取り残された
俺はだせえよ 例えば
周りの成功に興味がねえってツラして
日々殺された
毎日挫折
あいつが売れた ああそう
挙句 金も女も仲間も全部
うまくいかねぇ いつまで耐える
出典: あの頃じゃねえ/作詞:般若 作曲:CHIVA from BUZZER BEATS
何をやってもうまくいかない。
誰しも経験があるのではないでしょうか?
頑張っているのに結果に結びつかない。
誰にも褒められない。
そのような経験が積み重なることで「自己否定」に繋がってしまうことがあります。
自分には価値がないと思い込んでしまうのです。
物事が順調に進まないことや仲間が離れていくこと。
それらの原因を全て自分のせいだと思い込んでしまうのです。
星が見えないのは涙のため...
さんざんやられた
時間も奪われた
それなりに廃れた
ハッキリ言うよ 疲れた
誰もいないプラネタリウムの星を見て涙出た
まいっか
笑えりゃって笑えねえからこぶし掲げた
出典: あの頃じゃねえ/作詞:般若 作曲:CHIVA from BUZZER BEATS
「自己否定」を形成する原因の多くは幼少期の環境にあるといわれています。
般若の幼少期の生育環境は想像以上に過酷でした。
そのことは過去の多くの楽曲で語られています。
父親からの裏切り、そして赦しを歌った「家族 feat.KOHH」。
凄惨ないじめの経験をストレートに語った「素敵なTomorrow」。
おそらくヒップホップとの出会いがなければ彼の人生は180度違ったものになっていたことでしょう。
しかし彼を待ち受けていたのは周囲の成功と裏腹に取り残されていく更なる「自己否定」の日々でした。
いつしか1人になれる場所を探して嗚咽を鳴らします。
天井高く広がる美しい星空。
美しい景色も彼の傷ついた心を癒すことはできません。
募る苛立ち、矛先として成功者へ直接送ったDISソング
狭い世界 中指
くだらないことばかり ダサすぎ
中身が無い 噂話
それやりたいが為のラップじゃない
音楽で食ってるやつ何人いる
リアルな気がする 核心突く
逆に聞く 俺自身食えなくて
昔腐って投げた缶ビール
出典: あの頃じゃねえ/作詞:般若 作曲:CHIVA from BUZZER BEATS
般若がラッパーとしてのキャリアをスタートしたのは90年代。
当時ヒップホップで食べていけるのはZeebraなどごく限られた人達でした。
般若という名前のルーツは高校時代にDJ BAKU&RUMIと組んだクルー名。
当時YOSHIとして活動していた彼の焦燥を表す有名なエピソードといえばZeebraへの痛烈なDISでしょう。
その詳細は上の動画に記録されたラジオ番組に残されています。
しかし苛立ちは募るばかりです。
腹いせに缶ビールを投げ捨てたことも今は思い出。
酔えない酒はより一層その焦燥感を積もらせたのでしょう。
ルーツを学んだ仲間との別れ
ニューシューズもユーチューブも無い
19の自分 窮屈は嫌い
ルールも無いようなグルーブ
そこで学んだ感謝とルーツと愛
間違いない 一枚岩と思ったけど
悔しいな HIPHOPで割り切れないからこそ
この道を行くしかない
出典: あの頃じゃねえ/作詞:般若 作曲:CHIVA from BUZZER BEATS
伝説のイベント「さんぴんキャンプ」が開催された1年後のことです。
当時‟クルーとしての般若”は様々なイベントに出向き殴り込みをかけていました。
現在はソロMCとして活動するRUMIは般若のラップの師匠です。
そして豊富な知識を持つDJ BAKUは般若に様々なヒップホップ・クラシックを教えてくれました。
しかし般若同様に家庭に問題を抱えるRUMIがラップを続けられなくなりクルーは消滅。
お金がない。仲間もいない。
再び般若はどん底に落ちます。
自分の居場所は自分で切り開く!
想像してみ
学歴も無い奴が堂々としていい
そんなもん社会には通じない
黙りな
趣味でやりなたまには
って逆に言う くたばりな
出典: あの頃じゃねえ/作詞:般若 作曲:CHIVA from BUZZER BEATS
未だ日本に根強く残る学歴社会。
いえ、現在の状況はさらにひどくなっているかもしれません。
ミュージシャン、俳優、モデルなど夢を持つことが必要な職業。
多くの方にとっては夢は叶うことなく趣味として終わってしまいます。
夢を捨て、社会に溶け込むことができる方もいるでしょう。
しかし学歴・国籍など様々な理由でドロップアウトしてしまう方は確かに存在します。
般若やBAD HOPが典型的な例です。
彼らは自らの力で居場所を作り上げなければいけません。
だから心ない言葉には辛辣な言葉を返します。
「趣味じゃねえんだ!」