人と人
“太陽”と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?
日の出や白日、朝焼け、夕焼け、夏、暑さ…。
ときに照りつける日差しに嫌気が差すこともありますが、その光によって私たちの命は生かされています。
太陽は自らがその役割を担っていることを知っていて、光を放っているのでしょうか。
同じように人と人も、気づいていないだけで、お互いに影響し合っているのかもしれません。
今回解説していく高橋優の「太陽と花」は、そんな人間模様にスポットを当てたメッセージソングです。
ドラマ「アリスの棘」主題歌
「太陽と花」は2014年にリリースされた楽曲です。
上野樹里主演のTBS系連続ドラマ「アリスの棘」の主題歌として書き下ろされました。
レトロでフィルターのかかったようなギターリフからこの曲は始まります。
心の奥底をノックされているかのような錯覚さえ覚えるドラムの音。
それに覆いかぶさるように、音飾が徐々に増えていきます。
高橋の声は冷たさと孤独が滲みながらも、どこか愛を感じます。
心のドアなどお構いなしに入り込んでくる攻撃的なサウンドは、思わず手を上げたくなるアッパーチューンです。
遠くにいる君への思い
笑っていたらいいな 幸せに包まれ
頼るあてもないまま 戦っているのかな
出典: 太陽と花/作詞:高橋優 作曲:高橋優
どこか遠くにいる君に思いを馳せる僕。
願っているのは心からの幸せです。
今は離れ離れのようですが、以前は深い関係にあったのでしょうか。
思い立つように旅に出たのか、それとも喧嘩をして出て行ったのか。
なにがしかの理由で、突然姿を消したようです。
夢に向かって頑張れ!という応援よりは、“生きること”そのものに心配をしているように聞こえます。
太陽のような君
太陽は自らを焼いて光る 陽を浴びた草木は花咲かせる
その眩しさは誰も見つめられぬほど
出典: 太陽と花/作詞:高橋優 作曲:高橋優
自己犠牲、無償の愛。
そんな言葉を連想させるフレーズです。
今は離れ離れの君のことを、太陽の光に例えて歌っているのではないでしょうか。
自分を犠牲にしてでも、誰かのために尽くしてきた君。
いつしかそれは他の人たちにとって当たり前になり、見過ごされるようになってしまったのでしょう。
日の目を浴びることはなく、君は孤独になっていった…。
君は人知れず戦っていたのです。
愛と孤独は背中合わせ
孤独な輝き 淋しい輝き
語られることもなくただ愛し続けてる
命の瞬き 誰もが一人
それぞれの空見上げて 今も繋がっていると信じながら
出典: 太陽と花/作詞:高橋優 作曲:高橋優
孤独の象徴のような太陽と君、その二つになぞらえて歌っています。
淋しさを感じるのは、愛のぬくもりを知っているからです。
愛を知らずに育ってしまえば、淋しさを感じることもありません。
主人公は君という存在がいなくなり、初めてそのぬくもりに気づくことができたのではないでしょうか。
今は会う術も話す術もなく、君は違う誰かのことを考えているかもしれません。
後悔を浮かべながらも、心のどこかで僕のことを思い浮かべてくれていたらいいな。
そんな懺悔と願望を空に歌っています。
気づけなかった君の強さ
心が傷付いても 誰にも分からない
無理して笑う顔は 泣き顔より悲しい
出典: 太陽と花/作詞:高橋優 作曲:高橋優
主人公の元を離れる直前、君はこの歌詞のような日々を生きていたのでしょう。
取り繕った笑顔はそのときは良くても、後々になって自分も、笑顔を向けた相手も苦しめてしまいます。
主人公も過去を振り返りながら「あのときの君は無理をしていたのかもしれない…」と、記憶に苛まれています。