果物をぐちゃぐちゃに潰したり、テーブルクロスを破いたり。
ビニール傘のビニールを剥がしたりと、「破壊」を連想させる描写の連続。
そしてそこからまた別の芸術作品が作られていきます。
これはサビの「ない才能を作れ」という歌詞とリンクするもの。
凡人故の苦悩を描く歌詞に迫る
上手く出来ないからこそ
触れ合ってすべてが分かり合えるなら
言葉や態度なんて面倒な合図もいらないのに
凡庸な人間です
これぐらいのことすらもうまくできずに
必殺技を使えない僕が手に入れた痛み
出典: SAIREN/作詞:Reol 作曲:Reol
「出来る人」というのは物を伝えることも上手いものです。
そういう人と比べて「自分はなんて口下手なんだろう」というようなこの部分。
しかし、主人公は「上手く出来ないからこそ手に入れられたものがある」と言っています。
主人公が手に入れたのは「悔しさ」。
そう、悔しさは時として才能をしのぐ武器とすらなり得ます。
期待が大きいほど
試されて気遣って泣き疲れて
浪費する喜怒哀楽
うんざりだよもう見飽きたエラー
絶望希望交互に味わって裏表
天才にはなれそうにないから
出典: SAIREN/作詞:Reol 作曲:Reol
期待されればされるほど、結果が出せなかったときの落胆は大きいもの。
アニメの主人公、大吾も父親の才能が相まって失敗するたび自信を失くしていったのでしょう。
そして「自分は天才ではない」ということから導き出した答えが、続くサビで描かれます。
ないのなら作れ!
ない才能を作れ
ありきたりな感性揺らして飛ばして
もうあとひけないぐらいに
散々な明日でも君がいるならまだ戦えるよ
出典: SAIREN/作詞:Reol 作曲:Reol
「才能がないのなら作ればいい」
それが主人公の出した答えでした。
凡人の自分でも後に退けないぐらいの努力をすれば天才にも届き得る。
主人公をそう考え至らせたのは、他でもない期待の声でした。
好きなことは変わらない
ねぇ愛しているさ
いつだって変わらないのは僕の方だそうだろ
フェンス越し見ていた二死満塁
隣り合う夏の青さが欲しくて
出典: SAIREN/作詞:Reol 作曲:Reol
ここで描かれるのは「挫折したものの、諦めきれない主人公」でしょう。
アニメの中で主人公の大吾は一度野球を辞めています。
それでもどこかで持っていた「野球が好きだ」という気持ち。
ここでのフェンス越しに試合を見ている描写はそれを物語るものですね。