昭和の名曲「北の宿から」
時代を超えた名曲
今回紹介するのは演歌歌手・都はるみさんの大ヒット曲、「北の宿から」です。
1975年に発売されたこの曲。
作詞は、かの大作詞家、阿久悠さん。
そして作曲は「寺内貫太郎一家」のお父さん役で有名な小林亜星さん。
なんと140万枚を売り上げ、都はるみさんとしては3枚目のミリオンセラーとなりました。
1976年の紅白歌合戦では、紅組のトリを務め、この歌を歌唱しました。
同時に、レコード大賞と日本有線大賞の大賞をそれぞれ受賞しています。
レコード大賞と有線大賞の同時受賞は史上初の快挙だそうです。
今でもその旋律は多くの人に親しまれています。
歌詞を徹底分析!
会えない貴方への想い…
あなた変わりはないですか
日ごと寒さがつのります
出典: 北の宿から/作詞:阿久悠 作曲:小林亜星
まずタイトルの「北の宿から」。
このタイトルから、歌の舞台は東北地方であるとわかります。
主人公は一人の女性。そして「あなた」という存在。
「あなた」は女性の恋人でしょう。
歌詞の1行目からは、「あなた」と長い間会っていないことがうかがえます。
東北地方。そして会えなくなった「あなた」。
この要素から「あなた」はどこか遠くへ行ってしまったことがわかります。
時代状況から考えれば「あなた」は上京した、と考えるのが一般的でしょう。
東北本線に乗って、東京へ向かう「あなた」。
二人は恋仲だったものの「あなた」の上京で離れ離れになってしまった。
「あなた」の健康も心配ですし、自分のことをどれだけ想ってくれているか、とも考える。
冒頭ですが、女性の胸中がよくうかがえる部分です。
類似している曲として太田裕美の「木綿のハンカチーフ」があります。
恋人よ 僕は旅立つ
東へと向かう列車で
華やいだ街で 君への贈りもの
探す 探すつもりだ
出典: 木綿のハンカチーフ/作詞:松本隆 作曲:筒美京平
引用した部分は男性視点で書かれていますが、この後に女性視点の歌詞も登場します。
西の国から東京へ向かう男性。
東京の地で成長した姿を見てほしい男性。
恋人には変わらない姿でいてほしい女性。
そんなすれ違いが巧みに表現されています。
「上京」というキーワードは昭和歌謡を語る上では不可欠なものになっているのです。
「渡せないセーター」の意味
着てはもらえぬセーターを
寒さこらえて編んでます
出典: 北の宿から/作詞:阿久悠 作曲:小林亜星
ここでは会えない「あなた」に対してセーターを編んでいる女性が描かれています。
もう女性は「あなた」に二度と会うことができないのでしょうか。
着てもらえない、と断言していることから、今生の別れであることがうかがえます。
しかし、どうしても「あなた」に会いたいという気持ちを捨てることができない。
そんな女性は「あなた」を想いながらセーターを編むのです。
今、編んでいるセーターを着ている「あなた」を夢想する。
セーターを編むことで、いつか「あなた」に会えるのではないかという希望を捏造する。
セーターは女性が抱える「あなた」への未練を象徴しています。
しかし、作詞をした阿久悠さんとしては違った意味でこのセーターを使っているそうです。
その真意はすべての歌詞を読んだ上でご紹介します。