切ない系実力派バンド「ユアネス」
SNSを効果的に使い着実に人気が広がっているバンド「ユアネス」。
ボーカルの伸びやかな歌声とギター・ドラム・ベースのテクニックとセンスが光ります。
そして今回注目したいのは、切ない歌詞です。
ノスタルジック、センチメンタル…そんな言葉がよく似合います。
誰もがその心に持つ、懐かしく愛おしい思い出。
もう戻れない「あの頃」に思いをはせる歌詞が、リスナーの感傷を揺さぶります。
収録アルバム『Ctrl+z』の意味は
失くしてしまった、関係や時間。
失ってはじめて、かけがえのない大切なものに気付く…そんな経験はきっと誰にでもあると思います。
今回ご紹介する『Bathroom』が収録されているアルバムの名前は『ユアネス/Ctrl+z』。
「Ctrl+z」とは、ご存知のとおりパソコンのショートカットキーで、意味は「やり直し」です。
やり直したい、またあの頃に戻りたいという、感傷をドラマチックに歌う彼ららしいネーミングです。
アルバム全体で一つの大きな物語となっているのですね。
思わず感情移入してしまう『Bathroom』
楽曲『Bathroom』は、ユアネスの「切ない」世界観が秀逸な一曲です。
思わず感情移入してしまうような歌詞付きのMVに、切なく歌い上げるボーカル黒川侑司の表現力。
メリハリの利いたサウンドは一度聴いたら、何度もリピートしてしまう中毒性があります。
それはきっとどこにでもいる一人の女性の物語。
失ったあの頃を思い出して、一人、泣くんです。
曲の中の女の子に、自分を重ねてしまうのは、どうしてでしょうか。
道路を流れる車のライト。
そんな場面から『Bathroom』は始まります。
「あの頃」にとどまっていたい
欠けた街を見てた
「変わらない」日々の背中を
欠けた月を見てた
「変われない」私の事を
何も知らないまま
書き残した「大人になれば」
何も言わないから
少しだけ ここに居させて
出典: Bathroom/作詞:古閑翔平 作曲:古閑翔平
夜の街を歩く、一人の女性。
街の明かりが淡々と流れていきます。
変わらない日常を「街」に、変われない私を満ち欠けを繰り返す「月」にたとえたのでしょうか。
「大人になったら」と無邪気に言えたあの頃。
素直に未来を夢見ることができたあの時間を、「ここ」と言っているのかもしれません。
それでも時間は否応なく過ぎていきます。
変われない私を許容してくれる、優しい過去の時間にとどまっていたいのに。
忘れたはずの想いが疼く
注いだ惰性が 伸びた髪が
今じゃ空になった景色を隠してる
そうして君の事ずっと
今までずっと忘れてたはずなのに
なんで私は泣いてるの
出典: Bathroom/作詞:古閑翔平 作曲:古閑翔平
思い描いていたたくさんの未来は今では空になってしまったのでしょうか。
MVでは、まだ髪の長かった女性が、明るい日差しの中で笑っている場面がフラッシュバックします。
大切な人は傍らにいて、そして身を寄せ合ってー。
やがてすっかり髪の短くなった女性は、夜を一人歩き続けます。
ふと立ち止まるのは、彼と過ごした幸せだった時間を思い出したから。
スカートを強く握りしめ、静かに涙をぬぐう姿に、見ているこちらも切なくなります。
リセットなんてできていなかった
「泣いているのはどうしてだろう」と自問しますが、本当は分かっているのです。
「君」を忘れて、あの頃の自分をリセットしたつもりでいました。
でも、ムリに閉じ込めた思いは、簡単に蓋が開いてあふれ出てしまう。
こうして何度も「君」を思い出して、きっとまた泣いてしまうんでしょう。