クラシックとロックのクロスオーバー「パスピエ」
普通のロックバンドとは一線を画すサウンドと、独特なキャラクターで注目を集めている「パスピエ」。
その存在感を作り出しているのは、彼女たちのそれぞれのバックグラウンドです。
よく語られるのはクラシックの要素をロックの中に持ち込んでいるという点。
フランスの音楽家、ドビュッシーをの楽曲を形容する際に使われる「印象派」という言葉があります。
パスピエの作品もこの印象派という言葉をキーワードに作られているとのことです。
これはバンドを率いるキーボード、成田ハネダがドビュッシーの作品に影響を受けていることによるもの。
ロックにその要素を持ち込んだら面白いのではないかという彼の発想から生まれた試みでした。
印象派って?
印象派は19世紀後半のフランスを起源とする芸術の形で、元々は絵画を中心とするもの。
作品の特徴としては次のような例が挙げられています。
印象派の絵画の特徴としては、小さく薄い場合であっても目に見える筆のストローク、戸外制作、空間と時間による光の質の変化の正確な描写、描く対象の日常性、人間の知覚や体験に欠かせない要素としての動きの包摂、斬新な描画アングル、などがあげられる。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/印象派
音楽は絵画と違い形がないので、想像するのが難しく感じますね。
簡単に言えば「日常のリアルな景色を斬新な視点で表現した音楽」といったイメージでしょうか。
これを聞くと他のロックバンドにもありそうな表現に感じます。
しかし印象派は飽くまでもクラシック音楽の観点でそれを表したもの。
ポピュラーのそれとはまったく意味が変わってくるのでしょう。
上手くいかなかったことがきっかけ
成田ハネダはパスピエ以前にもバンドをやっていたそうですが、いずれも上手くいかなかった様子。
というのも彼は元はクラシック畑の人間です。
クラシックとポピュラーでは音の組み立て方はもちろん、文化までまるで変ってきます。
最初は完全にポップスの側に歩み寄ろうとしていた成田。
馴染みのない世界との擦り合わせが出来ず、挫折を繰り返していました。
しかしこの経験を経て、自分のクラシックの要素をそこに持ち込むという方法に辿り着いたといいます。
そのときに巡り会ったのがヴォーカルの大胡田なつきです。
実家が音楽教室を営んでおり、クラシックにも馴染みのあった彼女。
このこともあって、成田のやりたいことに共感する部分があったのでしょう。
こうしてクラシックの素養を持つ2人を軸にしたサウンドが生まれ、バンドを特徴付けているのです。
1stフルアルバム「演出家出演」作風の変化は
今回紹介するのはバンドの1stフルアルバム「演出家出演」に収録されている「△」という楽曲です。
ヒットシングルも含む全11曲を収めたこのアルバムは2013年6月12日にリリースされたもの。
この頃を境にバンドのサウンドにある変化があったといいます。
ライブに目を向けたサウンドに
2011年のデビューから、この時期までのパスピエはいわゆるライブバンドとは真逆の方向性でした。
それは「ライブよりも音源を聴いてほしい」という成田ハネダの価値観によるもの。
クラシックにも通じる綿密なサウンドメイキングが行われるパスピエならではのことでしょう。
作品を重ねることで「ある程度それを提示出来たかな」と思えたのが丁度このアルバムのタイミング。
この頃からライブに目を向けた作品作りが行われるようになります。
ロックバンドであるからにはライブにも目を向けないといけないという気持ちもあったのでしょうね。
ジャケットはヴォーカル大胡田なつきによるもの
パスピエのCDジャケットなどのアートワークは全てヴォーカルの大胡田なつきによるものです。
「演出家出演」のジャケットも例に違わず彼女の作品。
着物の女性にヘッドフォンというアンバランスな組み合わせがバンドの斬新なサウンドを上手く表していますね。
ナンバーガールを好む彼女の絵の作風は、向井秀徳の影響を受けたものだとのこと。
ナンバーガールの作品のジャケットを見てみると確かに似た趣を感じさせます。
ナンバーガールへの憧れから、以前は激しい歌い方をしていた。
イラストの作風はナンバーガールの向井秀徳に影響されている。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/パスピエ_(バンド)