哀しみにはアルペジオを

I’m sorry 涙流せないよ
あなたの哀しみはあなたの物
I know you’re alone
代わりに弾くよ このアルペジオ

出典: アルペジオ/作詞:川上洋平 作曲:川上洋平

哀しんでいる人がいれば話を聞いて、辛かったねと言って一緒に泣いてあげる。

一見心優しい行為のように感じますが、実際はどうでしょうか。

相手がどれほど哀しいのか、心に何本の傷がついているのかを推し量ることはできても理解するのは不可能です。

それなのに寄り添ってあげるフリなんてしたくはない、と歌っています。

もしも相手がそれを強く望んでも、主人公は「ごめんね」と言って涙は見せないでしょう。

誰も寄り添う人がいないまま泣いている「あなた」の孤独を、主人公は知っています。

一緒に泣くことで解消するわけではない、ということも分かっています。

だから主人公は涙を流す代わりに、ギターを爪弾いたのです。

なぜアルペジオを弾いたのでしょうか。

和音はいくつもの音を一度に出すことで美しいハーモニーを奏でます。

一方アルペジオは、和音を構成する音を一つずつバラバラに弾く奏法です。

ギターに限らずピアノやハープなど、音を長く伸ばしたままにしておける楽器で使われます。

音に厚みや勢いが生まれる和音に対し、アルペジオは重厚感も迫力もありません。

しかし、一つの音を美しく、長く響かせることができます。

一つの音に次の音を重ねていくことで、厚みも生まれます。

つまり、一人きりでも美しく生きられるということを「アルペジオ奏法」で表現しているのではないでしょうか。

また、一人で美しく生きていればいつしか共感できる存在が現れる、ということも示しているように感じます。

選択権はあなたにある

大人になって増え続けてく「過去」
遠のいて見えにくくなる「未来」
活かすも殺すもあなた次第
「さぁどうする?」って伺う「現在」も

出典: アルペジオ/作詞:川上洋平 作曲:川上洋平

ここにもアルペジオがうまく隠されているように感じます。

ギターの六弦全てを使ってアルペジオを弾くケースを想像してみましょう。

一弦、二弦と音を重ねる度に音も余韻も増えていきます。これが「過去」。

しかし残る弦は五本、四本と減っていきます。これが「未来」です。

余韻を活かして同じアルペジオを奏で続けるか、それとも一旦弦を押さえ直して別のアルペジオを奏でるか。

あるいは和音に切り替えてしまうか。

アルペジオを構成する一音として響き続けるか、仕切り直しの和音に紛れ込むか、選択するのは「あなた」自身です

誰の真似でもない「あなた」がいるなら
笑われても、嫌われても 染まらないよ
偽って群れるぐらいなら
気ままに一人でいりゃいいよ、いりゃいいよ
嘘偽らずに

出典: アルペジオ/作詞:川上洋平 作曲:川上洋平

自分の気持に正直に生きている、と自信を持って言える人はどれぐらいいるのでしょうか。

例え言えたとしても、周囲は「他人に流されているくせに」と思うかもしれません。

その言葉に対して言い訳をしたり取り繕うなら、それはまだ「あなた」を持っていない証拠です。

揺るぎのない「あなた」を持っていれば、周囲の言葉に影響されないはずです。

誰かの言葉にいちいち反応をして、機嫌を伺いながら必死で笑うのは相当なエネルギーが必要です。

だったら責め言葉に耳を貸さず一人でいればいい、と主人公は勧めます。

疎外感がつきまとう孤独のままでは、まだ「嘘偽りのない自分」ではありません。

本当の意味での孤独を感じたとき初めて「嘘偽りのない自分」になれるのでしょう。

右へ倣えに「NO」!

We’re going up and down, you know
We’re going up and down, you know
Say NO to the world
Say NO to the world now

出典: アルペジオ/作詞:川上洋平 作曲:川上洋平

和訳

私たちは行ったり来たりを繰り返す、分かっているでしょ

さあ今、世界に「NO」を突きつけよう!

「go up and down」は上下や行き来を繰り返す場合に使われます。

これもまたアルペジオ奏法に通じる表現ではないでしょうか。

あるときは一弦の音として、あるときは六弦の音としてアルペジオの中に存在する孤独な私たち。

しかし和音になるという選択肢はなく、孤独なままで音を響かせ続けます。

和音ではなくアルペジオこそが、「私」や「あなた」にとっての美しい生き方なのでしょう。

自分を偽って周囲に迎合することを良しとする世界に「NO」を突きつけよう!という意味だと解釈しました。

『アルペジオ』は自分に素直でいたい人の背中を押してくれる

[ALEXANDROS]【アルペジオ】の歌詞を独自解説!「あなた」自身を守り抜く歌がここにある…!の画像

自分自身の心の声に耳を傾けて素直に生きる美しさを、アルペジオをの構成音に例えた一曲『アルペジオ』。

輪の中からはみ出せば奇異の目で見られる社会です。

そんな目で見られるのは恥ずべきことだと考えて、多くの人は輪の中から少しもはみ出さないように必死で生きています。

その生き方が間違っている、と歌っているわけではありません。

嫌われても笑われても、自分だけの「自分」を見せてみたらどうだろう?

和音ではなく時にはアルペジオを奏でてみたらどうだろう?

自分自身を表現するための初めの一歩を、そっと後押ししてくれるのが『アルペジオ』なのです。

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