もがくあなたの背中を押すやさしい言葉
UVERworldの2017年1枚目のシングル「一滴の影響」。
アニメ『青の祓魔師 京都不浄王篇』の主題歌となっていますが、アニメのオープニングの中で聴いた人は、主人公の燐やその弟である雪男に対する詩だと感じた人も少なくないのではないでしょうか。
思うようにいかず、悩みもがく少年たちの背中をそっと押すような、やさしい言葉の並ぶ歌詞をみていきましょう。
『一滴の影響』その歌詞から読み取る思い
許せば進めるし 恨みは立ち止まらす
あれは僕のせいにしな それも僕のせいにしてよ
君をずっと立ち止める その全てと
僕以外を許して 進んで行きなよ
出典: 一滴の影響/作詞:TAKUYA∞ 作曲:彰・TAKUYA∞
歌い出しからとにかく印象的な言葉です。
恨みのような負の感情は、ひとが背負いながら前に進むには重すぎるもの。
「あれがいやだ」「これが気に入らない」「あれさえなければ……」
そうやって誰か(何か)に対する恨み言や苛立ちを抱えていれば、歩いていたはずの足は止まり、その場に停滞してしまいます。
停滞とは何か?
それは、負の感情に心を支配されてしまうことで、新しいものを見て、それに対して感動する余裕がなくなることです。
あるいは感動したり、楽しいと感じたりする瞬間に出会えても、ふとした瞬間にもやもやとした心地よくないものが心の中に蘇ってしまうことだと思います。
気持ちが、不快な思いをした瞬間から動けなかったり、すぐに立ち戻ってしまう、そうなる理由をすべて『僕』に押し付けて、進んでいくことを促しているのです。
生涯枯れることのない花 と名付けても
生涯枯れることのない花 になることはない
真面目に生きていれば いつか報われる
そうやって言い切ってしまえば それは嘘になる
出典: 一滴の影響/作詞:TAKUYA∞ 作曲:彰・TAKUYA∞
どんなことでも思いどおりになる、そんなことはありません。
うまくいくこともあれば、うまくいかないこともあります。
自分の思い描いたとおりになるという保証はどこにもないのです。
身に起こるその数十% 自業自得でも
残りの数% 誰のせいでもないその不平等を
許せば進めるし 恨みは立ち止まらす
あれは僕のせいにしな それも僕のせいにしてよ
僕以外を許して進んで行きなよ
君自身のことも許してあげてよ
出典: 一滴の影響/作詞:TAKUYA∞ 作曲:彰・TAKUYA∞
失敗したり不運なことが起きたり、そういうものは大抵自分でまいた種なのだけれど、中には本当にただのアクシデントで、冷静に原因を探るとただただ運が悪かった、ということだってあり得ますよね。
冒頭の歌詞の部分で「誰かに対する恨み言や苛立ち」と書きましたが、ここまで読んでいくと「誰か」が『君』の場合は「自分」に向いていることがわかります。
「誰も悪くないこと」で自分が悪かったんじゃないかと思い詰めることもまた立ち止まってしまう原因になります。
反省することは悪い事ではないけれど、自己嫌悪に陥ることは良い事とは言えません。ないはずの責任をかぶろうとすることもまた、良い事ではありません。
だったらそういう「誰のせいでもない」ことはすべて『僕』のせいにして、『君』も含めた『僕以外』を許して前を向いて歩いてほしいという願いをこめた、やさしい言葉がここにあります。
罪と罰が問えないもの 生きることは傷つくこと
誰もが幸せになれるなんて 思っちゃいないけど
出典: 一滴の影響/作詞:TAKUYA∞ 作曲:彰・TAKUYA∞
生きている以上、傷つくことはあります。
その中には、たとえば自然災害のような、その罪や罰を問う対象が存在しないこともあり得ます。
どうにもできず、傷ついたまま辛い思いを引きずってしまう人が生まれてしまうことは否定できません。
並べられたやさしい言葉の中で、現実というのはこういうものなのだと改めて示されます。
それでも、誰もが幸せになれるだなんて、思ってはいなくても、願ってはいるのかもしれません。
一番いけないことはさ 自分はダメだと思うこと
誰のせいでもないことを 自分のせいにして
今日も君は生きている
人の涙を見ても 何も感じなくなってきたのは
自分の心を殺すのが上手過ぎる 哀しいサインだよ
出典: 一滴の影響/作詞:TAKUYA∞ 作曲:彰・TAKUYA∞
上手くいかない理由を求めすぎて、誰のせいでもないのに原因は自分にあると思い込んでしまう。
「誰のせいでもない」ということは「自分のせいでもない」のに、そうやって自分を雁字搦めにしてしまう。
何も感じなくなったのは、『君』が冷たい人だからじゃなくて、今まで自分を責め立てて身動きが取れなくなっているからです。
何かを感じる余裕もなくなってしまっているのだと、なだめるようなやさしい言葉で『君』を導いています。
真面目に生きていれば いつか報われる
そうやって言い切ってしまえば それは嘘になる
身に起こる その数十% 自業自得でも
残りの数% 誰のせいでもない 不平等
一番いけないことはさ 自分はダメだと思うこと
誰のせいでもないことを 自分のせいにしないで
立ち止まらないで
出典: 一滴の影響/作詞:TAKUYA∞ 作曲:彰・TAKUYA∞
これまでにも出てきたやさしい言葉が、言い聞かせるように繰り返されています。
思い通りになることばかりじゃないし、明確に責任を負うべき誰かが存在しないことだってあります。
自分の成したことの結果ではない出来事が、自分の身に降りかかることは決して珍しいことではありません。
そんな現実を受け入れて、『君』が自分のせいにして立ち止まってしまうことのないようにと祈るように、けれど力強く紡がれています。
前を見て、歩いてほしいという願いがそこにはあります。
ずるい奴が笑う世界 そう言いながら物事が
ゆっくりでも良い方に進むと信じ 今日も
正しく生きようとする君は素敵だよ
そんな自分を君も愛してあげてよ
出典: 一滴の影響/作詞:TAKUYA∞ 作曲:彰・TAKUYA∞