「オトナ」ってどんな曲?
楽曲の概要紹介
Creepy Nutsの醍醐味の1つは、社会不適合者目線で描く自己肯定感が随所に感じられるリリックです。
この「オトナ」でも、もちろんその世界観は健在。
計算しつくされた心地よい韻を絡めた歌詞が、少し前向きな気持ちにさせてくれるのではないでしょうか。
冒頭と最後には印象的な歌詞がリピートされ、何度でも口ずさみたくなるようなメロディーラインも魅力。
毎日思い悩みながらも、自分の内面にある気持ちや周りの人の存在に気付く姿が描かれています。
大人への第一歩を踏みだす心模様を丁寧に描写・表現しているのです。
ドラマ「コタキ兄弟と四苦八苦」とリンクするテーマ
2020年1月にテレビ東京で放映された「コタキ兄弟と四苦八苦」のために書き下ろされた「オトナ」。
ドラマのテーマでもある「四苦八苦」を主軸として、本楽曲の歌詞は制作されました。
真面目すぎる「兄」とチャランポランな「弟」、この中年男性2人を主人公とした軽快なヒューマンドラマです。
彼らのように日々生きにくさを感じている人は少なくないのではないでしょうか。
「オトナ」はそのような人々に向け、Creepy Nutsが生み出したユニークな人間賛歌ともいえます。
具体的に歌詞の内容を追いながら、心から望む生き方とは何なのかについて考察していきましょう。
大人になりきれない苦しさ
なぜか生きづらい
tell me why?
欲張っちゃいないのに
tell me why?
何故に不自由
tell me why?
貪っちゃいないのに
tell me why?
何故に不充分
brother& sister 俺達はただ
普通に息を吸って吐くだけが何故難しいんでしょうか?
tell me why?
出典: Creepy Nuts作詞:R-指定 作曲:DJ松永
これといった原因や理由はないけれど、日々漠然と生きにくいと感じたことはありませんか?
年齢的には「大人」であっても、延々と続く毎日になぜか不自由さを覚えている。
そんな大人になりきれない主人公の気持ちがストレートに表現されています。
「理由を教えて」と誰かに問いかけても、納得できるような明確な答えは見つからないもどかしさ。
無論、身の丈以上のことは期待していません。
しかしいざ学校や会社などで周りを見渡してみると違います。
今の自分の立ち位置に満足できない主人公のやるせない思いがあふれているのです。
他の人が普通にできていることが自分にはできていないと感じたとき、そこはかとなく胸が苦しくなる現実。
ただ呼吸をすることさえも難しく思えてしまう主人公がここにいました。
自分への諦めと気づきが、大人への扉を開ける
破れかぶれでしがみつくALL DAY ALL night
…ってそんな呆れた顔して
憐れまないでよ泣きたくなりました
そんな足手まといなら
いっその事切り捨ててくれますか?
そんな真面目な顔してマトモじゃないのはお互い様ですやん
もう、“なるようになる”では済まされない
また大人になりました
出典: Creepy Nuts作詞:R-指定 作曲:DJ松永
昼夜問わず、がむしゃらに何とか生きている主人公。
その様子を見た相手は叱咤激励するわけでもなく、「どうしようもない」といわんばかりのあきれ顔です。
その上哀れみのまなざしを向けてきます。
周りからも諦められている自分、皆の足を引っ張っている自分。
そんな情けない自分を知れば知るほど、主人公の心中は悲しみでいっぱいになってしまうのです。
そして人生を放棄してしまいたいとも思い始めます。
しかし上記歌詞の最後の段落で、将来につながるポジティブな考えに到達しました。
それは、「マトモ」じゃないのは自分だけではないこと。
そして誰もが大なり小なり何らかの不都合・欠陥を抱えているかもしれないということです。
また、「なるようになる」という運や流れに任せる生き方はもう許されない、ということにも気づきます。
できることから始めることで現状を打破し、心身ともに本物の大人に近づけるのではないか。
そんな考えにたどりついたのかもしれません。
「マトモ」でない自分と向き合う毎日
朝が迎えに来た
外じゃカラスが鳴いてた
空のペットボトルの山
いっこうに片付かない部屋
…ココで何を探してた
コレがいい年こいた俺の姿
悲しまないでパパ、ママ
積み上がった洗濯物
何日も開けていないポスト
大量に溜まった要らないチラシと大事な督促状
リュックの底からいつかのフライヤー
いつ使ったかも分からんペンが
いつ買ったか忘れた漫画
見つかったのに嬉しくないな何か…
出典: Creepy Nuts作詞:R-指定 作曲:DJ松永
いかに主人公がマトモでないかを具体的に表現しているのが上記の歌詞です。
夜通し遊びに明け暮れ、気づいたら朝になっていたこと。
部屋の中にはペットボトルなど生活ゴミが放置され、洗濯物も無造作に置かれたままであること。
ポストは何日も確認せず、いつのまにか中は雑多な郵便物でいっぱいです。
届いている重要な督促状も見逃して過ごすような、場当たり的な毎日を主人公は過ごしています。
両親のことを考えると「いい歳してこんな状態で申し訳ない」と思ってはいるようです。
しかし、適当に過ごす毎日がそれなりに心地良いとも思ってしまっているのも事実。
日々嬉しいと感じるほどのことは特段ありません。
そんな中で「これでよしとしよう」と無理矢理にでも自分を納得させようとする姿が描写されています。