ラブソングみたいな 日々
フィルムにすらも 残りはしない
名前なんてない蜜を
ばれないように 握りしめた

出典: よるのあと/作詞:塩入冬湖 作曲:塩入冬湖

さまざまなアーティストが、歌の中でまっすぐな想いや愛情を伝えています。

日常の端々でときめきを感じるような歌詞は、まるで彼女の毎日を表しているようです。

彼の言葉で一喜一憂し、彼女の毎日は輝いたり色を失ったりするもの。

決してドラマティックな出来事はないけれど、それでも1日1日を大切に過ごそうと思わせてくれたはずです。

しかし、彼女にとっての特別な日々は、彼にとってはありふれた何気ない日々……。

一生忘れたくない出来事として、彼の頭の中に残ることはありません

何度でも見返したい想い出として、心のアルバムにしまわれることはないのです。

相思相愛の相手とならば、この気持ちには「恋心」という名前がついて大切に扱われることになります。

しかし一方通行の悲しい恋では、誰にも気が付いてもらえないまま……。

ずっと大切に抱いてきた想いを、さらに奥に封じ込めて何もなかったように笑う主人公。

すぐそばで渦巻く切ない感情にも、彼は気が付くことができません。

あなたが私を見ていなくても

adieu【よるのあと】歌詞の意味を考察!なぜ日々をフィルムに残せない?さよならを告げる理由を深読みの画像

青い 体温 震えぬ胸
簡単に 抱きしめてしまわないで

あなたが嘘をつかなくても
生きていけますようにと
何回も何千回も 願っているから

出典: よるのあと/作詞:塩入冬湖 作曲:塩入冬湖

自分が心から愛されていないと分かっている主人公は、想いの伝わってこない彼の腕を受け入れてしまいます。

そう、いくら叶わない恋でも、そう簡単に諦めることなどできません。

告白すらできずに見ているだけの恋ならば、諦めることもできるでしょう。

しかし彼女のそばには、現に彼が立っているのです。

いくら想いがないとはいえ、手離すことなどできるはずがありません。

それでも、行動の端々に「気持ちのなさ」を感じてしまう主人公。

せめて愛がないのなら、優しくしないで……。

見かけだけの「愛してる」がどれだけ辛いものなのかは、体験した本人にしかわからないのです。

こんなにも好きだったのに

彼の一言が私の全て

あなたの口癖の愛は
解けない呪いのようだ
一度のさよなら
最後に愛を込めて

出典: よるのあと/作詞:塩入冬湖 作曲:塩入冬湖

心から愛していないことを隠すように、何度も繰り返し「愛してる」と伝える彼。

そういわれるたびに、嬉しい気持ちと悲しい気持ちが入り混じったような気持ちになります。

そして、何度も考え、実行に移そうとしてきた「別れ」

いわなくてはならないと想えば想うほどに、彼の「愛してる」が頭から離れなくなるのです。

この関係を終わらせるには、彼女の方から別れを告げる必要があります。

ずっとこのまま一緒にいても、辛い想いが募るだけ……。

そんなことは分かっているのに、どうしても最後の言葉が口から出てこないのです。

喉まで出かかっていた「愛してる」

ふざけて 茶化して 言えなくなった
今更の当然 愛している

あなたが嘘をつかなくても
生きていけますようにと
何回も何千回も 願っているのよ

出典: よるのあと/作詞:塩入冬湖 作曲:塩入冬湖

本当の気持ちをまっすぐ彼に伝えることができない主人公。

別れの気持ちも当然ながら、「愛してる」の言葉ですら伝えることはできませんでした。

気をつけなければポロリとこぼれ出してしまいそうだった主人公の愛情。

気持ちがバレそうになるたびに、笑ってごまかしてしまったのです。

そんな主人公の姿を信じ、「自分のことを好いているわけがない」と捉えてしまう彼。

寂しさや切なさに気づけない彼が、愛情に気がつけるわけもなく……。

伝わらない気持ちを抱えながら、ただひたすらに彼を想う主人公の一途さに心を打たれます。

さよならを告げる理由

最後は明るく

adieu【よるのあと】歌詞の意味を考察!なぜ日々をフィルムに残せない?さよならを告げる理由を深読みの画像

持った思い出のすべて
悲しみだけじゃ寂しいでしょう

出典: よるのあと/作詞:塩入冬湖 作曲:塩入冬湖

この曲が歌うのは、主人公にとって嬉しくも、そして悲しくもあった「夜」のその後の話です。

つまり、この夜の間に主人公はある決断をすることに……。

いくら想い悩んでも変わらない関係と、日を追うごとに募る彼への気持ちを天秤にかける主人公。

その結果導き出したのは、やはり「別れ」という答えでした。

別々の道を歩むことを決めた後も、彼を気遣う素振りを見せる主人公。

悲しい感情で心がいっぱいになることがないように、せめて明るく別れようと必死になります。

これまでたくさんの悲しみを与えられてきたにもかかわらず、なおも彼の笑顔を見たいと想う……。

どんな時も変わらなかった主人公の愛は、別れの瞬間まで変わらずに輝き続けるのです。