目覚まし時計
そうして目覚まし時計が鳴る。
ああ、もうそんな時間だ。
起きなければ...。
目覚まし時計とは、外から呼ぶ声です。
まだ自分と自問自答していたい。
寝床のぬくもりの中で、丸まっていたい。
それでも世界がやってきます。
自分の世界にいた彼を、外の世界が呼び戻しに来た。
色んなルールがあり、障害も、冷たさも、そして暖かさもある世界。
世界が、社会が、そして仲間であるメンバーたちが、彼を呼び戻しに来たのです。
さあ、いかなきゃ、と彼は思う。
そして意を決し、何事もなかったように起き上がり、朝の洗面台へと向かうのです。
世界へと、新しい一日へと、スタート!
その本質
無垢とカタルシス
この歌の歌詞を読むと、非常に無垢なものに触れたような気がします。
けがれていない、汚れていない。
五十嵐の歌詞を読むと、つくりごとはひとつもないという事が伝わります。
デビューから数年で、何枚もミニアルバムやフルアルバムを出した彼ら。
言いたいこと、書きたいこと、歌いたいことが、山ほどあったことがわかります。
若い間から色々なことを経験していたようです。
そこから、彼らの歌は、紡ぎだされてきたのです。
イマジネーションが豊かでいろんなタイプの歌があります。
でも傷つくことが多かったことがわかる。
彼らの歌はしばしば暗いといわれます。
でも日常の細部がよく描かれて、鮮明な歌が多い。
たとえば次のような歌を見てみましょう。
癒やしの力
ああこのまま君を待ってんの
昨日もまた君を待ってんの
そしたらまた君が立ってんの
雨の中君笑ってんの
出典: 君待ち/作詞:五十嵐隆 作曲:五十嵐隆
つらい事ばかりで
心も枯れて
あきらめるのにも慣れて
したいことも無くて
する気も無いなら
無理して生きてる事も無い
出典: 明日を落しても/作詞:五十嵐隆 作曲:五十嵐隆
1999年発表の1stミニアルバム中の歌ですが、救いも無く暗い歌詞です。
しかしメロディーの優しさと美しさが、不思議に心を落ち着かせてくれます。
歌詞も、ここまでまっすぐに暗いと、聴く者が逆に救われるのです。
無垢とカタルシス。
カタルシスとは、舞台の悲劇を見ることで、精神の浄化が行われることです。
聴いた後でむしろすっきりする。
まっすぐに落ち込むことで、心はむしろ底から立ち上がれる。
辛い事から立ち直れる力を貸してくれる。
そうした役割を、彼らの歌はずっと担ってきたのではないでしょうか。
最後に
syrup16gのことを検索にかけると、実に多く熱心なファンが今も存在していることがわかります。
彼らの歌を聴くだけでなく、僕らもこんな風に歌おうと、多くのバンドを生む動機になっています。
彼らの歌が愛されるのは、そこに「無垢さ」とともに「不安な心」が歌われているからです。
不安で当たり前、不安定で当たり前。
揺れ動く心どうしは、結びつきやすいものです。
弱く柔らかいからこそ、通じ合える。
そうやって、身を寄せ合うような親密さが、彼らのライブにはある。
世界の中で傷ついた人たちが、心を寄せ合う。
傷つく心は共感を呼びます。
なぜなら誰もが傷つくからです。
この世は失意や失望、落胆やすれ違いに満ちている。
胸の中にたまった思いを吐き出す。
一昔前、ロックといえばこういうものが主流でした。
いまでもどこかに、必ずこういう歌を必要とする人がいるんだと思います。
そういう人達に、syrup16gの歌を届けたいです。
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