3rdアルバム「Bremen」
ツアータイトルも「音楽隊」
「Bremen(ブレーメン)」と聞くと、グリム童話「ブレーメンの音楽隊」を連想しますよね。
その名の通り、米津もブレーメンの音楽隊を思い浮かべながらこのアルバムを制作したのだと語ります。
6曲目に収録されている「ウィルオウィスプ」という曲の中に「犬も猫も鶏も引き連れ街を抜け出したんだ」という歌詞があります。
ここからも、ブレーメンの音楽隊を明確にイメージしていることが読み取れます。
ではなぜブレーメンの音楽隊をテーマとしたのでしょうか。
音楽隊の目的は
ブレーメンの音楽隊という童話は、「それぞれ居場所のなくなった動物たちがブレーメンを目指して旅をする」という内容です。
それは米津の当時の状況とリンクする部分があったのだそうです。
ボカロPからJ-POP界へと進出を果たしたものの、うまくなじめずにいる自分とイメージが重なったのかもしれませんね。
どんなところからも、アルバムタイトルを「Bremen」にしようと考えたそうです。
このテーマは2ndアルバム「YANKEE」の延長線上という意味もあるのでしょう。
「YANKEE(ヤンキー)」とは「アメリカの移民」という意味があり、「移民」とは「新天地を目指す人々」です。
米津自身はもちろん、「自分の居場所に違和感を覚えている人たち」のために誰もが共感できるアルバムにしようと考えて作ったのだと語っています。
曲同士の対話
「Bremen」の9曲目に収録された「メトロノーム」という曲。これは切ない別れをえがいた楽曲となっています。
それに対して、アルバムの最後を飾る14曲目、「Blue Jasmine」は愚直なラブソング。
これはどちらも米津自身の中にある、人としての側面です。
誰にでもあるでしょう。初恋や失恋、燃えるような恋心と冷め切った倦怠感。
対照的なその感情たちは、矛盾しているけれど一人の人間の中にあるものです。
だからこそ、米津はその対照を浮き彫りにすることで、新たな別のものがうまれるのだと言います。
歌詞を徹底解剖!
「Blue Jasmine」は自分の人生と向き合う時、すべて愛せるための必要な言葉を選んで作った曲だと米津は語ります。
では一体どんな歌詞なのか、見ていきましょう。
僕はその過去一つ残らず 全てと生きてると
あなたの思い出話を聞く度 強く感じているんだよ
僕はその過去一つ残らず 全てと生きてると
差し出したジャスミンのお茶でさえ 泣き出しそうな顔をして
戸惑いながら口を付けた あなたを知っているよ
出典: Blue Jasmine/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
愛しい人の思い出話。それを共有してくれること、それらすべてと生きていること。
幸せという言葉を使わなくても、これほど幸福な様子を表現できるのは米津玄師らしいと思います。
いつかあった、泣いて戸惑ってどうしようもなかった日。
彼女のそんな弱さも知っている。だからこそ愛しいと思える。
そんな誰もが共感できる幸福の形に、思わず胸がジーンとしますね。
上手には生きられなかったけど
沢山の道を選べるほど 上手には生きられなかったけど
心も体も覚えている あなたとなら生きていられる
出典: Blue Jasmine/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
たった2行の歌詞ですが、一人の人間の人生に対する深い敬意と思いやりを感じられる言葉です。
ブレーメンの音楽隊のように、居場所からあぶれてしまった人、様々な理由で夢をあきらめざるを得なかった人。
選べた道は少ないけれど、愛しい人とともにいられる事は奇跡とも呼べるかもしれません。
そんな奇跡を毎日体験して、毎日を奇跡によって生かされる。
それが心と身体を満たしてくれる。これほど幸せな事は他にあるでしょうか。