もう嘘をつかないで
あなたが嘘をつかなくても
生きていけますようにと
何回も何千回も 願っている
さよなら
出典: よるのあと/作詞:塩入冬湖 作曲:塩入冬湖
愛する人がいる誰しもが、相手に幸せな未来が訪れるように祈っているものです。
それは健康であったり、成功であったり、はたまた自分と末永く一緒に過ごす未来だったり……。
どれをとっても、暗く沈んだ未来を祈っているものはありません。
しかし、本曲の主人公は「彼の本音」が聞きたいと願っている様子。
その願いは並大抵のものではなく、何度も何度も繰り返し願っても足りないほど強いものです。
そして、最後には別れの言葉を告げる主人公。
一緒にいる間に叶えたかった願いが、ついに叶わないまま終わりを迎えたことを示しているのです。
愛し合っていたはずの2人は、どうして別れる未来を選ばなくてはならなかったのか……。
主人公の振り絞るような声が、その理由について語ってくれています。
伝わっているようで、伝わらない想い
どれだけ着飾ろうとも
おやすみ そばにいるのに
汗が 乾けば 違う顔で
ルージュの慣れた匂いは
あなたの前じゃ 役に立たない
出典: よるのあと/作詞:塩入冬湖 作曲:塩入冬湖
一夜を共にする間柄ということは、それなりに仲の良い関係であることを示しています。
長い間一緒にいて、大きな争いもなく、平凡に過ごしてきた2人。
それは平和のように見えて、実は「小さなもやもや」を見逃してきただけなのです。
夜に彼女を誘う際には、あんなに情熱的に愛をささやいてくれるのに……。
全てが終われば、何事もなかったかのように冷たい態度に戻ってしまう彼。
どれだけ綺麗に着飾ろうとも、振り向いてほしくて誘惑してみても、彼が顔色を変えることはありません。
こんなにそばにいて、肌と肌が触れ合うことができるのに、心だけはそばにいない……。
彼の知らないところで、彼女はずっと寂しさを感じていたのです。
色のない関係
目に見える 細胞だけ
夜に響いた 鳴き声だけ
透明な バランスだけ
あなたにとって都合がいい
出典: よるのあと/作詞:塩入冬湖 作曲:塩入冬湖
彼女が本当に欲しかったのは、彼の「心」に他なりません。
しかし、彼が彼女に求めていたのは「夜の関係」。
欲望のままにそばにいてくれるような関係……そこに本当の愛情などあるはずもありません。
1人ぼっちで夜を過ごさなくても済むように、彼女をそばに置いておいたとも考えられます。
そこに色のついた未来など存在せず、2人を繋ぐ運命の糸はまるで無色透明のよう。
一般的なカップルが望む希望にあふれた未来など、2人の元にはやってこないのです。
2人の温度差が切なくて
青い 体温 震えぬ胸
簡単な顔して笑わないで
あなたが嘘をつかなくても
生きていけますようにと
何回も何千回も 願っている
さよなら
出典: よるのあと/作詞:塩入冬湖 作曲:塩入冬湖
彼がそばにいるだけで彼女の心はときめき、心臓はその鼓動を速めることになります。
顔や手は火照り、大好きな彼の顔をまっすぐ見ることすらできなくなるのです。
しかしその感情は、彼女だけが抱いているもの。
彼にとっての彼女は、ただそこにいるだけの女性にしか過ぎないのです。
熱く火照る頬を彼の胸に寄せれば、まるで体温を持っていないかのように冷たい陶器のような質感……。
いくら愛をささやいても、その胸が強く脈打つことはありません。
それでも、貼り付けたような笑顔を向けてくる彼。
作り物の笑顔を無理矢理浮かべるくらいなら、もういっそ笑わないでほしい……。
彼女が嘘をつかないでと願うのは、彼の口から飛び出す嘘だけではありません。
自分の心に嘘をつき、笑いたくもないのに笑わなくていい……。
彼の本心を知りたい彼女の、唯一の切ない願いです。