「Run the World」と世界の現状

ビヨンセ【Run the World】歌詞を和訳して解釈!地球を回してるのは誰?ビヨンセが先導する!の画像

2011年4月21日にデジタル・リリースされたビヨンセのシングルRun the World」。

この歌は職場での女性の地位向上のために書かれた歌詞が鮮烈です。

一方でブラック・ミュージックのあらゆる要素をミクスチャーしたサウンドも斬新でしょう。

ビヨンセの通算4作目のアルバム「4」のリード・シングルとして発表されて話題を呼びます。

アッパーなテンポでガール・パワーを高らかに歌い上げる歌詞が女性たちの励ましになるでしょう。

これまでドラマに昇華して女性の権利を訴えてきたビヨンセですがこの曲は毛色が違います。

もっと直截的な表現で女性の地位向上のために歌い上げるのです。

ジョン・レノンがオノ・ヨーコとともに「パワー・トゥ・ザ・ピープル」を歌った姿を思い出します。

ガール・パワーの先頭に立って闘う女性になったビヨンセ。

彼女の人生哲学とは何でしょうか。

「Run the World」の歌詞和訳して深い解釈を展開します。

よりよく生きていける社会にするために私たちに何ができるでしょうか。

実際の歌詞をご覧いただきましょう。

ガールズこそ世界の主役

ビヨンセ【Run the World】歌詞を和訳して解釈!地球を回してるのは誰?ビヨンセが先導する!の画像

Girls, we run this mutha (Yeah!)
Girls, we run this mutha (Yeah!)
Girls, we run this mutha (Yeah!)
Girls, we run this mutha girls

出典: Run the World/作詞:Adidja Palmer Beyonce Gisselle Knowles David James Andrew Taylor Nick Van De Wall Terius Nash Thomas Wesley Pentz 作曲Adidja Palmer Beyonce Gisselle Knowles David James Andrew Taylor Nick Van De Wall Terius Nash Thomas Wesley Pentz

「ガールズ、私たちがこの世界を揺り動かしているのよ (イエー!)

ガールズ、この世界を回転させているのは私たちなの (イエー!)

ガールズ、私たちがこの世界を揺り動かしているのよ (イエー!)

ガールズ、この世界を回転させているのは私たちなの ガールズ」

まだまだイントロダクションです。

このラインにこの歌「Run the World」の哲学がすべて詰まっています。

私たちは普段、自分が世界を動かしているだなんて思いもしません。

世界を動かしているのは世界の要人、為政者、特別な資本家だけだと思い込んでいます。

職場や学園などの狭いコミュニティーであってもその社会を回しているのは自分と思う人は少数です。

よほどの自信家でない限りこうした思いは中々獲ることができません。

しかしビヨンセは世界を回しているのはガールズである私たちだと宣言します。

とても力強い思想に裏付けられたメッセージです。

とはいえ実際にガール・パワーが世界を牛耳っていたならば敢えてこうした宣言をする必要なないでしょう。

ビヨンセは理想とはかけ離れた現実にピリオドを打つために「Run the World」を歌います。

掲げられたのは現実ではなくあくまでも理想なのです。

しかし現実離れした理想ではないことをこれからのスペースを使って彼女は説明しようとします。

それでは先を見ていきましょう。

世界は変わります

黒人の公民権運動との関係

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Who run the world? Girls!
Who run the world? Girls!
Who run the world? Girls!
Who run the world? Girls!
Who run this mutha? Girls!
Who run this mutha? Girls!
Who run this mutha? Girls!
Who run this mutha? Girls!

出典: Run the World/作詞:Adidja Palmer Beyonce Gisselle Knowles David James Andrew Taylor Nick Van De Wall Terius Nash Thomas Wesley Pentz 作曲Adidja Palmer Beyonce Gisselle Knowles David James Andrew Taylor Nick Van De Wall Terius Nash Thomas Wesley Pentz

「世界を揺り動かしているのは誰だと思う? ガールズよ!

世界を回転させているのはどんな人たち? ガールズよ!

この世界を揺り動かしているのは誰だと思う? ガールズよ!

この世界を回転させているのはどんな人たち? ガールズよ!」

歌い出しの前のコーラス部分です。

リフレインが多いので簡略な訳を添えました。

イントロダクションとは語順こそ違いますが内容はまったく同じです。

ビヨンセ以前の黒人女性シンガーたちはまず黒人差別と闘っていました

例えば伝説的なジャズ・ブルース・シンガーのビリー・ホリデイ

彼女は「奇妙な果実」という曲で虐げられる黒人の姿を切々と悲しい歌で表現しました。

女性である悦びを歌うこともありましたが、恋愛の主導権などは男性が握っている歌です。

彼女は偉大過ぎる女性シンガーでありましたが、まだ女性の地位向上というテーマは歌いません。

なぜビヨンセは女性の地位向上のためのメッセージを歌えるようになったのでしょうか。

おそらく黒人の公民権運動が盛んになって一定の市民権を獲得できたことと無関係ではないです。

アメリカ合衆国では今なお深刻な黒人差別が残っています。

罪のない黒人が警察官によって射殺される事件などが市民の憤りを呼び起こしました。

しかし黒人であってもある程度は社会進出が成し遂げられます。

2008年にはバラク・オバマが黒人初のアメリカ合衆国大統領に就任しました。

旧い価値観やシステムとの闘い

ビヨンセ【Run the World】歌詞を和訳して解釈!地球を回してるのは誰?ビヨンセが先導する!の画像

偉大なる黒人シンガーたちが担ってきたブラック・パワーは社会を前進させました。

その一方で取り残された問題が女性の地位向上というテーマです。

ビリー・ホリデイの時代、多くの黒人女性はまだ家庭の中で働いていました。

しかし21世紀にもなると黒人女性は職場へと進出します。

資本主義は働き手を常に求める社会なので、黒人女性が社会進出するのも時間の問題でした。

しかし白人女性の地位向上でさえ男性社会の中では難しい要件があります。

そのうえで黒人女性が社会の中で活躍するのはもっと大変なハードルが今なおあるのです。

ビヨンセはこのトピックがホットである時代のアーティストでしょう。

彼女は自身の作家性のようなものに女性の地位向上のためのメッセンジャーであることを選択しました。

彼女は生んだ多くの作品にこの傾向が貫徹されています。

すべての女性を代表してビヨンセは旧い価値観やシステムと闘おうと試みるのです。

これまでの楽曲でも女性の地位向上のために歌ってきました。

ただし「Run the World」ほどこのテーマを直截に表現した曲は彼女の歴史の中でも珍しいです。

ビヨンセは誤解のしようのない表現で世界はガールズが回していると宣言します。

こうした政治的なメッセージを含む歌であってもポップソングとしてのクオリティを落とさないのが最高です。

間髪入れずにメッセージを繰り出すビヨンセ。

HIP HOPとエレクトロニクスとブラック・コンテンポラリーすべてをミクスチャーした楽曲

なるほど女性が回転させる世界ではこのようにしなやかでカッコいい曲が生まれるのかと驚きます。

狂熱するビートに乗って

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Some of them men think they freak this
Like we do, but no they don't
Make your check, come at they neck
Disrespect us, no they won't
Boy, don't even try to touch this
Boy, this beat is crazy
This is how they made me
Houston, Texas, baby

出典: Run the World/作詞:Adidja Palmer Beyonce Gisselle Knowles David James Andrew Taylor Nick Van De Wall Terius Nash Thomas Wesley Pentz 作曲Adidja Palmer Beyonce Gisselle Knowles David James Andrew Taylor Nick Van De Wall Terius Nash Thomas Wesley Pentz

「自分たちが熱狂していると思い込んでいる男たちも中にはいるわ

私たちガールズがそうするみたいにね でも男じゃダメのなのよ

あなたのお金を彼らの首元で見せびらかしなさい

私たちを見下す真似なんて男にはできないわ」

女性の社会進出が始まり、働き手として賃金を得るようになりました。

これまではパートナーの収入から家計をやり繰りしていた女性ですが立場が変わります。

経済的な地位の向上はそのまま男女の関係性をダイレクトに揺り動かすでしょう。

自立した女性たちが社会の中で増えていることをビヨンセは歌っています。

男性が女性をバカにできたのは「オレが稼いだ金がないと生活できないだろ」という思い込みが原因です。

しかし今や女性も自身でお金を稼いでいるのですから男女の立場は対等であるべきでしょう。

それでも男性は自分の地位にあぐらをかいていて、この変化に対応できません。

そんな鈍感な男たちを嘲笑うようにビヨンセはメッセージを届けます。

もう見下されるのはご免だし、私たちガールズはもっと胸を張りましょう。

実際、ビヨンセは並の成人男性の生涯年収に値するような金銭を一晩で稼ぐことすら可能です。

誰にも見下されることがないどころか、世界中から尊敬を集める超VIPスター。

彼女に敵う男性などどこにもいないと思わされます。

すべてのガールズに捧げる