先述にもある通り、この“3匹”とは「ゆらゆら帝国本人たち」のことかと思われます。
または、本人たちを含め、その他似たような人たち、といったところでしょうか。
歌詞の中では、人間の感情に訴えるような言葉はほとんど出てきません。
ただし、唯一メッセージっぽい部分が見えるのは上記の歌詞。
「俺たちのつくった曲が、君の感性をガラリと変えるかもよ?」
詞の背景に、そんなメッセージが隠されているのではないでしょうか?
本人たちが、本当に夜行性なのかどうか定かではありません。
でも、「気の狂うような想いで楽曲制作をしている」と考えてみるとどうでしょう。
常人では考えられないようなテンションで、日々曲づくりをしている。
実は、そんな本人たちの音楽への姿勢が描かれているのかもしれません。
そして先ほどは、「本人と、その他似たような人たち」といったことを書きました。
その点については、この続きから説明していきます。
同じような仲間がいるかもしれない
よく目を凝らして見れば
交差点 繁華街 公園 だれかのアパート
夜行性の生き物がおよそ3匹
線路沿い 映画館 公衆電話のゴミ箱
夜行性の生き物がおよそ3匹
出典: 夜行性の生き物三匹/作詞:Shitaro Sakamoto 作曲:Yura Yura Teikoku
ここはおそらく、「どこに何が潜んでいるのかわからない」といった意味でしょう。
自分たちと似たような人間が、自分たちと同じように何か活動しているかもしれない。
同じ街のどこかで“君たちの感性を錆びつかせるような”何かをしている人間たち。
そのため、“3匹”と言い切るのではなく“およそ”としているのでしょう。
自分たちと同じくらい、もしくは自分たち以上におかしなテンションで。
人の「何か」を変えてしまうようなものを生み出している人間がいる。
この辺りの解釈は、実はMVと少しリンクしています。
MVは、ひたすら3人のひょっとこが踊っている映像でした。
しかしその中で、この3人をズームアウトしていく部分があります。
すると、この3人の他にもズラリと同じようなひょっとこたちが登場。
実はかなりの人数で阿波踊りをしています。
この部分でも、なんだか良い意味で奇妙さが増します。
君の感性は簡単に変わるかもよ
3分間の この曲が
最先端の 君の感性を
3分間で 錆びつかせる
出典: 夜行性の生き物三匹/作詞:Shitaro Sakamoto 作曲:Yura Yura Teikoku
先ほどは触れませんでしたが、この部分の言い回しも実に絶妙。
“最先端”だったはずの感性が、一気に錆びついてしまうのです。
それほどの大きな影響力があるかもしれない、ということでしょう。
また「さん」と「さい」で韻を踏んでいるところも、気持ちの良いフレーズです。
最後は「バンドそのもの」?
頭上で暗い雲 というか真夜中だから真っ暗
夜行性の生き物がおよそ3匹
事情はいろいろだ まして素性なんてわからない
夜行性の生き物3人組
出典: 夜行性の生き物三匹/作詞:Shitaro Sakamoto 作曲:Yura Yura Teikoku
ここまで読み解いてきましたが、まだこの“真夜中”の部分には触れていませんでした。
総合して考えてみると、おそらくは“孤独”の暗喩かと思われます。
自分たちの活動は、世間一般には理解されないかもしれない。
そして今は感性の合うこの3人で集まっているけれど、本当のところは分からない。
お互いにまだ知らない部分や理解し合えない部分が沢山あるかもしれない。
これまでは“およそ3匹”だったのが、はっきり“3人組”といっています。
最後の部分のいたっては、「ゆらゆら帝国そのもの」のことを指しているのでしょう。
MVとの関連性
あくまでサウンドを際立たせるもの
MVと歌詞とでリンクしている部分もありましたが、おそらく関連性は低いかと思われます。
このMVは、歌詞の世界観というよりもサウンド重視で制作されたものでしょう。
映像そのものには、ゆらゆら帝国の魅力が十分すぎるほど詰め込まれています。
見ているうちに、頭の中がグルグルと、そしてフワフワとしてくる感覚。
どんどん現実とは異なる世界に引きこまれていく感じがします。
ちなみに、このMVで踊っている方たちはプロなんだそう。
高円寺の阿波踊り協会に所属されている、いわゆる「本物」の方たちみたいです。
感情の上手く読み取れないひょっとこの表情が、サイケデリックな雰囲気と絶妙にマッチ。
日本の「和」の文化とロックがキレイに融合した作品に仕上がっています。