夜空に響くギター

川崎鷹也の【大切な人】は彼らしい身近な人へ向けてのメッセージソング。

こちらは1stアルバムI believe in youの8曲目に収録されています。

落ち着きあるアコースティックギターのサウンドに乗せて、まるで語りかけるようにして歌います。

そこに映るのはドラマではなく平穏な景色ともいえるのかもしれません。

ですが歌詞に目を向ければ何やら詩的な世界が広がっているようです。

その歌詞の世界をこれから紐解いていきたいと思います。

月が綺麗な夜のお話

もしもヶ丘ステージ

こんな月が綺麗な夜は もしもの話をしようか
白い星が降るこの空に 手を重ねて眠るように

出典: 大切な人/作詞・作曲:川崎鷹也

さて冒頭。

月が綺麗な夜ってロマンティックですよね。

また、そんな月を見つめているとまるで異世界へと繋がっているような感覚を抱く人も多いのではないでしょうか?

その特有の恍惚感からかつて狼男やかぐや姫など月に纏わる多くの逸話が生まれました。

ですがその感覚はある種禁じられた欲望にも近しいもので、通常は個人的な感覚の枠を越えるものではありません。

増してやその感覚をほかの人と共有するなど余計にはばかられるといえます。

ですが敢えてそれを共有し、寓話へと続く扉を一緒に開いてみようと持ちかけるのです。

しかしこの「白い星」とは何を意味するのでしょうね?

星といえば獅子座のレグルスのような青い星もあればオリオン座のベテルギウスのように赤い星など様々です。

ひとつの説としては、星が「降る」とすることで流星が走った場面を描いている可能性はあります。

願いを叶えるとされる流れ星に気持ちを乗せ、手を繋いで心を通じ合わせ祈りながら眠りに就こうと促す。

あるいは星々を俯瞰で見た時に、その連なりが白い砂浜のようにキラキラしてるね、という描写でしょうか?

無数の星々が瞬く夜空に包まれながら眠るような安堵感で語り合えたら素敵だね、と。

そして気になるのが「もしもの話」がどういった内容で語られたか、そしてその意図や動機となったものは何かです。

ですがこれについては全体像がまだ見えてきませんので後ほど語るとしましょう。

明日に怯える

ねえ、僕らは何を探してるの?
見えない何かに臆病に震えながら

出典: 大切な人/作詞・作曲:川崎鷹也

ここに来て戸惑いや不安などの心情が語られ始めます。

あまりに唐突なようにも思えますが、それまでの話が現実逃避の最中だったとしたらどうでしょうか?

ひとしきりもしも話に花を咲かせた後に、ふとこう思ったのでしょう。

本当の僕らは何ひとつ確かなものがなく、行く先はおろか何を探しているのかすら定かでないと。

自分たちの行く先が不透明なうちは、目の前で起こる出来事に翻弄され続けることになります。

彼らは見えない明日に戸惑い怯えているのが現状だと考えられます。

傍にいる君が

あなただけはどこにも行かないで
ずっとずっと僕の隣に
あなただけは僕から離れないで
その笑顔その声で僕の手をずっと 握っていて

出典: 大切な人/作詞・作曲:川崎鷹也

さて、彼らの先行きに対する不安は現状まだ解消していないように思われます。

そんな中で確かなものといったら、今「あなた」が隣にいることだと気付いたのでしょう。

ですからせめて「あなた」だけは離れずに、これからも傍にいて欲しいという想いが湧いてきたのだと思います。

冒頭で重ねた手の温もりを感じながら。

という、ある月が綺麗な夜のお話でした。

海が綺麗な夜…

もしもヶ浜メディテーション

こんな海が綺麗な夜は もしもの話をしようか
白い星が降るこの空に 手を重ねて祈るように

出典: 大切な人/作詞・作曲:川崎鷹也