未完成の静寂 空っぽの世界で
痕跡をはらって 再起動した

出典: Whiteout/作詞:ボンジュール鈴木 作曲:ボンジュール鈴木

「静寂」はホワイトアウトのことを表しているわけではないようです。

恐らくは原点回帰、何もかもが本当の自分に戻った状態が「静寂」だと考えられます。

これまでは偽りの自分という存在が、ゼロに戻るのを阻止していました。

しかし今、鏡の中の「あなた」は主人公に拒絶され、微かな足跡を残して去っていったのです。

主人公はこの足跡さえも消去し、初期状態に戻すべくリセットをかけました。

ホワイトアウト状態から、2人の自分が交錯する混沌に、そして本当の自分だけが存在する「古くて新しい世界」へ。

そう、古くて新しいという言葉がぴったりではないでしょうか。

主人公はこれまでに、自分の人生を自由に生きようと心に決めた瞬間があったはずです。

今はそのときと同じ気持ち。過去の自分に立ち戻ったといえるでしょう。

しかし過去との決定的な違いは、別の自分を知っているか否か。

主人公は本当の自分と偽りの自分を知った末に、「本当の自分」を選びました。

過去の自分とは少し違う気持ちで、ゼロ点に戻ってきたといえるでしょう。

だから「古くて新しい世界」なのです。

色褪せ付くMoonlight 瞳に反射して
You justify your raison d’etre

出典: Whiteout/作詞:ボンジュール鈴木 作曲:ボンジュール鈴木

※引用歌詞中「d'e」の「e」はキャレット付き

頼りない月明かりだとしても、今の主人公にとっては十分な明るさがあります。

その光を頼りに、偽りの自分の心の中を覗き込みました。

英詞部分は「あなたは存在意義を正当化している」となります。

偽りの自分は、「私にも生きる意味がある」と主張しているようです。

抑えきれないほど強い覚悟

聞こえてる See, I don’t want to be your dark shadow
つぶやく Now I wanna say, “I’ll set you free!”

出典: Whiteout/作詞:ボンジュール鈴木 作曲:ボンジュール鈴木

「私はあなたの暗い影になりたくはないの」

このセリフは、押し隠していた本当の自分の声なのでしょう。

偽りの自分を引き立てるような存在になりたくはない。主人公にそう訴えます。

本当の自分でありたいという思いが強くなるほど、それを隠そうとする偽りの自分も大きくなるのではないでしょうか。

本当の自分の声を聞いた主人公は小さく思いを吐露します。

「今言いたい。『私があなたを解放する』って」

誰かに向かって宣言したわけではありませんが、きっと主人公はこの瞬間に覚悟を決めたのでしょう。

その手は新たな道を描くため

Tell me Tell me Tell me 響く声が
What’s happening here? 浮かんでいる
儚い月明かり 世界をどうか満たして

出典: Whiteout/作詞:ボンジュール鈴木 作曲:ボンジュール鈴木

本当の自分を暗い影から救う方法を模索しています。

どうしてこんなことになったのか、何が起きたのかは分かりません。

ただひとつ言えることは、本当の自分に必要なものは「光」だということ。

ほんの僅かな光だとしても、暗く塗りつぶされた影を照らすには十分なのです。

淡い光を放つ力を持っているのはきっと主人公。

「満たして」とどこか他人任せな歌詞ですが、自分がやらなければ誰がやる!と奮い立たせているようにも感じます。

Why me? Why me? Why me? 邪魔しないで
What’s calling out here? 振り解いた
この手で掴みたい 未来をもっと描いて

出典: Whiteout/作詞:ボンジュール鈴木 作曲:ボンジュール鈴木

偽りの自分が何か叫び、主人公を引き留めようとしているのでしょうか。

強く腕を掴まれますが、「あなたには従わない」と決めた主人公はそこから抜け出します。

今までどおり周囲に迎合して生きることだってできますし、それが間違いとは限りません。

心の中に僅かに残る弱い自分が、少しでも安全な道に誘おうとしているのかもしれませんね。

でも主人公は揺らぎませんでした。

さっきまで偽りの自分が握りしめていた手は、新しい生き方を掴み取る手に変わります。

今目の前に提示されている生き方を選択するだけではありません。

その手を使って自分自身の力で新しい道を描くことさえできるのです。

あなたの人生は誰のもの?

安月名莉子【Whiteout】歌詞解説!鏡の中には知らない自分が…!?「ブギーポップは笑わない」EDの画像

人は多かれ少なかれ、本音を隠して生きているのかもしれません。

それは礼儀でもあり、誰かへの思いやりともいえるものです。

しかし本音を隠すどころか押し隠す、押し殺すところまで進んでしまうことも。

そうなれば「自分の人生を自分の力で歩いている」と自信を持って胸を張れなくなるでしょう。

『Whiteout』の主人公は自分の人生の中でホワイトアウトが起き、迷子になりました。

しかし自分の心の声に耳を傾けたことで、抜け出せたのです。

今自分は、自分の人生を自分の足で生きているだろうか。

改めて考えさせられる曲でした。

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