叶わぬ祈り『最後の人になりたい』

【宇多田ヒカル/Be My Last】歌詞の意味を解釈する!自分の手で終わらせた恋はどこへ行く?!の画像

Be my last… be my last…
Be my last… be my last…
どうか君が be my last…

出典: Be My Last/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル

「Be My Last」を直訳すると「最後の人になってください」

もう会うことのできぬ想い人への叶わぬ願いです。

宇多田ヒカルの声はただそこにあるだけで切なくなります。

ここで使われるのは前作までとは比較にならないほど切ない声色

歌い方を意図的に変えているのでしょうか?

詳細な歌唱の技術は門外漢ですので説明不可能なのですが...。

ただひたすら繰り返される「叶わぬ願い」

後悔哀しみ怒り、その他すべての負の感情がこのサビに込められています。

間違った恋、間違いではない選択

慣れない同士でよく頑張ったね
間違った恋をしたけど
間違いではなかった

出典: Be My Last/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル

間違った恋をした。

愛してはいけない人を愛してしまったこと。

間違いではなかった

その選択に後悔はない。けれど...。

「Be My Last」で描かれる二人はとても不器用なのでしょう。

初めての恋。もしくは初めて人を愛することを知った二人。

でもお互いに不器用だからこそ心がすれ違ってしまったのでしょう。

傷つけたり傷ついたり

そんな繰り返しで二人は袂を分かってしまうことに。

でもそんな不器用な者同士だからこそ二人は惹かれ合ったのではないでしょうか?

夢で逢えても

何も掴めない手
夢見てたのはどこまで?

With my hands With my hands
With my hands With my hands
私の手で be my last…

出典: Be My Last/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル

泣き疲れては眠りにつく毎日が続きます。

に出てくるのはあの幸せな日々

夢とは不思議なものですね。

話はそれますが映画「インサイドヘッド」で描かれた人間の深層意識の構造

人間が夢を見る仕組みは科学の世界ではすでに立証されています。

夢とは日々溜まりゆく膨大な記憶を整理するための脳の機能の副産物に過ぎません。

つまり古くから心理学で用いられてきた「夢分析」の類は科学的には間違いであるとされるのです。

しかしそこまで割り切れないのが不器用な二人。

夢で見る幸せな日々も現実通りに袂を分かってしまいます。

何も掴めない手=夢の中でも繋がる事の出来ぬ心

そしてまた泣き疲れて眠りにつくのです。

人を愛するということ

【宇多田ヒカル/Be My Last】歌詞の意味を解釈する!自分の手で終わらせた恋はどこへ行く?!の画像

いつか結ばれるより
今夜一時間会いたい

何も繋げない手
大人ぶってたのは誰?

出典: Be My Last/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル

いつかどこかでまたあなたに出会うことはできるのでしょうか?

その時二人はもう一度結ばれることが許されますか?

もしその願いが叶うとしても私は待ちきれません

今すぐに、たった一時間でいいからあなたに会いたい...。

互いに不器用過ぎて間違いを犯してしまった。

あのとき大人ぶっていなければ...。

何も繋げない手=夢の中でも後悔の日が続きます。

「いつか結ばれる」には生まれ変わっても二人は出会うと信じる心=「輪廻転生」が。

「今夜一時間会いたい」には現世での「業(カルマ)」が示されていると解釈できます。

かといって宇多田ヒカル「宗教観」について歌ったという解釈ではありません。

人を愛するということの愚かさと素晴らしさを同時に表現したかったと思われるのです。

『Be My Last』と純文学の関係

生と死・輪廻転生を描いた三島文学

【宇多田ヒカル/Be My Last】歌詞の意味を解釈する!自分の手で終わらせた恋はどこへ行く?!の画像

 映画「春の雪」で主人公の清顕と聡子は二度と出会うことなく物語は終わりを告げます

しかし三島由紀夫の原作小説「豊饒の海」にはさらなる続きがあります。

「豊穣の海」輪廻転生を描いた物語なのです。

映画と小説のネタバレには触れたくありませんので詳細は記しません。

しかし興味のある方は三島由紀夫の原作小説に是非触れてみてください。

宇多田ヒカル「Be My Last」について以下のようなコメントを残しています。

「人生は破壊と再生の繰り返し。それが辛いから終わりにしてほしい気持ちを込めた」

最初のフレーズを思い返してみましょう。

「母さんどうして」

母親は子供を産み、育てます

生きるということを子供に最初に感じさせる存在としての母親

しかし生きるということは同時に死へと一歩ずつ歩む行為とも等しいこと。

母親は子供を育てながら同時に壊す存在

そんな深い意味が最初の歌詞に込められています。

宇多田ヒカルが車に轢かれ死を迎えるMVのラスト

「豊穣の海」の入稿日に三島由紀夫が自殺をしたことに物語を重ね合わせた?

それほどまでに三島由紀夫の世界に惹き込まれ制作されたのが「Be My Last」です。