映画『高崎グラフィティ。』主題歌

【スカート/遠い春】MV徹底解説!映画「高崎グラフィティ。」の瑞々しい世界を反映した書き下ろし曲!の画像

『遠い春』はスカートのメジャー1stシングル

映画『高崎グラフィティ。』の主題歌として書き下ろされました。

青春の瑞々しさを表現したMVは、観ていて涙が出そうになります。

子供でも大人でもなかったあの頃。

繊細で壊れやすい心を持て余して、ときどき訳もなく悲しくなったりしませんでしたか?

誰かを傷付けたこと。誰かに傷付けられたこと。

そんな綺麗とは呼べない思い出もあるでしょう。

青春時代の痛みが蘇り、人によっては感傷的な気分になってしまうかも。

それでも途中で観るのを止められないのは、このMV青春の煌きを感じるから。

未熟だった自分を懐かしみつつ、『遠い春』の世界に浸ってみませんか?

爽やかで残酷な青春の姿

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映画『高崎グラフィティ。』は、高校を卒業した幼馴染5人組が織りなす青春ストーリー。

2018年の夏に公開され、ノベライズにもなりました。

大学の入学金を持って失踪した父親を探す吉川美紀。

彼女を中心に幼馴染たちが集結し、物語が動き始めます。

5人の若者たちがそれぞれに抱えている苦悩や葛藤。

現実という厳しい壁にぶつかりながら、彼女たちは自分の人生について考えます。

悩んで、傷付いて、そうしてみんな大人になっていく。

爽やかで、残酷。

それが青春の姿なのだと気付かされる映画です。

駆け抜けていった青春

『遠い春』はMVも映画の内容に合わせて制作されました。

登場するのは2人の女子高生。

彼女たちはきっと唯一無二の親友同士だったのでしょう。

しかし、新しい季節と共に別れが訪れ、彼女たちは離れ離れになってしまいました。

短い青春の中で幾度となく繰り返される出会いと別れ。

彼女たちの別れも駆け抜けていった青春の欠片でしかありません。

けれど、そこには語りきれないほどの想いがあったはずです。

若い彼女たちの心に溢れていた瑞々しい感情。

それが音楽でも映像でも表現されています。

優しさよりも憂鬱

淡々としていながら、同時に情動的なこの曲。

大きな事件や出来事がなかったとしても、青春の日々はいつでもドラマチックです。

変わっていく周囲と自分。

その変化に戸惑いながら、若者たちはもがくように1日1日を生きています。

季節も心情も目まぐるしい速さで移り行き、時には置いていかれてしまうこともあるでしょう。

そんなときの焦燥感や孤独。

静かなメロディーの中には、そういった情緒があります。

この曲の穏やかさには、優しさよりも憂鬱の方が色濃く表れているように感じませんか?

わびしさを含んだ歌声に、青春の苦い思い出が蘇っているのかもしれませんね。

若者たちの心を潤すもの

このMVには”水”に関係するシーンがよく出てきます。

水の入ったコップや海辺。

水面に光が反射して、キラキラと輝いている様子が青春の煌きを表しているように感じます。

若者たちの心を潤しているもの。

それは友情や恋。そして、別れの涙なのかもしれません。

与えることと失うこと

MVの冒頭でスカートの澤部渡さんが水の入ったコップを地面に落としています。

このとき、コップは1つだけ。

しかし、1番が終了したとき、コップは2つになっています。

地面に叩きつけられて粉々に割れてしまったはずのコップ。

中に入っていた水も当然こぼれてしまいました。

それがMVの中盤では、水の入ったコップと桜の花が入ったコップの2つに増えています。

澤部さんはまた水が入っている方のコップを持ち、今度は落とすことなくもう片方のコップに注ぎました。

桜の花が水に沈むのに従って、もともと水が入っていた方のコップは空になっていく。

誰かに何かを与えるということは、自分が何かを失うということなのでしょうか?

それでも構わないと思い、桜の花に水をあげたのかもしれませんね。

2人が1人に変わる

水の入ったコップが地面に落とされる瞬間、場面は2人の女子高生が海辺に寝転がっているシーンに変わります。

波打ち際で仰向けになる少女たち。

空に桜の花が舞っているのを見て、2人は微笑み合います。

爽やかで美しい青春のワンシーン。

寝ころびながら手を繋いでいる様子が映されたあと、場面はまた変わり、粉々に砕け散るコップが映ります。

これは2人が離れ離れになる予兆のシーンだったのでしょう。

MVの終盤では、少女が1人で海辺に寝転がります。

少女は視線を横に向けますが、そこに親友の姿はなく、代わりに桜の花が落ちていました。

海水に浸る桜の花を見て、少女は痛切な表情を浮かべます。

きっと、親友と2人で桜の花びらが舞う空を見上げていたときのことを思い出しているのでしょう。

美しく咲き誇り、儚く散っていく