届かなかった想いの末路

想いはこぼれ落ちる
雪のように

出典: Snow Men/作詞:星野源 作曲:星野源

ここで「雪=彼の想い」だと分かります。

想いを彼女に届けようと必死だった彼。しかし届きませんでした。

この海を越えれば、この川を上れば、頂に辿りつけば届くと信じていたのでしょう。

届かなかった想いは、そう簡単に消えるものではありません。

忘れようとして忘れられるのならどんなにラクでしょうか。

行き場を無くした想いは自分の意志とは無関係に落ちていくのです。

それは、落ちる速度を自身で制御できない「雪」に似ています。

きっと雪に似て純粋で真っ白な想いだったはずです。

胸に 降り積もる光
今 記憶だけ溶かして
君が 振り返る時は
ただ 羽を広げ「さよなら」

出典: Snow Men/作詞:星野源 作曲:星野源

今美しく白く輝いている雪も、あっという間に溶けていきます。

彼が想いの中で「真っ先に消えてしまえ」と願ったのが、彼女との思い出や彼女と過ごした時間、彼女を愛した時間です。

彼女を忘れる障害となっているのがこれらの「記憶」なのでしょう。

記憶があるから、彼は彼女から離れられずにいます。

もしも忘れられたのなら、愛していた彼女の顔を見ても引きずられることはありません。

鳥のように自由に、どこへでも飛んでいけるようになるでしょう。

「Man」ではなく「Men」を用いた理由

「スノーマン」は聞き慣れた言葉ですが「スノーメン」はあまり耳にしません。

この曲のタイトルは『Snow Men』。

複数形を用いている理由に迫ります。

沢山の雪が落ちていく

迷いながら 笑いながら
海になるんだな
僕らは消える愛だ

出典: Snow Men/作詞:星野源 作曲:星野源

彼女に対する沢山の想いは、ひとつ残らず雪になりました。

雪は風に押されたり、雨まじりで溶けかけたり、落ち方も様々です。

この様子は、想いが届かないと悟った彼の心情を表しているのではないでしょうか。

受け入れなくてはいけないと頭では理解できていても、心が追いつかない。

泣きたいぐらい悲しいのに、なぜか笑ってしまう。

これからどうしたらいいのか分からない。

彼女への想いはいくつもあったのに、ひとつとして届かなかったことを思い知ります。

そして地上に落ちた雪は溶け、水になって流れ、海に溶けていくのです。

雪も想いもひとつではない、だから「僕ら」であり、タイトルが『Snow Men』なのでしょう。

カモメが空を遊ぶ
雪のように

出典: Snow Men/作詞:星野源 作曲:星野源

彼女を忘れて鳥のように羽ばたきたい、そう願っている彼。

頭上を自由に飛び回る白いカモメが見えたようです。

カモメは風に流されることがあっても、自分の意志で元の場所に戻り、目的の場所へと飛んでいけます。

彼女との記憶だけを水にして残った雪が再び空を舞えば、きっとカモメのように見えるのでしょう。

しかしそれはあり得ないこと。分かっていても、雪を残すのです。

なぜ彼は、全てを溶かすのではなく部分的に溶かし、他を残すことにこだわるのでしょうか。

鳥になって空を飛べば、愛していた彼女の目にとまるかもしれません。

彼はそれを望んでいるのではないでしょうか 。

「君を忘れて自由に飛んでいる」と彼女に見せつけ、後悔させたいという気持ちがあるのかもしれません。

それほどまでに彼女を愛していたのですね。

冬のカモメは白くない!

胸に 降り積もる光
今 記憶だけ溶かして
夏が 振り返る時は
ただ 羽を広げ飛んで

出典: Snow Men/作詞:星野源 作曲:星野源

前半は、前出の歌詞をなぞっています。

彼女を忘れる妨げになっている部分だけ溶けてしまえ、と願っている歌詞ですね。

夏の前の季節は春、もしくは冬。大きく異なる季節とするならでしょう。

夏がふと足を止め、置き去りにした冬に目を向けたとき、彼は自由に空を飛んでいます。

つまり夏=君と考えることができます。

水だった彼を蒸発させたのも、夏の日差しだったのかもしれません。

あるいは季節が移り変わったら、という意味で「夏」を用いている可能性もあります。

彼女を忘れるのには半年かかる、ということでしょうか。

空を泳ぐように飛ぶカモメ、実は夏と冬で羽の色が異なります

夏は白くて冬は灰色に近い斑点が入るのです。

つまり夏が見たカモメは真っ白ではないということ。

雪のように純粋だった彼の想いに「彼女を後悔させてやる」という黒さが混ざっているのではないでしょうか。

溶けた想いは水になる