福田こうへいデビューシングル
2010年代の演歌を代表する一曲
【南部蝉しぐれ】は2012年10月に発売された、福田こうへいのデビューシングルです。
実は、この楽曲は2010年6月に一度発売されています。
その当時の注目度は低く、売上も芳しくなかったようです。
しかし、再発売後の2013年1月にNHK歌謡コンサートに出演したことで大きな注目を集めます。
もともと福田こうへいは30歳を過ぎてから脱サラし、民謡歌手として活動していました。
民謡歌手として鍛えられた確かな歌唱力と表現力は、多くの人の心を惹きつけたのです。
その歌声は、演歌界の大御所北島三郎も「日本歌謡界の宝になる」と称するほど。
一度聴けば誰もが魅了されてしまう、心に響く歌声は必聴です!
豪華な楽曲制作陣
日吉ミミの【男と女のお話】や北島三郎の【狼】の作詞をした作詞家、久仁京介が作詞。
作曲は天童よしみの【人生みちづれ】などを作曲した四方章人が制作しました。
また、久仁京介と四方章人の2人が関わっている福田こうへいの楽曲は【南部蝉しぐれ】だけではありません。
歌詞から見える男の故郷と厳しい状況
故郷の雫石を思う
南部 盛岡 雫石
思えば遠い ふるさとよ
出典: 南部蝉しぐれ/作詞:久仁京介 作曲:四方章人
雫石は現在も岩手県に存在する雫石町のことです。
この町は福田こうへいの出身地で、岩手県の中部に存在し盛岡市と隣接しています。
人口が多くはありませんが、スキーの全国大会が開かれたこともあり、現在は観光に力を入れている町です。
江戸時代、南部藩に属していた歴史があるため、南部というのはこれに由来しているのかもしれません。
そんな故郷の雫石を思い返しています。
故郷を離れ、気軽に脚を運べるような距離でもないのでしょう。
物理的な距離によって心も離れてしまっている、そんなしみじみとした思いが感じられます。
都会でひとり孤独に耐える
夢がこぼれた 都会の谷間
呼んでみたって 山彦ばかり
弱音をはくな 強気になれよ
酒に聞いてる 蝉しぐれ
出典: 南部蝉しぐれ/作詞:久仁京介 作曲:四方章人
彼は夢を叶えるために故郷を離れ都会、恐らく東京に向かったのでしょう。
しかし全ての人が夢を叶えられるわけではありません。
人は沢山いるのに彼の声に応えてくれる人は居ないのでしょう。
そんな孤独を、そびえるビルを山に見立てて山彦、と例えています。
蝉しぐれは蝉時雨、つまり蝉が一斉に鳴きたてているという夏の季語です。
蝉の声がうるさいほどに聞こえる中、自分で勇気付けながら酒を飲む夏の日の状況が浮かんできます。
お酒を飲みながら、弱音をはきそうになる自分に強気になれと鼓舞しているのです。
夢を叶えるために都会に来て努力しているにもかかわらず、叶えられない。
そのもどかしさに自暴自棄になりそうになりながら、なんとか耐えているようです。
優しい言葉から固まった決意
故郷でかけられた優しい言葉
駄目なときは ふりだしに
戻ればわたし そこにいる
出世するのも 人生だけど
夢のまんまも いいものですと…
出典: 南部蝉しぐれ/作詞:久仁京介 作曲:四方章人