主人公の女性は男性に対し、かなり怒りを抱いています。
二人の関係はどんな風に始まりねじれているのでしょうか。
騙されて
男性は最初から火遊びのつもりで主人公の女性と親しくなったようです。
一方、主人公である女性の方は、100%男性が本気だとは思っていなかったかもしれません。
何となく惹かれて、そして口説かれて、近づいてしまった。
恋の始まりは例え本気にするつもりであっても先のことはわかりません。
女性もそのことはたぶん理解している年頃でしょう。
しかし、男性が何気なく話題にした星座の話から、男性が最初から全く本気ではないことを感じてしまったら。
女性は男性の「何気ない」ふるまいに隠された本音に敏感です。
男性にとって都合のよさそうな星占いの星座を彼女に当てはめようとする言葉に、男の本性を見てしまったら。
その瞬間、女性の気持ちは「怒り」と「執念」にかわっていくのです。
笑うのは私の方
星座の話をして雲行きが怪しくなるまでは、男性はうまくいったと思っていたでしょう。
自分は本能のままに恋を楽しみ、そして後はするりと逃げるだけ。
女性の好きそうな星占いの話でもしておけば間が持つだろう、とそんな風に考えたかもしれません。
バカな女をうまく騙せたとも思っていたかも。
そんな男性の本音が透けて見える態度に、主人公は怒りを膨らませます。
女性の心と体をもてあそんで、勝ったような顔をしている男。
一時の快楽のために平気で人を騙せる男。
残念ながら、バカは男性の方。
彼女がさそり座のしかも賢い女性だということに気付かずに遊びを仕掛けた男性がバカなのです。
あとからじわじわと
実際のさそりは種類が多く、人間が刺されて死に至るほどの毒を持つものは限られています。
とはいえ、中には刺されようものならわずか1時間で命を奪うほど毒性の強いものも。
さそりの怖さはもうひとつ。
身の回りのどこかに潜んでいて、こちらが油断していると噛まれるかもしれないという恐怖。
さそり座の女性をもてあそんだ男性。
狙いを定めたと宣言されたからには、これから先は、どこに潜んでいるかもしれぬさそりに常に怯えなければなりません。
女性の心を踏みつけにしたその代償はかなり大きなものとなるようです。
今じゃないわ
紅茶がさめるわ さあどうぞ
それには 毒など 入れないわ
つよがり言っても おんな おんな
おんななのよ
そうよ私は さそり座の女
さそりの星は 一途な星よ
出典: さそり座の女/作詞:斉藤律子 作曲:中川博之
逢瀬の終盤がやってきました。
二人のすれ違った思いの決着はどんな風につくのでしょうか。
どうしよう
自分が思っていたのとは違う方向に話が進むことに当惑する男性。
終盤では、当惑を通り越し怯えているようです。
うまくやったはずの女性が淹れた紅茶にもドキドキする始末。
彼の頭の中はどうやって逃げようか、そんな思いでいっぱいのようです。
対する女性の方。話の方向の手綱を握る彼女は若干余裕のようです。
そんなに怖がらなくても大丈夫。今ここであなたを何とかしたりはしないから。
そんなセリフが聞こえるようです。
上滑りのような会話を2~3言交わすか、若しくは無言で二人は別れまでの時間を過ごしています。
女性の本音は
男性を追い詰めるように言葉を重ねる主人公。
彼女の本心は、その言葉とは少し違っているように感じられます。
彼女は男性を怯えさせて追い詰めることに執念を燃やしているだけではないでしょう。
もし、男性が今この場で「あそび」という気持ちを捨て去るなら。
許してやっても良いわよ、そんな風に考えているところもあるようです。
主人公が怒っているのは、彼がはなからあそびだったという点。
二人の状況によってはどうにでも流れるという大人の粋さがそこには感じられません。
そんなバカげたあそび心を撤回し、心からそれを詫びるなら。
彼女は彼を許すことができるかもしれないし、自分を納めることもできるかもしれないのです。