BAD HOPが明かす川崎サウスサイドの現実

BAD HOPの音楽は川崎の表と裏を浮き彫りにする

BAD HOP「Whatever feat. YZERR & Tiji Jojo」を解説します!の画像

日本のヒップホップリスナーで知らぬ人のいない存在となったBAD HOP

クルーの核であり双子の兄弟T-PablowとYZERRは今や若者の憧れのヒーローです。

BAD HOPの綴る言葉は地元川崎で過ごした20数年間の人生の記録

「KAWASAKI SOUTH SIDE」

繰り返し使われる川崎という言葉。

神奈川県の北東部に位置する川崎市はBAD HOPが生まれ育った街です。

渋谷に続くハロウィン仮装パレードの聖地。

同時に凄惨な少年犯罪を告げたニュース映像でも知られる街です。

BAD HOPは川崎を薄暗い闇に包まれた街として生々しく描写します。

川崎ノーザン・ソウルとの対比

BAD HOP「Whatever feat. YZERR & Tiji Jojo」を解説します!の画像

視点を少しだけ変えてみましょう。より川崎の多面性を知ることができます。

BAD HOPのメンバーが歌う川崎はサウスサイド

つまり川崎市南部の京浜工業地帯の現実です。

同じ川崎市でも北部に目をやると全く違った光景が見えてきます。

美しく整備された街並み。いわゆる郊外のニュータウンです。

没個性的な建物、乱立するチェーン店は若者に退屈しか提供しません。

小沢健二スチャダラパーのANIとSHINCO川崎北部の出身

小沢健二「川崎ノーザン・ソウル」と呼んだ空虚な風景。

スチャダラパーが「ヒマの過ごし方」を歌った街。

同じ川崎市の景色でも北部と南部では小沢健二とBAD HOPほどの違いがあるのです。

武道館公演は先行チケットで即完売

絶望から希望へ

BAD HOP「Whatever feat. YZERR & Tiji Jojo」を解説します!の画像

2012年、第1回高校生ラップ選手権T-Pablow(当時はK-9)は優勝

その経歴はBAD HOPの運命を大きく変えることになります。

続く第4回目でも優勝したT-Pablow。第5回目の優勝者双子の弟YZERR

彼らを迎えたのはZeebraを筆頭とする信頼できる大人との出会いでした。

それまで彼らが知る周囲の大人はヤクザ、アル中、警察に施設のカウンセラー

中学の時点で将来は「そのスジ」に進むしかないと覚悟するほど荒れていた彼ら。

「もしかしたら音楽で食べていけるかも?」という希望を初めて抱きます。

Life Style/BAD HOP - T-Pablow, YZERR

Anarchyみたく与えるghetto kidsに夢と希望

出典: Life Style/作詞:T-PABLOW,YZERR 作曲:Gold Digga

20歳を超え「オトナ」と呼ばれる年代になったBAD HOP。

2016年の「Life Style」では憧れのアナーキーのように「夢と希望」を与えたいと歌います。

今やBAD HOPは日本武道館でワンマン公演を行うほどになりました。

武道館のチケットは前売りで即完売

確実に悩める十代に夢と希望を与える存在に成長したのです。

今回はBAD HOPが2018年10月に公開した新曲

「Whatever feat.YZERR & Tiji Jojo」について解説します。

『Whatever feat.YZERR & Tiji Jojo』解説

「BAD HOP ALL DAY vol 2」収録!

2018年10月24日。突如YouTubeにUPされた動画

それはまぎれもなくBAD HOPの新曲「Whatever feat.YZERR & Tiji Jojo」でした。

実はこの曲は武道館公演で無料配布されるCD「BAD HOP ALL DAY vol 2」に収録されています。

つまりCDを手にすることができるのは運よく武道館のチケットを手に入れた方だけ。

今後「BAD HOP ALL DAY vol 2」プレミアムアイテムとして扱われることが予想されます。

アルバムのアートワークに使用される「池上コインランドリー」

そこは工業地帯のほど近くに位置する池上町の入り口

池上町は古くから朝鮮半島にルーツを持つ方たちが寄り添って暮らす地域です。

メンバーBarkは池上町で、そしてこの曲を歌うTiji Jojoは隣町の池上新町で生まれ育ちました。

Tiji Jojoは祖父が在日韓国人であるルーツを今では誇らしげに語れるようになります

それはBAD HOPのメンバーとの出会いがあったからでしょう。

武道館という大舞台に立っても自身のルーツである川崎にあくまでこだわるBAD HOP。

彼らの音楽にかける真摯な姿勢がアートワークの隅々まで垣間見えるようです。

新曲2WINYZERRと共にマイクを取るTiji Jojo

上の写真の左上がTiji Jojo右下がBarkです。

2WINの兄弟と共に保育園時代からの友人であるTiji JojoとBark。

2人が住む池上町と池上新町は隣町

しかしTiji Jojoの家族は北朝鮮系の多く住む池上町には近づかないよう促します

朝鮮半島の38度線の緊張関係は川崎にも影を落としていたのです。