だからこそ彼は言います。

俺には構うな。

情を移すな。

深い関係になるな、と。

それは「俺」のためだし「お前」自身のためでもある。

そう、言外に語りかけているのです。

情に厚い「俺」

「お前」は今日初めて「俺」と顔を合わせた人間です。

懐かしく思えるとはいえ、「お前」のことを「俺」はまだほとんど知らない状態です。

もしかしたら「お前」も、「俺」に隠していることがあるかもしれません。

それが明るみに出た時、新たなトラブルに巻き込まれてしまう

そして新たな「流れ弾」が胸に刺さってしまう。

その可能性も大いにあります。

あるいはそうでなくても、「俺」と一緒にいると「お前」もトラブルに巻き込んでしまう

大事になってしまった存在を危険に晒すこと、それも彼にとっては「流れ弾」になり得るのです。

だからこそ、自分とは深い関係にならない方がいい。

そう「お前」に伝えているのです。

遠回しですが、直接的ではないからこそ彼の優しさが滲み出ている表現ですね。

彼の生き方

刺さったものを抜かずに

運が悪けりゃ死ぬだけさ
死ぬだけさ

出典: 男達のメロディー/作詞:喜多條忠 作曲:ケーシー・ランキン

障害物がなければ、傷は自然に治りゆくものだと先述しました。

本物の弾丸であれば、手術をして抜き去ることはできます。

心に刺さったものならば、自力で抜き取ろうと努めることもできるでしょう。

けれど胸に刺さったままのそれを、彼は抜こうとする様子はありません

そればかりか、今後も同じような「流れ弾」を受けるであろうことを予期しています。

そしてもっと運が悪い場合は、それによって命を落とすかもしれないこと。

そんなことを曲の終わりに、爽やかに歌い上げるのです。

胸に抱えたままで

おそらく彼は、今後も「流れ弾」を抜き取ることはしないでしょう。

なぜなら傷をあえて癒やさず、自らそれを全て抱えて生きていく覚悟をしているからです。

傷が塞がってしまえば、それによる痛みも徐々に消えていきます。

つまりその分、「流れ弾」の重さを忘れてしまう。

そこに関わった経緯や人間や絡まった思いを忘れてしまうのです。

嫌な思い出を忘れることで、人は心易く生きていけます。

けれどそうしたくない、全てを忘れず抱えて生きていきたい

そういう思いがあるからこそ、彼は「流れ弾」を刺さったままにしているのです。

彼の背中、そして人生

Pick up your head
throw away your Blue's

出典: 男達のメロディー/作詞:喜多條忠 作曲:ケーシー・ランキン

「顔を上げろ、いじいじしてんなよ」という一言。

英語で語られるそんなフレーズは、彼の本心のようだと先述しました。

「お前」に語りかけている風ですが、彼自身にも言い聞かせているように聴こえてきます。

一度しかない人生だから、後悔しないように生きていきたい。

いや、後悔したならそれも全て忘れず生きていきたい。

それはきっと、恐らくかつて「お前」のように大事だった人や物が関わっているからでしょう。

相反する、それこそが魅力

トラブルには巻き込まれたくはないし、巻き込みたくない。

けれど大事な存在がそこに関わっているとなれば、自らそこに飛び込んでいく。

そんな「俺」の姿は、昭和の映画ドラマに出てくるハードボイルドな主人公を彷彿とさせます。

人生をかけた重い覚悟が、明るいサウンドの中で軽やかに歌われる。

そんな矛盾…というよりこれは、「俺」が格好をつけている姿が体現されているようです。

曲と歌詞の、いい意味でのミスマッチ感

それが哀愁を感じさせる所以であり、この曲の魅力といえるのでしょう。

コメディでありながら探偵達の物語であるドラマと、ぴったりのテーマかもしれません。

同じように、過去の名作と連動した主題歌であるこちらも、あわせて味わってみては。

薬師丸ひろ子のヒット曲「探偵物語」は同名映画の主題歌。アイドル映画の主題歌の域を超えた名曲として高く評価されています。巧妙な比喩が散りばめられた歌詞の意味を読み解いていきましょう。

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