背の高い夏草でかくれんぼ 鬼は迫り来る時間の流れ もういいかいまだだよって叫んだよ
僕は今も見つからないままで あの時と同じ膝をかかえて 部屋から青い空を見上げて
夏を待っていました
出典: 夏を待っていました/作詞:秋田ひろむ 作曲:秋田ひろむ
ここで時間軸は4人の子ども時代を離れます。
1行目は、かつて生まれ育った田舎で遊んでいたことを思い返しているのでしょう。
大人になってそれぞれの人生を歩み始めた4人。しかし僕だけは、いまだに踏み出せていないようです。
本当の自分はどこだろう。自分って何だろう。
そんな思いを抱える僕は、いつまでも子どもの頃に思いを馳せます。
それでも見つからない。そんな僕は狭い部屋の中で、1人寂しく夏を待っているのです。
時代は再び過去へ…
③太平の話
身長が高くて喧嘩が強い 太平はいつも無茶な遊びを思いつく
「この鉄橋に一番 長くぶら下がったやつの 言うことは何でも聞かなきゃダメだぜ」
僕らはびびって出来なかったけど 太平は平気な顔でぶら下がる
7年後に太平はビルから飛び降りた そんな勇気なら無いほうが良かった
出典: 夏を待っていました/作詞:秋田ひろむ 作曲:秋田ひろむ
さて、物語は再び彼らの少年時代へとさかのぼります。
最後に登場するのは、仲良しグループのリーダー的存在でもあった頼もしい太平。
彼は子どもの頃からひときわ派手な遊び方をしていたようです。
ここでもそのエピソードが語られていますね。ほかの3人にはできないことも、太平ならできたのです。
そんな、誰もがうらやむ強さや勇気を持っていた彼。その勇気は7年後、思わぬ形で再び姿を現しました。
それがビルからの飛び降り自殺。もっとも自殺しそうになかった太平が、あっさりビルから飛んだのです。
この事件は僕に、大きな影響を与えることとなります。
いつまでも隠れたままの僕
高層ビルの下でかくれんぼ あれから何年がたっただろう もういいかいまだだよって声もない
もしも今日があの日の続きなら 僕らの冒険を続けなくちゃ 六月の空を僕は見上げて
夏を待っていました
出典: 夏を待っていました/作詞:秋田ひろむ 作曲:秋田ひろむ
さて、また時間軸は現代に変わっています。
成長した僕は生まれ育った田舎を離れ、上京してきました。
自分探しの延長でしょうか。少なからず希望を抱いていた僕に対し、想像以上に優しくない都会。
相変わらず何も見つけられない僕は、都会のビル群でかくれんぼを繰り返し続けています。
しかし都会の喧騒の中、すっかり埋もれた僕に応えてくれるものなど何もありません。
それでも僕は踏みとどまっています。逃げていてはいけない。そう思ったのかもしれません。
子どもの頃のまま、心の成長が止まっていた僕。その時計を動かしたのはきっと、リーダー太平の死でしょう。
少しずつ、少しずつでいいから、自分を見つけていこう。そんな冒険に出る決意を固めます。
この楽曲が伝えたかったこと
①人の心は見かけによらない
まず、この楽曲において1番社会に適合しているようにみえたのが太平でした。
ほかの3人は何かしらの弱点や問題を抱えながら生きていた半面、太平にはそれがなかったからです。
しかし成長した彼らの様子は、全く違っていました。
社会適合者にみえた太平は自らの命に終止符を打ち、まるで社会不適合者だった3人がまだ生きながらえている。
つまり強いように見えた人でも、その心が強いとは限らないということです。
そして強さが実は弱さに、反対に弱さが実は強さに変わることもあると教えてくれています。
実際に太平を殺したのは彼の強さでしたし、ほかの3人を生かしているのはその弱さかもしれないのです。
これが何を意味するかというと、まずは「人の心は表面からわからない」ということ。
そして「弱さはうまく利用すれば、最高の武器になる」ということです。
そんな風に、人間の生き方を説いているのかもしれません。
②過去にとらわれ続けるな
続いての解釈は、踏み出せない人に向けた応援歌というものです。
主人公の僕は何の取り柄もないような、平凡すぎる少年でした。
そんな僕には、本来ならネガティブなDVや内気な性格でさえ、うらやましく見えたのかもしれません。
だからこそいつまでも自分が見つからないと、悩み、閉じこもり、過去の中で考え続けていたのでしょう。
しかし太平の死をきっかけに、彼の時間はようやく進み始めました。
自分は何もない。そう悩んでいた僕にとって、何でも持っていた太平の死は相当なショックを与えたようです。
あの太平でもできないことはあった。みんな完璧じゃないんだ。僕にもできることがあるかもしれない。
前向きな気持ちで、一歩踏み出すことを決心できた僕。
そんな僕の姿を描くことで、同じく悩む人の後押しをしたかったのかもしれません。