ファンクな曲調と「幽霊」の組み合わせが最高!
バンド名からして何やら怪しげな雰囲気を醸し出しているニガミ17才。
「幽霊であるし」でも、ボーカル&ギターの岩下優介の天才的な歌詞センスが光ります。
歌詞を1文1文みていく前に、歌詞の大きなテーマに注目してみてください。
テーマは「幽霊」です。
そして、この幽霊というイメージがファンキーな楽曲に絶妙にマッチしています。
曲調とテーマの組み合わせからしてセンスがすごいですね。独特です。
さあ、曲を聴きながら「幽霊であるし」の歌詞の世界観にどっぷり浸かっていきましょう!
「幽霊であるし」の1番の歌詞を徹底解説
冒頭Aメロから炸裂する心地よい謎
「幽霊である もう幽霊である」
雨に唄えば AM2:00台の雨に唄えば
10代で覚えた シツの悪い小銭だけ持って
半透明に食らいつきながら
食らいつき越しては 夜を怯える そう幽霊である もう幽霊である
出典: 幽霊であるし/作詞:岩下優介 作曲:ニガミ17才
冒頭から謎だらけですね。
岩下優介の作る歌詞はかなり抽象的です。
「幽霊であるし」も例外ではありません。
“もう幽霊である”と歌っているので、何かを幽霊に例えているような気がします。
“雨に唄えば”というのはかの有名な映画『Singin' in the Rain』とその主題歌を指しているのでしょう。
ただ、「幽霊であるし」歌詞と直接的な関連はないようです。
3行目の小銭はどんなものを指しているのでしょうか。
直前に“雨に〜”という歌詞があるので、ポケットに入れていた小銭が雨で濡れてしまったのかもしれません。
濡れた小銭は金属のニオイがして、あまり気持ちのいいものではないです。
“半透明〜”以降の歌詞が、この時点ではちょっと解釈が難しいですね。
幽霊のイメージの白いシーツを被っているのでしょうか。
それから、主人公が夜が来るのを嫌がっていることもわかります。
2回し目のAメロ
「幽霊であるがおよそ異次元ではない問題」
と黒板を裏っ返しながら始まる40〜50(分)
(ABC)(123)では無く「全ては幽霊である」
食後のぼーっとした頭に 心地いいほどのBPM
出典: 幽霊であるし/作詞:岩下優介 作曲:ニガミ17才
「幽霊 D(ディー)、R(アール)、ガー」と聞こえます。歌い回しが独特ですね。
英語を聞いているようです。
“問題”や“黒板”、“40〜50(分)”という単語から学校の授業が想起されます。
しかし、裏返せる黒板ってあまりありません。
スライドできる黒板はあります。裏返せるホワイトボードはあります。
もしかすると、黒板を裏返すことは思考がファンタジーの中に突入した合図なのかもしれません。
ご飯を食べた後で眠くなって、教師の声が心地よい何か別のものに感じられているのでしょう。
そう考えると頭の中でイメージが湧いてきませんか?
心に波紋を伝わせるような不思議なBメロ
甘い偏頭痛が to to to と脈打ち 給食の牛乳と混ざってく
なんの間違いか カフェ・ラ・テの匂い漂う教室
にまどろむ to to to と包まった 歯切れ悪い授業も
なんの間違いか 雨に触れて蘇る
出典: 幽霊であるし/作詞:岩下優介 作曲:ニガミ17才
Bメロの歌詞は曲の中でも特に素晴らしいと思います。
1行目からの流れが、とても詩的な文章に感じられませんか。
甘さという味覚と偏頭痛という症状を掛け合わせて、新感覚の言葉が生まれています。
また、偏頭痛も牛乳の消化も血液の流れが関わっています。
偏頭痛と牛乳という言葉は、脈で繋がっているんですね。
そして“甘い”の原因は“カフェ・ラ・テ”でしょう。
誰か他の生徒が飲んでいるのかもしれません。
学生の午後の授業の何気ない1幕がとってもオシャレな映像として浮かんでくるようです。
そして、最後の“蘇る”という表現がミステリアス。
この教室での光景自体が主人公の幻想なのかもしれません。
少し話は戻りますが、冒頭の“半透明”についても幻想や回想のことを指しているのでしょう。
「幽霊であるし」1番のサビを紐解く
鼻先に迫ってくる夜は もがいて もがいて もがいて 絡みついてく
もう雨も手伝って吸着いて 黒く貼り付いて
上書きに容赦ない夜を めくって めくって めくっては 軽くなってく
嗚呼 もう何でもかんでも幽霊で 浮遊してるようで
出典: 幽霊であるし/作詞:岩下優介 作曲:ニガミ17才
もがいているのは誰なのでしょう。
文章的には夜がもがいていることになります。
ただ、もがいてと3連続で歌っているので、主人公ももがいているのではないでしょうか。
それほど夜が恐ろしいのでしょう。
夜が、雨に濡れた服のようにピッタリと貼り付くというシーンを歌っています。
表現が独創的ですね。
夜に自分の記憶をすべて黒く上書きされてしまうと怯えているのでしょうか?
忘れないために過去の想い出をめくっていくと、だんだん大事なものまでめくられて消えていく。
そして主人公は、世界のすべてが幽霊のように薄く、軽くなってしまう現状を諦めて嘆いているよう。
幽霊の歌詞もここまでくると芸術的に感じられます。