登場するシーンを整理

まずは「東京」に登場する場所を挙げてみましょう。

大都市などの人工物と高原などの自然といった対極的なものが映し出されています。

街を歩く人々と自然の動物と生きる人々、高原で暮らす動物と目を光らせる鷹と蛇も対極的です。

この対極的な表現が取り入れられていることで、混沌とした世界が感じられます。

そこから何を訴えかけようとしているのかを探ってみましょう。

様々なシーンをミックスした理由

この「東京」やGEZAN、の理念が目指す先は『自分だけがこうなりたい』ではありません。

「社会がこうなればいい」という理想です。

その理想の世界とは一体どんな世界のか、それを読み解くカギが他の楽曲に隠れています。

「赤曜日」の次のフレーズをみてみましょう。

GEZANを殺せ

出典: 赤曜日/作詞:GEZAN 作曲:GEZAN

続いて「I」のこのフレーズにも注目してみましょう。

恥ずかしいこの歌がいつか歌えなくなるようなぼくらになったらお願いだよ 殺して

出典: I/作詞:GEZAN 作曲:GEZAN

どちらもGEZANの死をもってしてこの革命が完了するということが示唆されています。

GEZANが目指すのは「東京」がユートピアに辿り着き、自らは役割を全うして死すことと解釈できるでしょう。

GEZANの描く理想は、革命者がいなくても理想的な状態にある世界です。

つまり革命者である自身の存在が不要な世界だと考えられるでしょう。

GEZANが東京という街の代名詞として映像に登場すると、それは彼の思い描くユートピアでなくなります。

GEZANが思う自然のままの世界と東京の現状を混ぜて映し出すことで現状と理想の対比をしているのです。

これらから「東京」のMVに様々なシーンをミックスさせた理由もみえてきます。

つまり現状の東京とユートピア的東京の対比を視覚的に表現するために様々なシーンを混ぜたのです。

弾ける風船に託した想い

何を意味しているのか?

風船ではない他のシーンを考えてみましょう。

赤く光るオーナメントをマヒトが摘み映し出すショットや、血球が血走っているかのようなシーンが登場します。

また「赤」はマヒトを象徴するカラーでもあり、マヒト自身のアイデンティティや世界観としてみることができるでしょう。

この時、GEZANで実現したい「世界観」を拡大して考えてみます。

赤い風船が象徴するのは、ある種マヒト自身の「衡(くびき)」を意味するのでしょう。

「衡」という風船が弾け飛んだ時、解放される何か

赤い風船が個々人を自身の世界観内に止めている「衡」だと解説しました。

ではそれが弾け消滅した時に、どんなことが起こりうるでしょうか。

「東京」のMVで赤い風船が弾けた後のシーンは、血球が血走るシーンです

まるで、閉じ込められていた個が溢れ出し、次々に浴びる新たな刺激に高揚しているようにも感じられます。

赤い風船を弾けさせたのは自身を抑制するリミッターを破壊したことを意味しているのでしょう。

そして新たな世界に身をおこうという前進的な想いを感じ取ることができます。

その新たな世界こそ「狂(KLUE)」にみる革命後の世界なのです。

最後に

GEZAN【東京】MVを解説!いろいろな映像をミックスさせる理由とは?弾ける風船に託した想いに迫るの画像

アルバム「狂(KLUE)」では「東京」の次は「Playground」が、そして最終収録曲「I」へと辿り着きます。

このことからも、革命を経てユートピアへ逢着するという流れをみてとることができるでしょう。

「狂(KLUE)」は「東京」だけでなく全体を通して聴くことで、より世界観に浸ることができるアルバムです。

「東京」というタイトルの楽曲は数多くあり、銀杏BOYZにも同名タイトルの楽曲があります。

同じタイトルながら、切り口が全く違う楽曲に仕上がっています。

こちらの記事で歌詞を解説しているので、ぜひご覧ください。

【銀杏BOYZ】といえばカッコイイの代名詞。熱狂的なファンも多く人気曲も数えきれません。邦ロックというより銀杏BOYZという音楽ジャンルを確立させたかのような歌詞とメロディには誰もが酔いしれます。その中でも今回紹介するのは【東京】。そんな彼らがこの曲に込めた想いを歌詞から読み取っていきたいと思います!