夜咲くネオンは 嘘の花
夜飛ぶ蝶々も 嘘の花
嘘を肴に 酒をくみゃ
夢は夜ひらく
出典: 圭子の夢は夜ひらく/作詞:石坂まさを 作曲:曽根幸明
藤圭子の生年月日は1951年7月5日、「圭子の夢は夜ひらく」の発売は1970年4月25日です。
この歌詞を歌った時点で藤圭子はまだ成人にはなっていません。
未成年でありながら夜の街の虚飾や、アルコールの嗜みなどについて歌いきった力量がすごいです。
アイドルとしての藤圭子
共感力があった時代
前を見るよな がらじゃない
うしろ向くよな がらじゃない
よそみしてたら 泣きをみた
夢は夜ひらく
出典: 圭子の夢は夜ひらく/作詞:石坂まさを 作曲:曽根幸明
しっかりとした人生なんてとても送れないような私の実情が描かれたラインです。
それでも他人の挫折を我が事のように受け止められる社会的な下地がこの時代にはあったのでしょう。
このラインが愛されます。
他者の不幸に寄り添えるチカラ
愛されたのはダメダメな私の人生でした。
そこに我が身を重ねるような人々の支持で大ヒットを記録します。
いまの時代には失われている感覚のような気がしてどこか寂しい想いもします。
共感するチカラの後退のようなもの。
もう一度社会に呼び起こしたいチカラです。
どこか捨て鉢な人生観ですが、それでも夢の中だけでなら救いはあると繰り返し歌われます。
愛すべき人々との邂逅
一から十まで バカでした
バカにゃ未練は ないけれど
忘れられない 奴ばかり
夢は夜ひらく 夢は夜ひらく
出典: 圭子の夢は夜ひらく/作詞:石坂まさを 作曲:曽根幸明
荒んだ人間関係であっても忘れがたい愛すべき存在はいたのだと歌います。
この歌にも愛や希望があったのだと想い安心しました。
どこか憎めない人々への追憶に泣かされます。
僅か一行のサビに込められた想い
元が俗謡ですからこの曲のサビは僅か一言です。
暗い生涯でも夢の中でなら人生を救い出すことができるのだと終始歌い続けたこの曲。
僅かながらも勇気ややすらぎを得た人々に支持されました。
ミリオン・セラーの大ヒット曲になった背景
オリコン・シングル・チャート、10週連続1位を記録する大ヒットでミリオン・セラーになります。
70年安保闘争が敗北に終わり、全国で火がついていた学園闘争にも影が見え始めた季節のこと。
青春の挫折をひしひしと感じざるをえない日々にこの歌がリリースされます。
また高度成長期とはいえ、その成長から取り残されたり、ふるい落とされたりした人々もいたはずです。
リリース直後から立ちどころに火がついてのミリオン・セラー。
時代背景に非常にマッチした歌でした。