「ドッペルゲンガー」には秘密がいっぱい
「加爾基 精液 栗ノ花」収録曲
名作「勝訴ストリップ」から約3年の月日を経て発表されたアルバム「加爾基 精液 栗ノ花」。
実験的なサウンド・プロダクションで彩られたこのアルバムの2曲目「ドッペルゲンガー」。
怪異現象を指し示すドッペルゲンガー現象をタイトルに抱きます。
旧仮名遣いに精通していないと解釈も中々難しいかもしれません。
また怪異現象を謳った歌のために付随して様々な逸話が生まれました。
歌詞そのものと、付随する逸話のひとつひとつを解きほぐしてみます。
様々な楽器が鳴り響く
凝りに凝ったサウンド
「ドッペルゲンガー」は玄関チャイムを模したようなシンセサイザーの音から始まります。
プログラミングの多用。
一般的なギター、ベース、ドラム、キーボードだけに留まらない様々な楽器が鳴っています。
椎名林檎がアルバムの制作に当たって従来の一発録りのようなサウンドからの脱却を目指していたため。
アルバムの制作に丸々1年費やしました。
「ドッペルゲンガー」も練りに練ったサウンド・プロダクションです。
おもちゃ箱がガチャガチャ鳴るような楽しさがあります。
ボーカルにヴィブラート
歌も楽器のひとつ
歌詞は旧仮名遣いで綴られます。
後に続く椎名林檎の歌詞の制作パターンがこのとき確立いたしました。
「ドッペルゲンガー」ではボーカルにヴィブラートを掛けたような処理がなされています。
ボーカルも様々な楽器のひとつという発想があるのかもしれません。
歌詞カードがなければ聴き取りづらいくらいに徹底したサウンド・プロダクションです。
解釈が難しい歌い出し
相反するワードの対置
実際に歌詞を見ていきましょう。
今日は 然様なら
愛してゐる 大嫌ひ
夕暮 泪雨
懇(ねんごろ) 赤の他人
出典: ドッペルゲンガー/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎
相反するふたつの心理状況に引き裂かれたような歌い出し。
ときによって移り変わりゆく乙女心の有り様を歌ったようです。
懇(ねんごろ)とは親密な関係を表す言葉。
その直後に疎遠な関係が並べられます。
最初のワードに対比する言葉を次に充てる。
この時点ではまだ歌詞の意図の解釈が難しい状態です。
先へ急ぎましょう。