『暴れだす』
2005年発表のウルフルズ27枚目のシングル
今回ピックアップするのはウルフルズの27枚目のシングル曲『暴れだす』です。
ウルフルズが『暴れだす』をリリースしたのは活動休止の直前の2005年。
本稿を執筆している2019年5月現在、リリースからすでに15年近くも経過しています。
当時はau関西のCM曲、そして映画「ガチ☆ボーイ」の挿入歌としても有名でした。
「最近上手くいっていないな」と感じる時に『暴れだす』を聴いてみてください。
不思議と頭の中がスッキリとするのです。
それこそが時代を超えて聴き継がれていく名曲の証なのかもしれません。
MVをチェック!
アニメーションを用いたMV
わいもくんの目から溢れ出す涙...
MVの中でわいもくんの大きな瞳から涙が溢れだします。
それは彼の心の中で何かかが『暴れだす』瞬間をとらえた映像です。
そして彼は数多の星が楽しそうにほほ笑んでいることに嫉妬を覚えます。
すると1つの星が彼の心と共鳴したかのように落下し爆発してしまうのです。
その後、わいもくんは星の欠片から生まれたわいもちゃんと出会い何か大切な感情を手に入れます。
これらの物語は『暴れだす』の歌詞を視覚化し表現したものでした...。
想像以上に深淵な意味を持つであろう『暴れだす』。
ここからは『暴れだす』の歌詞の意味を様々な視点から紐解いていこうと思います。
はたしてトータス松本は『暴れだす』で何を表現しようとしていたのでしょう?
どうしてオレって奴は...
繰り返される「自己との対話」
あぁ 神様オレは 何様ですか
どうしていつも まちがえるのか
出典: 暴れだす/作詞:トータス松本 作曲:トータス松本
人はそれぞれの心の中に様々な「神さま」を持っています。
それは「キリスト」や「アッラー」などの一神教とは限りません。
日本に古くから伝わる「八百万の神」という概念でもいいでしょう。
ここでトータス松本が問いかけているのは生者が心のよりどころにするべき「神さま」です。
それはすなわち心の中に眠るもう1人の自分、仮に良心と名付けておきましょう。
『暴れだす』の歌詞を構成しているのはすべて良心への問いかけ、つまり「自己との対話」です。
矛盾に押しつぶされる心
悩みはたえず オトナになれず
眠れぬ夜を 今夜もまた
笑ってごまかす 声もむなしく
飛び出すことも できないままに
出典: 暴れだす/作詞:トータス松本 作曲:トータス松本
『暴れだす』のテーマは「自己との対話」による心の成長です。
トータス松本は度々このようなテーマを楽曲に取り入れてきました。
「笑う」ことで人生を肯定した『笑えれば』しかり。
『泣けてくる』では感情を発露することで世界を肯定してきました。
しかし『暴れだす』でトータス松本は終始「自己否定」を繰り返すのです。
人生の選択肢を誤ってしまったこと。
勇気を出せない弱い自分。
誰もが憧れるミュージシャンという職業には特殊な事情が付きまといます。
童心を、言い換えれば「初期衝動」を常に周囲から求められるのです。
一方でメジャーレーベルで活動する稼ぎ柱となったウルフルズには大人の付き合いが増えてきます。
その矛盾に押しつぶされそうになっていることが詳らかに記録されているのが『暴れだす』なのです。