軽快かつ切ない曲の秘密
時代を越えて愛される名曲
ドラマ「俺たちは天使だ!」の主題歌として有名になった「男達のメロディー」。
ドラマの放送は1979年でしたが、平成に入ってからもテレビ番組をきっかけにTOKIOがカバーしています。
それ以外にも数々のアーティストに演奏されてきました。
まさに時代を越えて歌い継がれる名曲ですね。
ポップさと哀愁
カーステレオのラジオから流れているような音色が、軽快なドライブを連想させます。
そこに乗るのは、歌謡曲のような雰囲気を持ちつつ、英語を織り交ぜながらポップにつむがれる歌詞。
ただ、そこはかとなく哀愁や切なさも感じられます。
世代を越えて愛される魅力を、歌詞から読み解いていきましょう。
相反する言葉の真意
主人公の"諦念"
走り出したら
何か答えが出るだろなんて
俺もあてにはしてないさ
してないさ
出典: 男達のメロディー/作詞:喜多條忠 作曲:ケーシー・ランキン
悩むよりまずやってみるといい。
そうすれば、おのずと答えは見えてくる。
そんな前向きな言葉で歌は始まります。
が、この曲の語り手は、そうは思っていない様子です。
メロディの最後に付け加えられた「なんて」という一言。
そこから本音が語られるところに、肩すかしを食らったような気持ちになります。
とはいえ、彼は答えが出ることに期待していないようでもある様子。
軽快なメロディとは裏腹にどこか諦めたような言葉が、哀愁を感じさせます。
実はこの曲の歌詞には、これと同じく、先に語られた言葉と矛盾するような表現が多用されているのです。
懐かしさをおぼえた相手にも…
俺とお前は
まるでなつかしい友達さ
初めて出会った筈なのに 筈なのに
出典: 男達のメロディー/作詞:喜多條忠 作曲:ケーシー・ランキン
「お前」に対して懐かしい思いを抱く「俺」。
まるで長く付き合いのあった仲間のように感じているのでしょう。
初対面でそこまでの関係が築けるのは、なかなかあることではありません。
これもいい意味で、前のフレーズをひっくり返すような表現です。
しかしこの後「俺」は「お前」に対して、それとは矛盾するような言葉を投げかけます。
人を遠ざける「俺」
明日も気がむきゃ
俺のそばに居てもいいけれど
俺のことにはかまうなよ かまうなよ
出典: 男達のメロディー/作詞:喜多條忠 作曲:ケーシー・ランキン
「なつかしい友達」とまで言えるほどの関係なのに、やや突き放すような言葉。
"親しき仲にも礼儀あり"とは言いますが、「お前」からの干渉を避けているような雰囲気があります。
もちろん、懐かしいように感じていても「お前」とは今日初めて会ったばかりです。
そこまで信頼できないというのも当然かもしれません。
そして「お前」も「俺」の事情を詳しくは知らないはずです。
だからこそ、すぐに深い付き合いをしたくはないというのもあるでしょう。
けれど「俺」の言葉からはそれ以上に、「お前」との距離を詰めたくないと感じさせるような印象を受けます。
相反する感情の果てに
お前がこの街
離れてゆく気になったら
俺は微笑って見送るぜ 見送るぜ
出典: 男達のメロディー/作詞:喜多條忠 作曲:ケーシー・ランキン