“唯一無二”のシンガーソングライター
ガラス玉のように反射を繰り返す水面。
その水面下にどこまでも深く響いていくような音。
ハスキーと評されることも多い秦基博の声ですが、聴けば聴くほど、そんな輝度と瑞々しさを感じます。
紡がれるメロディは秀逸で、ポップでありながらどこか哀愁が漂い、聴く人の心を掴んで離しません。
歌詞も実に魅力的です。
名曲「アイ」や「ひまわりの約束」のように、日常のふとした瞬間を切り取った世界観。
生活の中に散りばめられた幸せを教えてくれます。
そして彼の代名詞といえば、アコースティックギターによる弾き語りでしょう。
弾き語りはシンガーソングライターにとって、真価が問われる場面。
決して難しいテクニックを多用するわけではありませんが、プレイの精度が非常に高いです。
ストロークひとつをとっても多彩な使い分けをしています。
楽曲そのものがもつ生命力と、楽曲の表情を最大限に引き出す秦基博のポテンシャル。
その2つが組み合わさることで、バンドアレンジでなくとも、世界観を十分に描き出すことができるのでしょう。
今や日本を代表するシンガーソングライターの1人と言っても過言ではない秦基博。
今回は数ある楽曲の中から、10曲をセレクトしました。
彼の紡ぎ出す世界をじっくりと味わってください。
10位:エンドロール
別れを歌った冬のバラード
「エンドロール」は2012年にリリースされた楽曲です。
大切な人との別れを歌ったバラードナンバー。
冬を舞台に歌詞が綴られていきます。
アコースティックギターによるアルペジオを基調としたイントロは、静かな冬の朝の景色が浮かび上がります。
楽曲の展開とともに徐々に増えていく音数は、雪が降り積もっていくよう。
ラストのサビでは転調し、厚みを増したサウンドが悲壮感を演出しています。
映画の余韻のように残った未練
ねぇ いつもなんで 僕はどうして
肝心なことだけが言えないで
ねぇ 会えなくって 忘れられなくて
ずっと 歩いていくよ
誰もいない 白黒の世界 僕は ただ君を想うよ
出典: エンドロール/作詞:秦基博 作曲:秦基博
別れてしまった大切な人への後悔。
そして言うべきことをちゃんと言えなかった自分自身に対し、不甲斐ない思いが胸を満たしています。
まるで映画を観た後の余韻のように残った未練。
まさに「エンドロール」というタイトルがふさわしい名曲です。
9位:透明だった世界
風を切り裂くような疾走感に溢れるサウンド
2010年にリリースされた10枚目のシングル「透明だった世界」。
人気アニメ『NARUTO -ナルト- 疾風伝』のオープニングテーマとして起用されていました。
主人公である忍者・ナルトが森の中を駆け抜けていくかのような疾走感のあるサウンド。
別れがテーマでありながら、いつか来る“再会”のときまで走り続けると歌う、ポジティブな楽曲となっています。
ナルトの生き方
大切な人を失った喪失感を抱えながらも、未来に希望を見出そうとする姿。
それはアニメの主人公であるナルトを思い起こさせます。
アニメ、そして原作である漫画を読んだ後に「透明だった世界」を聴くと、より楽曲の世界観を堪能できます。