾斗 作曲/小原綾斗
祭りの後は楽しければ楽しかった分だけ物悲しく感じますね。
最後のシーンは「泣く」の繰り返しの部分が響くように楽器の音と溶け合っていて、一番の聞かせどころです。
そしてこの聞かせどころの意味はふたつあります。
一つ目は「泣く」という意味をそのまま使っていることです。
泣いているのがあなたであること。
大人であるあなたは大人らしく一輪の大きな花として楚々として泣きます。
二つ目は歌詞の中には出てきませんが、空をみる視線の先にある花火のことです。
一輪の大きな花火は大人のあなたですから静かに大人らしく散っていきます。
では子供のあなたはどうでしょうか。
子供は体は小さいですが、泣くことでしか自分を誇示することができませんからとにかく泣きます。
小さくても凄い威力で火が付いたように激しく泣きますね。
花火に例えると花火大会の最後に打ち上げられるあの花火です。
小さな花火が次から次へと激しく打ち上げられます。
「これで最後なんだから騒いでやるぞ!」と言わんばかりです。
その日一番の歓声が上がってやがて最後の花火も終わりますがやはり余韻は残ります。
恋愛の結末も同じことでしょうか。
これで大まかな歌詞の解釈は終わりましたが、この歌詞のテーマについて次で掘り下げてみたいと思います。
テーマを探る~「はかなさ」の正体
歌詞を読み解いていく内にわかったことは、恋愛の感情を花火に例えているということです。
パッと開いた感情が跡形もなく消えてしまう時、複雑な思いが残ります。
恋愛だけとは限りませんが、人と人との出会いはぎこちなく不確かです。
後悔だけが残る時や、どんなにつかのまの恋でも一生忘れられないもの。
人生のすべてを賭けたものやたったひとつの約束も、相手にとってはどうでもいいことだったりします。
沢山の花火を見て過去のいろいろな恋愛を思い出してしまったのかもしれません。
なんの不安もなさげな幸せそうなカップルも心の中まではわからないのです。
一緒にいてもこの人が何処かに行ってしまうのではないか、と不安に感じている情景もありましたね。
消えていくもの、壊れていくもの、離れていくものなどに「はかなさ」を感じているように読み取れました。
そして飛び立つものを祝福する場面は、この歌詞の世界をより前向きなものにしています。
直接的な言葉を使わずとも感じ取れることの良さに気付かされました。
「はかなさ」の正体は、「はかなさ」を感じ取れる準備ができた時にわかるものではないでしょうか。
心から愛する人の幸せを後押しできるようになった時だと教えてくれています。
Tempalayその他の曲
「そなちね」
「そなちね」は緩やかな心安らぐ人気曲です。
いつもストーリー性のあるMVですが、これにもちゃんと落ちがあります。
しかもサスペンス仕立てのラストシーンになっています。
そこでTempalayらしい曲調に変わっていくところもいいです。