「涙見せぬように笑顔でサヨナラを」は特に印象的なフレーズですよね。
戦時中は、大切な人を戦場に送り出す時、泣いていては相手に辛い思いをさせ、生きて帰って来てということも許されていなかった時代でした。
だからこそ、笑顔で、また会おうと約束するのです。
こんなに愛に溢れた、悲しい笑顔があるでしょうか。
大切な人の元に帰って来れたのは魂だけ
何のために己を断って
魂だけが帰り来るの?
闇に飛び交う蛍に連れられ
君が居た気がする
出典: 蛍/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
「己を断って」という歌詞には自分の意思を捨てて戦場に赴くという意味と、戦場で自分の命を捨てるという意味があると思います。
そして、死ぬことを「魂だけが帰り来る」と表現しています。
己の夢や、人生を捨ててまで戦場に行き、命を捨てて、魂だけ帰って来られても、一緒に笑い合うこともできない。
どうしてそこまでしなければならなかったのか死んでしまった友に問いかけるとともに、人間にそこまでさせて戦争する意味があるのかという疑問を呈しているのです。
そして、蛍の飛び交う姿に仲間の魂を重ねているとても切ない情景が描かれています。
死んでしまった友たちへ、せめて生まれ変わった先に希望を
生まれ変われたなら
また恋もするでしょう
抱(いだ)き合い命燃やすように
出典: 蛍/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
特攻で亡くなった人たちのことを、現代に生きる私たちとはあまりにも遠くかけ離れた思想や、感覚を持った人たちのように感じるかもしれませんが、映画でも描かれていたように、戦争で死んでいった人たちにもまた、家族がいて、恋人がいて、私たちと何も変わらないのです。
違ったのは生まれた時代だけで、あまりにも過酷な運命に巻き込まれていったのです。
この歌詞はそんな人たちの姿を思い浮かべるとともに、せめて生まれ変われたなら、恋をして、大切な人と抱き合って命を燃やすように、自分のために命を使って欲しいと祈っているのです。
「夢溢る世の中であれ」と平和への「祈り」を歌う
涙見せぬように
笑顔でサヨナラを
夢溢る世の中であれと
祈り
出典: 蛍/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
戦時中とは違い、自分の夢のために生き、大切な人と一緒に心からの笑顔で毎日を過ごすことができて、悲しい時には涙を流していい今の世の中で、最後に歌ったのは平和への「祈り」です。
「夢溢る世の中であれ」というのは、亡くなっていった人々の思いを代弁する歌詞であるかもしれませんし、戦争を生き抜いた人々の思いでもあるかもしれません。
過酷な運命の中で生き抜いて、あるいは命を散らして、細い糸を繋ぐような確率で、私たちに命を繋いでくれた人たちがいる。
そのことを私たちは忘れずに、この世の中をもっと「夢溢る」明るい世の中にしていかなければならないということを歌っているのではないでしょうか。
おわりに
サザンオールスターズの「蛍」は劇場で聴いてエンドロールでとにかく泣いたという人も多いのではないでしょうか。
そんなあの頃から4年が経って、改めて聴くと、歌詞の平和への祈りの強さをまた感じることができますね。
また、この歌詞が語っているのは、平和への祈りであるとともに、今の平和な世の中のために死んでいった人々への残された者の想いでもあるのです。
それは、すなわち、生かされた私たちがどう生きていくべきかということでもあります。
もしかしたら、辛くて死んでしまいたいと思う日が来ることがあるかもしれませんが、そんな時はこの曲を聴いて、自分が今生きられているということのありがたさと、命の尊さを思い出してみませんか。
自分にもやるべきことがあるのかもしれないと思うことができるかもしれません。
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