情熱的なタンゴの世界に魅了されるヒット曲
「TANGO NOIR」(タンゴ・ノアール)は中森明菜さん17枚目のシングルとして1987年に発売。
タイトルにもあるように、ダンス・舞踊タンゴの世界観でトータルプロデュースされています。
カリスマアイドル明菜ちゃんのヒット曲の中でも大人っぽい、かっこいい系の人気曲です。
情熱的なタンゴの踊りや歌で表現されているのは、壊れるほど激しい愛……。
そんな「TANGO NOIR」の歌詞の意味をじっくり紐解いていきましょう。
タンゴ・ノアールって?
歌詞の解説に入る前に、気になるタイトルの意味も深掘り!
タンゴについては何となくイメージできるけれど、ノアールって何?という人もいるでしょう。
ノアールはフランス語で「黒い」という意味です。つまり「黒いタンゴ」ということになります。
ところが「黒いタンゴ」って何?という疑問も出てきますね。そこでタンゴについておさらい!
アルゼンチンタンゴとヨーロピアンタンゴの違い
タンゴの起源は、18世紀後半のイベリア半島つまりスペイン辺りでは?と考えられています。
ただ本格的な誕生はアルゼンチンで、その後ヨーロッパでも普及した……という流れです。
そのためアルゼンチンタンゴが元祖で、ヨーロピアンタンゴ(コンチネンタルタンゴ)が別系統。
そんなふうに考えられています。違いは演奏スタイルで、他にも地域によって分類できます。
大まかにいうとアルゼンチンタンゴの演奏はアコーディオンに似た蛇腹楽器バンドネオンが主流。
ヨーロピアンタンゴは社交ダンスの音楽として、オーケストラで演奏されることが多いです。
ヨーロピアンタンゴに近い
アルゼンチンタンゴでは、スタッカートのリズムの刻み方など厳格な伝統が受け継がれています。
明菜ちゃんの「TANGO NOIR」はフランス語が入っているので、ヨーロピアンタンゴ!
社交ダンスに近いほうのタンゴ……そう解釈することができるのではないでしょうか。
アルゼンチンタンゴが赤だとすると、ヨーロピアンタンゴは黒……ということかもしれません。
あるいはアルゼンチンとヨーロピアンにかかわらず、女性の赤に対して男性の黒ということかも。
この辺りは歌詞を解釈しながら見ていきましょう。
歌詞解説!黒&赤の2人の踊りが始まった
「TANGO NOIR」は歌が始まる前に既に物語が始まっているんです。
明菜ちゃんの衣装やメイク・ヘアスタイルに至るまで、タンゴの世界観ですべてが統一!
赤と黒の重たそうなゴージャス衣装を着こなし、細すぎるウエストがキュッと締まっていました。
しかも明菜ちゃんはイナバウアーよろしくのけぞってスタンバイ!イントロが始まると……。
おもむろに上半身を起こし、スタッカートのリズムに合わせスカートを翻すというかっこよさ!
おまけに低音ボイスで始まるんですね。この渋さは山口百恵さんに通じるものがあるでしょう。
黒い繻子の靴?
冷たい指で手首つかまれて
踏み出した黒い繻子の靴から
終わりの来ない夜 始まったの
Pas de deux noir
リズム切り裂いてふるえる肩先
瞳の中にかげろう 赤くゆれて
出典: TANGO NOIR/作詞:冬杜花代子 作曲:都志見隆
歌が始まると、最初の疑問は「黒い繻子の靴」ってどんな靴?ということになるでしょう。
繻子(しゅす)という光沢の強い織り方があって、本繻子だとサテンになります。
タンゴの靴や衣装は光沢のあるものが多いということですね。
その靴の色は黒。
つまり、男性に手首をつかまれた女性が、足を踏み出すことで踊りが始まったのでしょう。
「パ・ドゥ・ドゥ」はフランス語で「2人のステップ」という意味。
バレエではデュエットが同性2人の踊りで、パ・ドゥ・ドゥが異性2人の踊りになります。
女性のほうが黒い靴を履いていて、男性の瞳が赤く燃えている……ようです。
悪魔に魅入られる!
ちょいワル男?
もうひき返せない
美しい悪魔に
魅入られて愛して
いたぶられるままに
出典: TANGO NOIR/作詞:冬杜花代子 作曲:都志見隆
悪魔が実際に存在するか?というと、地域によって文化的な考え方の違いがあるかもしれません。
サタンやデーモン、デビル、ディアブロの違いも、日本ではピンとこないでしょう。
「美しい悪魔」は「ちょいワル男」くらいの感じで理解するのが無難っぽいです。
女性は男性に手首をつかまれていますので、ちょいワル男に気に入られ誘われたことになります。
2人の情熱的なタンゴの踊りが始まり、その掛け合いがいたぶられるよう……なのでしょう。