一方で『ディア・ロンリーガール』のリリースから12年の月日が経ちました。
『新約ディアロンリーガール feat.ECD』で呼びかけられる少女たちの名前を見てみましょう。
少女たちは2017年に存在するであろう名前にアップデートされているのです。
それだけではありません。
R.I.P.ECD
飛鳥 さつき アンナ 葉月 まなみ
リオ チカ 志保 さおり みゆき アサミ
優香 麗華 みあこ よしえ ヒトミ
マヤ ルナ 詠美 アイカ かすみ あかり
桃子 しおり ひなこ 美沙子 のぞみ
ミク ゆか 詩音 翼 リナ ルミ
ミナ みづき 早希 ヒカリ まもり 愛梨
くらし えん ゆき ヨーコ ノリヨ ジュン
出典: 新約ディアロンリーガール feat.ECD/作詞:Marvin Gaye,David Ritz,Odell Elliot Brown Jr.,Takashi Matsumoto,Kyohei Tsutsumi,MILIYAH 作曲:Marvin Gaye,David Ritz,Odell Elliot Brown Jr.,Takashi Matsumoto,Kyohei Tsutsumi,MILIYAH
『新約ディアロンリーガール feat.ECD』でもラストに再び少女たちの名前が列挙されます。
その数は総勢50名を超える数に膨れ上がっているのです。
12年という月日は加藤ミリヤを1人の少女から大人の女性へと変貌させます。
その時見えたのは当時よりも多くの少女たちの苦悶の表情でした。
何百人・何千人に呼び掛けてもまだ足りない...。
その想いがラストの切ない歌声にも滲み出ています。
最終行に登場する“くらしちゃん”と“えんちゃん”とはECDの2人の娘の名前です。
ECDは2018年に食道癌のため57歳という若さで死去されています。
残された少女よ、どうか父親のように強く生きてください...。
彼の生前に書かれた歌詞ですが、今改めて聴くことで新しい意味も含まれたのです。
12年前の元・少女たちとの連帯感
時は過ぎ 乙女大人になって
戻れない「うちらの時代」は
特別に輝いてた 夢に散った
でも居場所は此処だから
マリア メイ アイ カオリ
リナ サチ ナナ リサ エミ アユミ
あの子は今幸せかな
孤独愛せるようになれたかな
出典: 新約ディアロンリーガール feat.ECD/作詞:Marvin Gaye,David Ritz,Odell Elliot Brown Jr.,Takashi Matsumoto,Kyohei Tsutsumi,MILIYAH 作曲:Marvin Gaye,David Ritz,Odell Elliot Brown Jr.,Takashi Matsumoto,Kyohei Tsutsumi,MILIYAH
さらに大人になった加藤ミリヤは過去に呼び掛けた元・少女たちの顔を思い浮かべます。
自分と同じく大人になったであろう彼女たちは今どうしているだろう？
ひとりぼっち孤独と闘ってきた加藤ミリヤは過去の記憶と向き合うことで成長を遂げました。
どうか私と同じように生き延びていてほしい...。
そんな想いを表出せずにはいられなかったのでしょう。
私たちの時代
責任感の欠如した大人へのアンサー
子供みたく扱わないで 経験が生む確かな自分が創る
容易く分析なんかしないで わかったような顔でこっちみないで
メール携帯絶対手離せない 学校行きたくない 家に居たくない
押し付けないで古い考え ここからうちらの時代
出典: ディア ロンリーガール/作詞:Miliyah,Takashi Matsumoto 作曲:Miliyah,Kyohei Tsutsumi
誰もがみんな昔は子どもだったはずなのに...。
なぜ大人になると子どもの気持ちが分からなくなってしまうのでしょう？
友だちが大切、楽しく過ごしたい。
ただそれだけのことなのに大人は言うのです。
「どうして勉強しないの？」
「自分の若い頃はもっと苦労したんだよ」
大人たちの空疎な言葉には自分たちが空疎な時代を作り上げてきた張本人だという感覚が欠如しています。
だから当時の加藤ミリヤは高らかに宣言したのです。
「今は私たちの時代だ」と。
心の奥底で望む温もり...
今が楽しい渋谷センター街 だけどいつまで続くかわからない
できれば切り開きたい新時代 きっとやれるんだって信じたい
SO ハマッた迷路から出たい and i 今すぐ家へ帰りたい
迷いながら いつか見つけたい すべてが見える地図を
出典: ディア ロンリーガール/作詞:Miliyah,Takashi Matsumoto 作曲:Miliyah,Kyohei Tsutsumi
『ディア ロンリーガール』がリリースされた2005年。
当時の渋谷の街は現在とは比較にならないほど危険な香りとスリリングな魅力に溢れていました。
孤独を抱えた少女たちがその街に集うのは当然の帰結だったのです。
一方で渋谷の街で夜を明かす少年少女たちは心の奥底で温もりを求めていたのでしょう。
しかしその温もりを家庭に見出すことができなかったとしたら？
彼女たちは時間制限付きの友人たちとの疑似家族関係を築くしかなかったのです。
どうして、抜け出せないの...
