「Applause」の和訳に挑戦
「Applause」は3rdアルバム「アートポップ(Artpop)」(2013年11月発売)に収録されています。
2nd「ボーン・ディス・ウェイ」の発売後、早い時期から「アートポップ」の制作が始まりました。
作業が本格化したのは翌2012年のこと。
つまり、長い時間をかけてアルバムが作られたわけです。
アルバムに先行して最初にシングルカットされた「Applause」は、自己主張の強いメッセージが歌われています。
その歌詞は日本でも多くの方が翻訳を試みています。
ネットで調べると様々な和訳があり、どれが正しいのか分かりません。
そんな難物にあえてチャレンジしてみようというわけです。
皆さんが納得できるか分かりませんが、ご覧になってください。
拍手喝采
「Applause」はファンに向けたメッセージ
この曲はガガとアルバムの製作に携わった7人のプロデューサーやソングライターが共同で書き上げています。
メインはガガとプロデューサーのフェルナンド・ガリベイとDJホワイト・シャドウ(本名ポール・ブレア)です。
ガガのアイディアを彼らが歌詞やサウンドでサポートしています。
「Applause」の歌詞は一見すると簡単そうですがとても緻密に計算されています。
デジタルビートとメロディに合わせて単語や慣用句が省略されています。
和訳するのはかなり難易度の高い歌詞なのです。
批判に対する自分の答え
AメロとBメロに当るヴァース1
[Verse 1]
I stand here waiting for you to bang the gong
To crash the critic saying, "is it right or is it wrong?"
If only fame had an IV
Baby, could I bear being away from you
I found the vein, put it in here
出典: Applause/作詞:Stefani Germanotta(Lady Gaga),Paul "DJ White Shadow"Blair,Dino Zisis,他 作曲:Stefani Germanotta(Lady Gaga),Paul "DJ White Shadow"Blair,Dino Zisis,他
【和訳】
ゴング(銅鑼)を鳴らすためにここであなたを待ってるの
「それが正しいか間違っているか?」って、批判する人の言うことを打ち砕くためにね
名声だけを静脈注射できるなら
ベイビー、あなたと離れていても我慢できる
静脈を見つけて、ここに入れるの
初めのここで待っているとはスターである自分の立場でしょう。
「critic」を評論家や批評家としている訳が多いですが、それは音楽評論家を意味します。
だけど、ここは一般人を含めてガガに批判的な全ての人と解釈したいです。
ガガは学生時代にいじめを受けていました。
さらにデビュー前のクラブ時代も奇抜な行動で多くの批判を浴びています。
それらを跳ねのけてスターの座を手に入れました。
そうした批判があっても、名声をわが身に出来るのなら我慢できると言っています。
病気から得たインスピレーション
ヴァース1の3行目に「IV」という単語があります。
これは「intravenous」、つまり「intra(内)」「venous(静脈)」の略で、静脈注射または点滴の意味。
全体の歌詞からするといささか唐突で違和感を覚えますが、この言葉を入れた理由は推測できます。
ガガは2013年2月に股関節の炎症で手術を受けました。
音楽活動を休止し、長期の入院と治療の間に痛みを抑えるモルヒネ注射を受けており、点滴もあったはずです。
ガガはこの時の入院がアルバム製作にインスピレーションを与えたと言っています。
それでこうした描写が歌詞に取入れられたのでしょう。
サビの一部に当るプレ・コーラス
歌詞に仕込まれた言葉の仕掛け
[Pre-Chorus]
I live for the applause, applause, applause
I live for the applause-plause, live for the applause-plause
Live for the way you cheer and scream for me
The applause, applause, applause
出典: Applause/作詞:Stefani Germanotta(Lady Gaga),Paul "DJ White Shadow"Blair,Dino Zisis,他 作曲:Stefani Germanotta(Lady Gaga),Paul "DJ White Shadow"Blair,Dino Zisis,他
【和訳】
拍手のために生きるの、拍手、拍手
本当の拍手のために生きるの、本当の拍手のために
あなたが私にくれる歓声と絶叫のために生きるの
拍手、拍手、拍手
2行目に「applause」と「plause」という2つの単語を連結させた面倒な仕掛けがあります。
単純に「applause」の「ap」を取って韻を踏んでいるのではありません。
「plause」は「plausible」の短縮形です。
「plausible」は「もっともらしい」「まことしやかな」「本当の」という意味になります。
ここは、お世辞ではなく「心からの拍手」が欲しいとファンに求めているのです。
そしてファンの声援で自分は生きていられるという嘘偽りのない気持ちをストレートに表現しています。
日常的にこんな言葉を使ったらなんて自尊心の強いやつだと思われそうですね。
ガガのように圧倒的なスターだからこそ認められる言葉なのです。