浮遊感に身体を任せて…心地よいシティポップの世界へ
都会の喧騒と寂しさ、愛しさを携えて生まれた名曲【CLIMAX NIGHT】
本日ご紹介するのは『Yogee New Waves』の楽曲【CLIMAX NIGHT】。
まさに彼らの代名詞とも言えるような名曲です。
SUMMER SONICやFUJI ROCK FESTIVAL。
この楽曲を携え、僅か結成1~2年でこれらの日本屈指のビッグフェスへの出演を成し遂げた彼ら。
多くの音楽業界人やリスナーを虜にした、この曲の魅力とは一体なんなのでしょうか?
歌詞の解説と共に、この曲の本質にも迫っていきたいと思います。
今当たり前にある大切な物は?
なんでも見える世界は、時として窮屈すぎる
目が見えなくとも 姿形色が分かる
ようなことを探し求め
コーラを飲み泣きじゃくった日々よ
出典: CLIMAX NIGHT/作詞:角館健悟 作曲:角館健悟
角舘健悟(Yogee New Waves)|「みんなで肩組んで、盛り上がりを見せていかなくちゃ」|THE MAGAZINE
活動スタンスや有名無名にかかわらず、誰もがアーティストとして音楽をオフィシャルなデジタル配信ストアから全世界に流通させることができるこの時代。THE MAGAZINEは、ストリーミング時代の中でうまれる新たな情報やアイデア、インサイト、ナレッジを、ミュージシャン/音楽アーティストおよびそのファンへ発信し、国内シーンの活性化と海外へのチャレンジをサポートするメディアです。
視覚という、世界を認識するうえで非常に大きな要素を奪われている2人。
じゃあそんな2人が世界を認識できないのかと問われると、それは大きな間違いです。
人間に備わっている感覚は大きく5つ。
視覚がないのであれば、残る4つの感覚を他の人より使って世界を認識すればいいだけなのです。
むしろ彼らは、視覚に頼りっぱなしの我々には見えないものを見る事ができるのではないでしょうか。
ボーカル角館は、そんな我々には見えない世界で相手と向き合いお互いを愛する2人に感動したのでしょう。
目が見えなくても、大きな海や雄大な自然を感じることはできるのです。
風の音やさざ波の打ち寄せる音、ひやりと冷たい水の温度、そして澄んだ木々の香りや潮の匂い。
自分達の佇む、巨大な街を感じる事もできます。
周囲を取り巻く人々の熱気、足音、話し声。車の走り去る音や町中の喧騒。アスファルトの冷たい質感。
愛する相手の表情や、気持ちを感じる事ももちろんできるのです。
指先から伝わる相手の熱、目や鼻、口元の表情。優しい声で笑っているのか、眉を寄せ不安げなのか。
相手の顔が見えないからこそ見えているであろう、彼らの目の前に広がる世界。
それは相手の顔が見えてしまう我々には、逆立ちしても見る事のできない世界です。
感動すると同時に、見えるものに踊らされない彼らの持つ世界を、少し羨ましいと思ったのでしょう。
相手の容姿や見える世界に翻弄され、本当に見たいものは何一つ見えない。
そんなもどかしい思いをしたことが、きっと何度もあるのです。
ないものねだりを繰り返して
もう終わりなの まだ踊ってたいのに
君の中で刻むメロディー
肩抱き合い笑いあった日々よ
出典: CLIMAX NIGHT/作詞:角館健悟 作曲:角館健悟
人間は、いつだって欲張りです。
自分にないものばかり欲しがる癖が治ることはきっとありません。
世界が見えてしまうから、見えない世界が欲しいと思ったり。
楽しい時間に終わりが来ることを寂しがってみたり。
けれど楽しい時間を過ごす間は、この時間がいつか終わるなんてことには気付きもしません。
その時間が楽しい日々であったことにすら気付かないことも往々にしてあることでしょう。
楽しい時間が終わりに差しかかったり、楽しい時間が過ぎて辛く苦しい時間がやってきたときに。
初めて楽しかった日々のことを自覚するのです。
当たり前のように仲間たちがいて、当たり前のように楽しく歌って踊って過ごしていた。
なんなら少し退屈だとすら思っていた毎日。
自分にとって普通だった日常が、どれだけ幸せに満ちた日々であったか。
今だけは、辛く悲しいことは忘れて
幸せな記憶が、生きる糧となるように
ああ 酷い夜のこと忘れてくれないか
もう一度だけキスしてくれないか
そんな夜さ
出典: CLIMAX NIGHT/作詞:角館健悟 作曲:角館健悟
いつだって人はないものねだりで、大切なものがいつしか当たり前のものになってしまう。
それに気づいてしまうと、やはり厭世的な気持ちになってしまいます。
いつだって私たちは失ってから大事なものに気づく。
自分の手元には、喪失感しか残らないんじゃないか。
後悔ばかりして生きてきた、きっとこれからもそう。
そんな風に考えて、落ち込んでしまう夜もあるかと思います。
けれど、そう気づいてしまったからこそできることがありますよね。
幸せな瞬間を、思い切り幸せだと感じること。
その瞬間だけは、辛いことも悲しい事も全て忘れて今という瞬間を胸の奥に焼き付けるのです。
これからまた辛いことがあった時、その幸せな瞬間を糧に生きていけるように。
そうするだけで、今までより少しだけきっと毎日を生きやすくなることでしょう。
好きだった人に振られてしまった夜。
悔しくて悔しくて、涙に濡れた夜。
プライドがボロボロになり、辛く苦しかった夜。
そんな夜も、今心を寄せる人がもう一度キスしてくれるだけで。
一度目にくれたキスが嘘ではなかったと信じられるのです。
彼女と最後に結ばれることはなかったとしても、いつしか誰かの隣で幸せになってしまったとしても。
その時は確かに本物だったその思いだけで、きっとこれからも生きていけるのです。