相反する感情

足りないか、充分か

手に取れる物 それは全て欲しい
けど 今で十分な気がする

出典: 19歳になりたくない/作詞:あいみょん 作曲:あいみょん

世界には魅力的なものがたくさんあります。

買いたいもの、やってみたいこと、手に入れたい経験。

「欲しい」という感情の根底には、「足りない」という気持ちがあります。

隙間を埋めたくなるようなものかもしれません。

果てしない「足りないという思い」に支配されていると、周りがモノで溢れます。

それに警鐘を鳴らすように、「今あるものに目を向ける」動きも加速しています。

欲しいものが多くても、案外自分に必要なものは揃っていたりするものです。

この歌詞は主人公が、外と自分の周りを見比べている心情ではないでしょうか。

世界の光と影

大人になるたびに
見たくないものを見ては 泣いちゃうし
本当の自分に気づくことは少し怖いんだ

出典: 19歳になりたくない/作詞:あいみょん 作曲:あいみょん

成長するにつれて、見えるようになるものがたくさんあります。

子どもの頃は簡単に本音で話ができました。

成長すると、本音と建前を使い分けるようになっていきます。

それは決して悪いだけの行動ではありません。

相手を傷付けないための優しい嘘という言葉すらあります。

しかし、初めて本音と建前の差を知りショックを受ける人もいるでしょう。

知らない方が良かったと思うことさえあるかもしれません。

「本当の自分」とは?

では、ここで語られる「本当の自分」とは何でしょう。

これこそが「本音と建前を使い分ける自分」ではないかと思われます。

人に表と裏があると気づくと、続いてさらにショックな事実に気づきます。

自分にも表と裏があるということです。

自然な心理として、自分だけは潔白であると思いこみたいのが人間。

自分も心にもないことを言ったり、したりしている。

それに気づいてしまった時、大きな罪悪感に苛まれてしまいます。

今まで正直だった自分を守りたいあまり、本音を否定するかもしれません。

しかし、もっと大きな目で見ればそれも含めて本当の自分です。

物事に両極があるように、人間も陰と陽からできています。

優しさも怒りも併せ持つのが自然な姿であり、否定する必要はありません。

否定したくなるような自分に気づくのは辛い経験になるでしょう。

否定するのは簡単ですが、自己否定を続けるのは自分にとってよくありません。

どこかで陰の自分も受け入れる必要が出てきます。

これは乗り越える価値のあるものだといえるでしょう。

変わらない軸を見つける

18の今思うことが一つ
何故人は減る命に祝いを捧げるの
強くはなりたい でも弱くもありたい
私のままでいたい

出典: 19歳になりたくない/作詞:あいみょん 作曲:あいみょん

誕生日という晴れやかなイベントが、段々切ないものに変わっていきます。

多くの人がある一定の時期から、「また年を取った」と言うようになるのです。

子どもの頃はプレゼントに喜んでいたのに……。

この歌詞で、誕生日というイベントの不思議さにも気づかされます。

人間は生まれた瞬間から、死に向かっているということもできるでしょう。

それは喜ばしいことなのか、それとも寂しがる必要があるのでしょうか?

素朴で純粋な疑問です。

また強くなれば、大切な人やものを守ることができるようになります。

自分に害をなそうとする相手に立ち向かうことも可能です。

同時に、強さと弱さは両極にあります。

大人と子どもの例と似ている部分があるかもしれません。

強くなった人が、弱さや優しさを忘れてしまうことがあるのです。

主人公は、立ち向かう強さを求めています。

同時に、人に寄り添う共感力も持ち続けたいと願っているのです。

それが自分らしさを象徴する哲学に変わっていきます。

忘れてもまた思い出せる

思い出せないもの どこかに忘れてしまった宝物
一度握った手も 知らぬ間に離れてしまったんだ

出典: 19歳になりたくない/作詞:あいみょん 作曲:あいみょん

人間は忘れる生き物です。

昔大切だと思っていた何かも、いずれ忘れてしまう可能性を持っています。

「あったはずなのに」と断片的に覚えていると切なくなるかもしれません。

しかし実は、人間は経験すべてを記憶しているという考え方があります。

忘れたように見えるだけで、記憶自体は消えないといわれているのです。

使う頻度の低いものを棚の奥にしまうようなものなのでしょうか。

ものは取り出しづらくなっても、なくなったわけではありません。

思い出したいと願えば、小さなきっかけで思い出せる可能性があります。

忘れたように見えるものは、思い出せる。

離れた手は繋ぎ直すことができます。