『How-to』のMVには何の「やり方」が描かれている?
今回はMrs. GREEN APPLEの『How-to』のMVをご紹介します。
まるでゴスペルのような壮大なコーラスとオリエンタルな雰囲気が特徴的なこの曲。
実はマレーシアの航空会社「エアアジア」とのタイアップソングです。
2019年 How-to エアアジアCMソング
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/Mrs._GREEN_APPLE
旅がしたい……それだけではない?!
東南アジアを中心に、様々な歴史的建造物やローカルな街並みをうまく取り込んだ映像です。
「旅がしたい!」とムズムズする方も多いのではないでしょうか。
情熱的な踊りと美しい景色、そして最後に女性が見せる晴れ晴れとした表情。
それだけで絵になるのですが、ただ単に素晴らしい光景を集めているだけではないのは一目瞭然です。
『How-to』のMVから浮かんだ4つの疑問を徹底解釈!
Mrs. GREEN APPLEは「人生=旅」という視点でこの曲を書き下ろしました。
初めて見る世界への一歩をためらってしまう人に、勇気をもたらしてくれるでしょう。
全体的にポジティブな雰囲気の楽曲ですが、どうしても気になってしまうのがMV中の描写です。
4点を挙げてみました。
- 悲痛な叫びに似た踊り
- 女性のカラフルな服装
- サングラスの存在
- 短すぎる夜空のシーン
気になった方も気にならなかった方も、これらの意味を探っていきましょう。
Mrs. GREEN APPLE、エアアジア新CMに“人生は大きな旅である”コンセプトの新曲提供(動画あり / コメントあり) - 音楽ナタリー
Mrs. GREEN APPLEが航空会社・エアアジアの新CMソングとして新曲「How-to」を書き下ろした。
苦しそうな表情で踊る女性の意味
街中と屋台村それぞれを女性が歩くシーンがあります。
街中では鮮やかな黄色のパーカーを着て、屋台村では赤いシャツに黄色いパンツ姿です。
色とりどりの景色の中でも、妙にその色が浮いているような気がしますね。
その後、彼女は今にも泣きそうなぐらいに顔を歪めながら激しく踊ります。
このまま泣き崩れてしまうのではないかと不安になるような描写です。
これは一体何を表現しているのでしょうか。
その国を訪れた理由
女性は初めから踊るつもりで街に出てきたわけではないはずです。
もしそうであれば、リュックサックなんて邪魔なだけ。サングラスだって必要ありません。
彼女は旅行客として、この地を訪れたのでしょう。
映し出される地元の人々はアジア系の方ばかり。もちろん彼女だって「アジア系」です。
しかし、人々は珍しいものでも見るように、過ぎゆく彼女をじっと目で追うのです。
顔立ちはさほど違わないはずなのに、明らかに彼女のことを「異国の者」として認識しているようです。
とはいえ、彼らに悪意があるわけではないのです。排除するつもりもありません。
ですから、彼女がひと言「こんにちは」とその国の挨拶を投げかけるだけで、彼らは笑顔になるのではないでしょうか。
思うような一歩が踏み出せない苦しみ
彼女は恐らく、頭の中では理解しているのです。
彼らはただ単に「外国人だ」と思って見ているだけで、敵意はない。
ですから、訪問者としてひと言挨拶すれば場の空気は和むのです。
彼女は「現地の人と親しくなる」という目的を持っていたのかもしれません。
しかし親しくなるための第一歩が踏み出せず、そんな自分に対する怒りすらこみ上げてきたのでしょう。
異国の地で、自分は一体何がしたいのか。観光なのか、買い物なのか、それ以外なのか。
彼女はこの地で、自分自身の本質をさらけ出したかったのではないでしょうか。
日本にいるときは本当の自分を押し殺して、仮面をつけて生きているかもしれません。
言いたいことは飲み込んで、出会いに臆病で、何も変わらない毎日を送っているのではないでしょうか。
だからこそ外国で、いつもの自分を知る人がいない環境で、本当の自分として呼吸したかったのです。
何かを絞り出すような女性の踊りは、ダンスというより「表現」ですね。
広げた両手で何かを掴むような仕草や、地面に寝そべってもがく様子。
誰かに見せるための踊りではありません。いうなれば「自己表現」です。
一歩を踏み出すための旅なのに踏み出せないもどかしさを表現しているのでしょう。