好きな人の話を聞きたいのは、少しでも相手のことを知りたいからで、少しでも声を聞きたいからです。
それは全部、少しでも好きな人に近づきたいからです。
でも、相手が他の人のものになってしまっては、それは叶いません。
どれだけ話を聞いても距離が近づくことはなく、好きな声ももう他の人のものなのです。
話すことで、聞きたくない恋愛の話を聞かなければならないかもしれません。
それなのに、なぜあなたは私の電話を受け入れてくれて、私の話を笑って聞いてくれたのでしょうか。
その理由に、私は気づいてしまうのです。
それは、あなたが私のことをもう好きではなくなってしまったからです。
相手が他の人のものになれば、諦めなければと思ってしまいます。
月日が経てば、抱いていた好意が消えていくこともあります。
そして、あなたにとって私はただの友達という立場になってしまったのです。
サビの歌詞
そうさ 何かを失くしたんだ 何かを逃がしたんだ
何より大事なものを 自ら放したんだ
出典: 都合の良い女の唄/作詞:阿部真央 作曲:阿部真央
あなたの気持ちに気づいた私は、もう1つのことに気づきます。
それは、私にとってあなたがどういう存在であったかということです。
心にぽっかり穴があいたような気持ち。
自分の中から何かが抜け落ちてしまったような感覚。
それを味わって初めて私は、あなたが自分にとって何よりも大切な存在であることに気づいてしまうのです。
2番の歌詞
それから月日は流れました 私とあなたは相変わらず
甘えて 甘えさせてた
そんな時あなたが言うの 「彼女ができた」って
言葉がでなかった
出典: 都合の良い女の唄/作詞:阿部真央 作曲:阿部真央
自分の気持ちとあなたの気持ちに気づいた私は、月日が経ってもあなたへの思いを断ち切れないままです。
一度逃してしまった存在、そして、その存在が自分にとってどれほど恋しい存在であるか。
私にとって、あなたはどうしても離したくない人になっていたのです。
ただ、あなたからの好意を感じなくなってしまった私は、思い切って行動に移すこともできません。
あなたが私を好きだったという過去だけが、私にとっての支えとなっているのです。
そんなある日、突然に突きつけられる現実。
自分の理想やプライドを優先してしまった結果、あなたは他の人のものになってしまったのです。
これまでと立場は一気に逆転してしまいます。
他の人のものになり、もう手に入らない存在。
あなたにとって遠い存在になって、優越感を感じたかった私の駆け引きはなんの意味もありませんでした。
ただ、最後には私にとってあなたが本当に遠い存在になってしまったのです。
自分の自惚れと 友達という区間に濁した
自分の都合の良さを恥じたんだ
出典: 都合の良い女の唄/作詞:阿部真央 作曲:阿部真央
取り返しのつかない状況になって、私はこれまでの自分を恥じ、後悔することになるのです。
そして、自分がどれだけ都合のいいことをあなたにしていたかに気づきます。
一度感じた好意を、なかなか忘れることができないのが女性ではないでしょうか。
そして悲しくも、一瞬のときめきに流されてしまうのも、女性というものなのです。
自分の気持ちに向き合おうとしない限り、手遅れになってから気づくことしかできないのです。
2番のサビの歌詞
あぁあ とうとう失くしたんだ とうとう逃がしたんだ
誰より大事な人を とうとう放したんだ
出典: 都合の良い女の唄/作詞:阿部真央 作曲:阿部真央
誰より大切な存在であるあなたを、”放した”という表現がされています。
つまり、あなたが遠くに行ってしまった原因は自分にある、と私は認識しているのです。
優しくしてくれて、笑って話を聞いてくれて、私を好きでいてくれたのに。
それを私が放した。
都合のいい自分への後悔の感情がとても感じられる言葉で綴られた歌詞となっています。
ずっと言えなかった本音
分かってたのに こんな日が来ること
でもあなたにとっての特別は 私だけがいいの
出典: 都合の良い女の唄/作詞:阿部真央 作曲:阿部真央
「わかっていた」とぽつりとつぶやく私。
そして、「あなたにとっての特別は私だけがいいの」という、泣き声のような言葉。
この阿部真央の言葉と歌の表現力に心を打たれた人も多いのではないでしょうか。
まさに、ついにこぼれた本音であるのだと感じます。
ずっと心のどこかで思っていたこと、でも、絶対に言えなかったこと。
あなたからの「好き」が、本当はとても嬉しかったのです。
誰かの特別になりたいわけではなかったことに、今になって私は気づきます。
私は、”あなた”の特別になりたかったのです。
気づけなかった、気づいても素直になれずに言えなかった本当の心。
この一文と阿部真央の歌だけで、私が今どんな気持ちで涙を流しているのかがわかってしまうようです。
矛盾した魅力
過去にこの曲のような体験をした人。
現在の状況にこの曲が当てはまるという人。
そういう人にとって、この曲は聴いていてとても辛くなるという感想も言われています。
しかし、聴いていてつらいのに、心に沁みて、感動して何度も聴いてしまう。
そういった矛盾した魅力がこの曲にはあるのです。
手遅れになってしまった、もう届かない大切な人の存在。
そんな相手への気持ちというのは、どこにも行き場がなく、持て余してしまうことも多いものです。
この歌は、そんな行き場のない思いを救ってくれるような力を持っているのではないでしょうか。
忘れてしまいたいつらい恋愛、けど忘れたくない、忘れられない大切な人。
自分の中に溜まったそういうものを、理解して分かち合ってくれることで浄化してくれる。
だからこそ、つらいのに心に沁みるという不思議な力を持った歌となっていように、私は感じるのです。