沢田研二が輝いていた時代
昭和50年代、男性アイドルのキングがジュリー
1960年代後半、ザ・ビートルズが巻き起こしたバンドブームを受けて、日本でもさまざまなバンドがデビュー。
この一連のムーブメントをグループ・サウンズといい、頭文字をとってGSブームと呼んだ。
そのGSのバンドとは、ザ・サベージ(寺尾聰)、ザ・ワイルドワンズ、ザ・テンプターズ(萩原健一)、ザ・スパイダーズ(堺正章、井上順)、オックス、そしてザ・タイガース。
沢田研二は、ザ・タイガースのメインボーカルでその頃から絶大な人気があった。
1970年代になるとGSブームは下火になり、人気メンバーがバンドを脱退してソロに。
沢田研二もその時ソロとなる。
“ジュリー”は、彼がミュージカル女優のジュリー・アンドリュースのファンだったことから付いた愛称。
その陰りのあるセクシーなマスクと、甘く時に気だるい歌声で大人気となった、ジュリーは映画スターのアラン・ドロンとともにこの当時「いい男」の代名詞だった。
出す曲出す曲大ヒットして、1973年「危険なふたり」で日本歌謡大賞を受賞!
これ以降、沢田研二は、独自な路線を歩み始める。
鮮烈なグラムロックの洗礼、ジュリー豹変!
デヴィッド・ボウイやT・レックスの危ないセクシャリティを導入
グラムロックとは、今のビジュアル系(バンド)の先駆けで、男性シンガーが女装のようななまめかしいメイクや派手な衣装でパフォーマンスを展開。
その奇抜なステージングと斬新なサウンドは聴衆を魅了し、挑発した。
代表的なアーチストは、デヴィッド・ボウイ、T・レックス(マーク・ボラン)、ロキシー・ミュージックなど。
ただこのグラムロック、男性が女装するような倒錯性がひとつの特徴だった。
だから女装して似合うような美男子じゃないと務まらない。
当時日本でそんな美男子はジュリーだけ。
沢田研二はそんなグラムロック風の奇抜な衣装とメイクをとりいれ、歌番組やコンサートで華麗なパフォーマンスを展開。
当時のジュリーが放つオーラには、危ないセクシャリティが漂っていた。
それには賛否両論あったが、当時の女性ファンはそんな彼に熱狂した。
沢田研二✕阿久悠による“映画タイトルシリーズ”
「カサブランカ」は往年のアメリカ映画のタイトル
「カサブランカ・ダンディ」は1979年2月1日リリースの、沢田研二26枚目のシングル。
タイトルの「カサブランカ」は映画の題名で、1942年度のアカデミー作品賞を受賞した掛け値なしの名作。
ソロになってからの沢田研二の楽曲は、前期は安井かずみ(「危険なふたり」等)が歌詞を書き、この中期には阿久悠が担当。
この間、阿久悠がジュリーに向けて書いた「勝手にしやがれ」「サムライ」「ダーリング」はすべて映画の題名からとったもの。
これすべて阿久悠が意図して行ったもので「カサブランカ・ダンディ」もその映画タイトルシリーズのひとつ。
映画は“男のやせ我慢”をダンディズムに昇華した名作
挿入歌「As Time Goes By」が「時の過ぎゆくままに」に!
曲のモチーフになっている映画「カサブランカ」は、第二次世界大戦の物語。
映画は、ナチスドイツがヨーロッパを占領し始めた頃のアフリカ、モロッコから始まる。
ハンフリー・ボガート演じるリックとイングリット・バーグマン演じるイルザは、かつての恋人同士。
今、イルザは反ナチ(反ドイツ軍)活動に励む男が恋人のため、ふたりしてドイツ軍から追われる身。
そこでヨーロッパから遠く離れたアフリカのモロッコに逃げ、カサブランカでバーをやっているリックに助けを求めてくる。
イルザに未練たらたらのリックは、今の恋人から彼女を奪い取りたい衝動にかられるが、そこをグッと我慢して・・・。
-とここから先は映画をご覧いただきたい。
劇中、リックの営むバーで黒人ピアニストが、弾き語りで歌うのが名曲「As Time Goes By」。
邦訳すると「時の過ぎゆくままに」となりますが、同名の曲が沢田研二にあります。