少女たちの出会いと別れ。

どちらのときも季節は桜の花が満開になる季節でした。

美しく咲き誇り、そして儚く散っていく桜。

それは少女たちの関係とよく似ています。

親友のもとへ走り出した

MVの終盤で海辺にいなかった方の少女が桜の花を屋上から地面に落とします。

このときの少女の横顔は、どこか寂しげで物思いに沈んでいる様子です。

少女が誰のことを想っているのか。

言うまでもなく、それは別れてしまった親友のことです。

スローモーションで落ちていく桜の花。

少女はそれをじっと眺めていました。

それから急にハッとしたような表情を浮かべ、少女はその場から走り去っていきます。

きっと親友に会いにいったのでしょう。

2人はろくに言葉も交わせないまま、別れてしまったのかもしれません。

まだ間に合うだろうか?

そんな少女の心情がうかがえます。

桜の花に想いを託す

桜吹雪の中を歩いているのは、屋上にいた少女とは別の少女。

この少女もまた、舞い散る花びらを見て急にその場から走り出します。

離れていても2人の少女は、似たような景色を見て同じ気持ちを抱いたようです。

桜の花びらが雪のように舞う道を駆け抜けていく少女たち。

しかし、2人が再会することはありませんでした。

そして、場面は先ほど解説した海辺で少女が桜の花を見つけるシーンに変わります。

きっとこの桜の花は屋上から落とされたもの。

少女はそれが親友からの贈り物であると気付いたでしょうか?

たとえ気付かなかったとしても、少女たちの心は桜の花が結び付けてくれたと信じたいですね。

苦い青春の思い出

少女たちは、結局言葉を交わせないまま別れてしまいました。

もしかしたら喧嘩別れだったのかもしれません。

残されたのは後悔と未練だけ。

苦い青春の思い出ですね。

少女の視線の先には...

MVの最後は、トラックの荷台で少女が膝を抱えているシーンで終わります。

きっとこれから遠い場所に引っ越してしまうのでしょう。

少女の瞳は空虚で、どこか遠くを見つめています。

しかし、少女の視線の先には親友の姿が……。

辺りが暗すぎて少女は親友の姿を認識できていないのでしょうか?

だとしたら、なんだか切なくてやりきれないですね。

トラックは少女を乗せて、夜道を走り去っていきました。

傷を残したまま春がくる

少女たちが別れたあと、季節は暖かな春を迎えるでしょう。

新しい季節はもうすぐ側まできている。

しかし、少女たちの心の痛みが消えるのはもっと先になりそうです。

春がきても、別れの寂しさは埋められない。

だからタイトルを『遠い春』にしたのだと思います。

青春は若者たちの心に温もりと痛みを残していきました。

最後に

【スカート/遠い春】MV徹底解説!映画「高崎グラフィティ。」の瑞々しい世界を反映した書き下ろし曲!の画像

春の始まりは穏やかで、だけどまだ少し冬の寂しさを引きずっています。

『遠い春』の世界は、きっと冬でも春でもない曖昧な季節。

それはまるで、子供でも大人でもない若者の姿のようですね。

不安定で危なっかしい。

そんな青春の日々が詰め込まれたMVでした。

スカートの美しい憂鬱

スカートはこの『遠い春』の前にメジャーデビューアルバムをリリースしています。

『遠い春』のような美しい憂鬱を感じられる曲が好きな人は、ぜひこちらのアルバムも聴いてみてください。

澤部渡の話題のソロプロジェクト「スカート」のメジャーデビューアルバム「20/20」に収録されている「視界良好」。美しい歌声が響き渡る曲なのですが、MVや歌詞には独特の素晴らしい世界観が表現されてるんです。さっそくMVや歌詞を解説していきます。